労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  中労委令和元年(不再)第17号
JR西日本中国メンテック(旧JR西日本広島メンテック)不当労働行為再審査事件 
再審査申立人  Y2会社(Y1会社承継人)(「会社」) 
再審査被申立人  X組合(「組合」) 
命令年月日  令和3年8月4日 
命令区分  全部変更 
重要度   
事件概要  1 会社は、パートタイマーとして新幹線営業所で新幹線車両の清掃業務に従事する従業員の採用について、1か月の契約を締結し、能力・適性があると判断した者と次の契約を締結していた。
組合員A1(「A1」)は、会社と1か月の契約の締結後、組合に加入した。
本件は、会社が、A1が会社に採用される以前、会社の属する企業グループに批判的な内容のビラ(「本件ビラ」)を配布していたことなどを理由に、A1との次の契約を締結しなかった(「次の契約不締結」)ことが不当労働行為に当たるとして、救済申立てがあった事案である。
2 初審広島県労働委員会(「広島県労委」)は、次の契約不締結が、労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に該当すると判断し、会社に対し、A1が希望する場合、1か月の契約を締結して能力・適性を判断すること、バックペイ及び文書交付を命じたところ、会社は、これを不服として再審査を申し立てた。 
命令主文  初審命令を取り消し、再審査被申立人の救済申立てを棄却する。 
判断の要旨  (1)次の契約不締結の労組法第7条第1号該当性について
ア(ア)A1の組合加入の経緯をみると、C1センターに個人加盟していたA1は、C1センターが行う組合のビラ配布応援を行うなど、組合への支援活動を積極的に行い、平成29年11月21日(以下「平成29年」を省略)に会社の従業員になったことにより組合加入資格を得、同月30日に組合に加入し、組合はA1の組合加入を本件通告が行われた翌日の12月19日に通知している。
 本件通告の経緯をみると、新幹線営業所の所長は、同月4日、A1が以前にビラを配布していた旨の報告を受け、5日頃、ビラ配布時のA1の写真とビラの内容を確認して本件ビラが会社に好意的でないとの印象を持ち、また、ビラ配布時にB4支所の敷地内に立ち入って注意されていたことを把握した。会社は、11日、次の契約不締結の方針を所長に伝え、所長は、18日に本件通告を行っている。
(イ)上記(ア)のとおり、A1は11月30日に組合に加入したものの、組合は本件通告の翌日12月19日まで組合加入通知を行っておらず、A1は、組合加入通知翌日の20日までの間、ビラ配布をはじめ外部に認識されるような組合活動を行っていなかったのであるから、会社が、組合加入通知以前に、A1や組合の行動を通じてA1が組合の組合員であることを認識していたと認めることはできない。
(ウ)組合は、所長がA1のビラ配布の写真を確認することにより、A1が組合に加入していることなどを認識していたとも主張するが、ビラ配布当時、A1は組合の組合員ではなく、A1がそうであったように、組合員でない者が労働組合の方針に同調してその活動を支援することもあることからすると、当該ビラ配布が直ちに労働組合の活動を意味するものとはいえない。しかも、A1はビラ配布時に組合とは別組織の腕章を着けていたこともあり、また、従来会社においては、パートタイマーが企業内外を問わず労働組合に加入した例はなかった。
以上の事情の下では、所長が、A1のビラ配布時の写真やビラの内容を確認したとの一事をもって、A1が組合の組合員であること若しくは組合に加入しようとしていることを認識し得たとすることは困難である。
(エ)以上のとおり、会社が、本件通告の時点において、A1が組合の組合員であること若しくは組合に加入しようとしていることを認識していたとは認められず、加えて、A1が労働組合を結成しようとしていたことの証拠は一切ない。
したがって、次の契約不締結は、A1が労働組合の組合員であること若しくは労働組合に加入し、若しくはこれを結成しようとしたことの故をもって行われた不利益な取扱いであると認めることはできない。
イ組合は、A1のかつてのビラ配布が労働組合の正当な行為であるとの前提に立ち、所長はA1が労働組合の正当な行為を行ったことを認識し、次の契約不締結とした旨主張するが、当該ビラ配布は組合への支援活動にすぎず、労組法の保護を受ける労働組合の行為と評価することはできない。
したがって、次の契約不締結は、A1が労働組合の正当な行為を行ったことの故をもって行われた不利益な取扱いであると認めることはできない。
ウ以上のとおり、次の契約不締結は、不当労働行為意思に基づくものとは認められないため、労組法第7条第1号の不当労働行為には該当しない。
(2)次の契約不締結の労組法第7条第3号該当性について
上記(1)のとおり、本件通告の時点において、会社が、A1が組合の組合員であることなどを認識していたと認められない以上、会社は、支配介入の前提となる基本的な認識を欠いていたといわざるを得ない。また、次の契約不締結により、組合の組織・運営に打撃を与えようと意図したとみることもでき
ない。したがって、次の契約不締結は、労組法第7条第3号の不当労働行為にも該当しない。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
広島県労委平成30年(不)第1号 一部救済 平成31年4月23日
 
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