労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  広島県労委平成30年(不)第1号
JR西日本広島メンテック不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y会社(「会社」) 
命令年月日  平成31年4月12日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   本件は、会社が組合員A2と、平成29年11月21日ないし同年12月20日を期間とする1か月の有期労働契約の期間満了後に、①A2が採用前に、会社に批判的な内容のビラを配布したこと、②ビラの配布時に、会社支所の敷地内に数回立ち入ったことを理由に、次の有期労働契約を締結しなかったことが、不当労働行為に該当するとして、救済申立てがあった事案である。
 広島県労働委員会は、会社に対し、①A2が希望する場合、平成29年11月21日付けで締結した内容と同趣旨の1か月間の有期労働契約を締結し、Aの従業員としての能力・適性を判断すること、②バックペイ、及び③文書手交を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人Y会社は、申立人X組合組合員A2が、被申立人Y会社において新幹線車両の清掃業務に稼働することを希望する場合、速やかに、平成29年11月21日付けで同人と締結した内容と同趣旨の1か月間の有期労働契約を締結し、従業員としての能力・適性を判断しなければならない。
2 被申立人Y会社は、申立人X組合組合員A2に対し、平成29年12月21日ないし平成30年3月31日の期間に勤務していれば得られたであろう賃金に相当する額を支払わなければならない。
3 被申立人Y会社は、本命令書受領の日から2週間以内に、下記内容の文書を申立人X組合に交付しなければならない。

 年 月 日

X組合
執行委員長 A1 様
Y会社         
代表取締役社長 B

 当社が、貴組合のA2組合員と、平成29年12月21日ないし平成30年3月31 日を期間とする労働契約を締結しなかったことは、広島県労働委員会において、労働組合法第7条第1号及び同条第3号に該当する不当労働行為であると認められました。
 今後は、このような行為を繰り返さないようにします。
(注:年月日は文書を交付した日を記載すること。)

4 申立人X組合のその余の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 却下に関する主張について
 A2組合員はビラの配布当時、組合員でなかったとしても、組合の正当な行為をしたことなどを理由とする不当労働行為が成立する可能性があり、また、会社がA2組合員の組合への加入を知った時期は、事実関係の認定と評価に関わるものであって、審査を経なければ判断できないものであるため、いずれも直ちに却下理由に該当するとはいえない。
2 次の有期労働契約の締結における会社の裁量について
 次の有期労働契約を締結するか否かは、1か月の有期労働契約の趣旨に従って判断されなければならないのであって、会社には新たな労働契約を締結するような、自由な裁量が許されるわけではない。
 すなわち、1か月の有期労働契約の期間中に指導した業務が適切に行えるか否か、勤務態度等に問題がないか否かを判断する裁量があるにすぎないと解される。
 実際、会社も1か月の有期労働契約の趣旨に従って、能力・適性を見極めることとしており、A2組合員の採用面接時等において説明された1か月の有期労働契約の趣旨も、上記の裁量の範囲を超えるものではなかった。
 よって、次の有期労働契約の締結に、採用の自由の法理が適用されるとする会社の主張を採用することはできない。
3 不利益取扱いの成否
(1) 会社はA2組合員が組合員であることを認識していたか
 会社は、A2組合員が、採用前にビラを配布していたことを知ったことは認められるが、このことをもって、A2組合員が組合に加入したことを知り得たと解することはできない。
 加えて、本件通告時において、B2副所長はA2組合員に対し、ビラを配布するということは一種の活動家である旨述べたことが認められるが、この発言は、会社が、A2組合員の採用前のビラ配布を把握し、A2組合員が組合方針に賛同し、組合活動に協力的な行動をしてきた人物であると認識していたことを示すものであるとともに、A2組合員の採用前のビラ配布を嫌悪し、今後組合に加入し、会社内で組合活動を行うことを懸念したものであると解されるものであって、これをもって、会社が、A2組合員が組合に加入したことを知っていたと認めることはできない。
(2) 本件におけるビラの配布が組合の正当な行為といえるか
 A2組合員のビラの配布時の態様は、主に私服で、一人で行っており、外部的に見て、組合の統制下において、組合活動としてビラを配布していたと認識することはできず、また、他に組合の統制下であったことについての疎明はなく、組合の正当な行為に該当すると解することはできない。
(3) 会社はA2組合員が組合に加入することを懸念ないし認識していたか
ア ビラの配布を把握した後の会社の対応
 B3所長は、A2組合員の採用前のビラ配布や敷地内への立入りを把握した後、会社に相談し、会社は弁護士に相談している。その後、会社は、A2組合員と次の有期労働契約を締結しないとの方針を決定し、B3所長はこれを受け、直後に予定されていた清掃能力の審査を中止し、本件通告を行っている。このことから、会社はA2組合員の採用前のビラ配布を強く意識し、対応していたことが推認される。
イ 本件通告時におけるB2副所長の発言
 本件通告時におけるB2副所長の、ビラを配布するということは一種の活動家である旨の発言は、会社が、A2組合員の採用前のビラ配布を把握し、A2組合員が組合方針に賛同し、組合活動に協力的な行動をしてきた人物であると認識していたことを示すものであるとともに、A2組合員の採用前のビラ配布を嫌悪し、今後組合に加入し、会社内で組合活動を行うことを懸念したものであると認められる。
ウ 次の有期労働契約を締結しなかった理由の合理性
 採用前に親会社グループに批判的な内容のビラを配布したことを、次の有期労働契約を締結しない理由とすることは首肯しがたい。
 A2組合員は、敷地内に立ち入り、注意を受けた後は、敷地外に移動しビラの配布を続けているのであるから、会社支所の業務遂行や親会社の施設管理に支障があったと認めることはできず、これを認めるに足る疎明もない。また、採用前の数回の敷地内への立入りの事実をもって、A2組合員がルールを守る意識が薄弱である人物と直ちに評価し、次の有期労働契約を締結しない理由とすることは首肯しがたい。
 以上のとおり、会社がA2組合員に示した、次の有期労働契約を締結しない理由に、いずれも合理性は認められない。
エ まとめ
 以上のことから、会社は、A2組合員の採用前のビラ配布を把握し、A2組合員が組合方針に賛同し、組合活動に協力的な行動をしてきた人物であると認識し、このような人物を会社に引き続き雇用すれば、組合に加入し、会社内で組合活動を行うことを懸念したことから、合理的とはいえない理由を付し、1か月の有期労働契約の期間満了をもって会社から排除しようとしたものというべきであり、不当労働行為の意思を推認させるものである。
 したがって、次の有期労働契約を締結しなかったことは、A2組合員が組合に加入することを懸念したが故になされた不利益取扱いであると判断するのが相当であり、労働組合法第7条第1号の不当労働行為に該当する。
4 支配介入の成否
 A2組合員を会社から排除しようとしたことは、組合の運営に影響を与え、組合の弱体化を企図するものと言い得るから、労働組合法第7条第3号の不当労働行為に該当する。
5 結論
 以上のとおり、会社がA2組合員と次の有期労働契約を締結しなかったことは、A2組合員が組合に加入することを懸念したが故になされた不利益取扱いであるとともに、組合に対する支配介入であり、労働組合法第7条第1号及び同条第3号に該当する不当労働行為である。 
掲載文献   

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