概要情報
事件番号・通称事件名 |
中労委令和2年(不再)第2・5号
全日本海員組合(その4)不当労働行為再審査事件 |
再審査申立人 |
X組合(2号)、Y法人(5号) |
再審査被申立人 |
Y法人(2号)、X組合(5号) |
命令年月日 |
令和4年2月16日 |
命令区分 |
一部変更 |
重要度 |
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事件概要 |
1 本件は、Y法人が、Y法人の従業員又は従業員であった者で組織されるX組合の組合員A1及び組合長A2を、再雇用契約期間の満了に当たり、再雇用契約等の上限年齢である65歳に達したことを理由に雇用継続しなかったことが、不当労働行為であるとして、X組合が、東京都労働委員会(東京都労委)に救済を申し立てた事案。
2 初審東京都労委は、組合員A1及び組合長A2を雇用継続しなかったことは、いずれも不当労働行為に当たるとして、文書交付及び掲示、並びに履行報告を命じたところ、X組合及びY法人は、それぞれ再審査を申し立てた。 |
命令主文の要旨 |
初審命令を次のとおり変更する。
⑴文書交付及び掲示(組合長A2について)。
⑵その余の救済申立て(組合員A1に係る救済申立て)を棄却。 |
判断の要旨 |
⑴ 組合員A1の再雇用契約終了に当たり、同人の雇用を継続しなかったことは、労働組合法第7条第1号及び同第3号の不当労働行為に当たるか。
ア Y法人において、65歳に達した後の雇用については、制度が存在せず一般的な基準は設けられていないが、Y法人の個別の判断によって、一定数の者が継続して雇用されている実態が認められる。他方、再雇用職員等が65歳に達した時点で、後任者が見つからなかった場合、65歳以降も雇用を継続する扱いが、Y法人において通常の対応であったとまで認めることはできない。
イ Y法人は、平成20年に組合長A2を解雇して以降、さらに2度にわたって同人の排除を試みるなど、同人と激しく対立し、その対立の経緯の中で組合長A2らによりX組合が結成された。X組合とY法人との間には長期にわたって訴訟や不当労働行為救済申立てが係属し、労使関係は鋭く対立したまま推移していたことが認められ、Y法人は、X組合及び組合長A2に対し強い嫌悪感を持っていたことが認められるから、組合員A1のX組合加入についても快くは思わなかったものと推認される。
ウ しかし、Y法人は組合員A1のX組合加入を知った時期の前後を通じて、組合員A1の雇用を継続しない方針には変化がみられないこと、上記アのとおり後任者が手配できない場合にY法人が再雇用職員等の雇用を継続するのが通常とはいえないこと、Y法人は組合員A1が再雇用契約の条件に不満を持っていると認識していたこと等の事情を勘案すれば、Y法人が組合員A1に雇用継続を打診せず、組合員A1の雇用を継続しなかったことが、組合員であるが故をもって行われたものと評価することはできない。
エ したがって、その余の点については判断するまでもなく、Y法人が組合員A1の雇用を継続しなかったことが、労働組合法第7条第1号の不当労働行為に該当するとは認められない。
また、X組合を弱体化させるものともいえず、同条第3号の不当労働行為に当たらない。
⑵ 組合長A2の再雇用契約終了に当たり、同人の雇用を継続しなかったことは、労働組合法第7条第1項、同第3項及び同第4項の不当労働行為に当たるか。
ア 組合長A2は、平成29年6月21日の第14回団体交渉において自身の65歳以降の雇用の継続を要求し、同年7月7日付書面でも改めて65歳以降の雇用の継続を求めており、Y法人から継続して雇用されることを強く望んでいた。
イ 上記⑴イのとおり、Y法人には組合長A2及びX組合への激しい嫌悪の情が一貫して認められ、労使の緊張関係が組合長A2の再雇用契約の終了に至る時期まで継続していたこと、Y法人が組合長A2に対し再雇用契約が終了する3か月前に殊更に書面により再雇用契約の終了を告げたこと、第14回団体交渉時点で組合長A2の後任者として決定していた者は存在せず、さらに、再雇用契約終了後において他の役職で雇用を継続するという方法も一般的な可能性としては考えられるにもかかわらず、Y法人が、組合長A2については最初から、どのような役職であれ65歳以降の雇用を継続しないとの方針のもと、X組合から具体的な要求事項として組合長A2の65歳以降の雇用の継続を求められても、その必要性の検討すら行わないままに組合長A2の再雇用契約終了に至ったと認められる。以上から、Y法人が、組合長A2の65歳以降の雇用の継続について、その必要性の検討すら行わなかったことは、Y法人の組合長A2に対する強い排除意思の表れであって、組合員であること及び正当な組合活動をしたことの故をもってなされたものといわざるをえない。
ウ 以上から、Y法人が、組合長A2の65歳以降の雇用の継続について、その必要性の検討すら行わず、これにより雇用継続の可能性を遮断したことは、同人がX組合の組合員であること、同人が正当な組合活動をしたこと及びX組合が組合長A2の雇止めに関してY法人を被申立人として労働委員会に不当労働行為救済申立てを行ったことを理由とする不利益取扱いに当たり、労働組合法第7条第1号及び同条第4号の不当労働行為に該当する。さらに、X組合の組合長である同人をY法人から排除することにより、X組合の組織及び活動を弱体化させる支配介入とも認められ、同条第3号の不当労働行為にも該当する。 |
掲載文献 |
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