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概要情報
事件番号・通称事件名  東京地裁令和4年(行ウ)第117号
JR西日本中国メンテック再審査申立棄却命令取消請求事件 
原告  X組合(「組合」) 
被告  国(処分行政庁 中央労働委員会) 
参加人  Z会社(「会社」) 
判決年月日  令和6年5月30日 
判決区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 会社は、パートタイマーとして新幹線営業所で新幹線車両の清掃業務に従事する従業員の採用について、1か月の契約を締結し、能力・適性があると判断した者と次の契約を締結しており、組合員A1は、会社と1か月の契約の締結後、組合に加入した。
 本件は、会社が、A1が会社に採用される以前、会社の属する企業グループに批判的な内容のビラ(「本件各ビラ」)を配布していたことなどを理由に、A1との次の契約を締結しなかった(「本件契約不締結」)ことが不当労働行為に当たるとして、救済申立てがあった事案である。

2 初審広島県労委は、本件契約不締結が、労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に該当すると判断し、会社に対し、A1が希望する場合、1か月の契約を締結して能力・適性を判断すること、バックペイ及び文書交付を命じた。

3 会社は、これを不服として再審査を申し立てたところ、中労委は、初審命令を取り消し、組合の救済申立てを棄却した。

4 組合は、これを不服として東京地裁に行政訴訟を提起したところ、同地裁は、組合の請求を棄却した。  
判決主文  1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は、参加によって生じたものも含め、原告の負担とする。 
判決の要旨  1 争点⑴-本件契約不締結が、労組法7条1号本文の不当労働行為に当たるか。
⑴ 本件契約不締結が、同号の「不利益な取扱い」に当たるか。
 本件契約不締結は、会社がA1との間で本件労働契約の期間満了後に次の有期労働契約を締結しなかったというものであるから、雇入れの拒否に当たる。ただし、会社においては、最初に締結する1箇月の有期労働契約は、期間原則6箇月の次の有期労働契約を締結するための見極め期間とされ、次の有期労働契約を締結するには見極め期間を経ることが必要とされていたこと、新幹線営業所においては、平成27年4月から平成30年5月までの間、見極め期間満了を迎えるパート従業員が希望する場合には、清掃能力の審査を実施した上で、ほぼ全ての者との間で次の有期労働契約を締結していたこと、それにもかかわらず、見極め期間が満了し、次の有期労働契約締結を希望していたA1に対しては、清掃能力の審査を実施することなく、次の有期労働契約の締結を拒否したことからすれば、本件契約不締結は、雇入れの拒否ではあるものの、会社とA1との間で締結されていた期間1箇月の労働契約に基づく法律関係における不利益取扱いといえるものであり、従前の雇用契約関係における不利益な取扱いといえるものであるから、労組法7条1号本文にいう「不利益な取扱い」に当たると認められる。

⑵ 本件契約不締結が、A1が労働組合の組合員であること又は労働組合に加入しようとしたことの故をもって行われたといえるか。
ア 本件契約不締結は不利益取扱いに当たるところ、次に、この不利益取扱いである本件契約不締結が、A1が組合の組合員であること又は組合に加入しようとしたことの故をもって行われたといえるか問題となる。

イ パート従業員であるA1と次の有期労働契約を締結するか否かを専決する権限を有するB3所長において、本件通告の時点において、A1が組合の組合員である事実や、A1が組合に加入しようとしていた事実を認識していたとは認められない。
 そうすると、本件契約不締結について、会社が、A1が労働組合の組合員であること又は労働組合に加入しようとしたことの故をもってこれを行ったとは認められない。

ウ A1は、本件各ビラを配布した当時、組合の組合員ではなかったが、C1センターの個人加盟者として、10年近くもの間、本件各ビラのような労働組合などのビラの配布活動を行っていた。また、A1は、見極め期間中に、会社の営業所の警備員から、広島支所門前でビラ配布行為をしていたか問われた際、以前は配布していたが今は配布していない旨答え、現在の労働組合の活動への関与を否定していた。
 以上の事実関係からすれば、B3所長が、A1がかつて広島支所門前で本件各ビラの配布をしていた事実を把握していたこと等をもって、A1が労働組合の組合員であること、労働組合に加入しようとしていたことを認識したと認めることはできない。

エ 以上によれば、本件契約不締結が、A1が労働組合の組合員であること又は労働組合に加入しようとしたことの故をもって行われたとはいえない。

⑶ A1が本件各ビラを配布した行為は、労働組合の正当な行為に当たるか。
 A1は、本件各ビラの配布当時、組合の組合員ではなく、労働組合ではないC1センターの個人加盟者として、組合のビラの配布を行っていたものであるから、A1の本件各ビラの配布行為は、労働組合の組合員が所属する労働組合のために行った行為ではなく、「労働組合の正当な行為」(労組法7条1号本文)に当たらないと解される。

⑷ 小括
 以上によれば、本件契約不締結が、労組法7条1条本文の不当労働行為に当たるとは認められない。

2 争点⑵-本件契約不締結が、労組法7条3号の不当労働行為に当たるか。
 本件通告の時点において、会社において、A1が労働組合の組合員であるとの認識があったといえず、会社は、上記時点において、本件契約不締結により組合の活動に支障を生じさせることについての認識がなく、支配介入という評価を受ける具体的事実の認識を欠いていたから、支配介入の意思を有していたとは認められない。
 したがって、本件契約不締結が、労組法7条3号の「労働者が労働組合を結成し、若しくは運営することを支配し、若しくはこれに介入すること」に当たるとは認められない。

3 結論
 以上のとおり、本件契約不締結は、労組法7条1号本文及び同条3号のいずれにも該当しないから、本件命令に違法はない。
 よって、組合の請求には理由がないから、これを棄却する。 
その他   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
広島県労委平成30年(不)第1号 一部救済 平成31年4月23日
中労委令和元年(不再)第17号 全部変更 令和3年8月4日
 
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