概要情報
| 事件番号・通称事件名 | 大阪府労委令和元年(不)第27号 不当労働行為審査事件
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| 申立人 | X組合(組合) | 
| 被申立人 | Y会社(会社) | 
| 命令年月日 | 令和3年5月7日 | 
| 命令区分 | 全部救済 | 
| 重要度 |  | 
| 事件概要 | 本件は、組合が組合員A2の解雇について団体交渉を申し入れたところ、会社が、同組合員は取締役であって労働者ではないとしてこれに応じなかったことが不当労働行為に当たる、として救済申立てがあった事案である。 大阪府労働委員会は、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると判断し、法人に対し、団交応諾及び文書手交を命じた。
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| 命令主文 | 1 会社は、組合が令和元年7月19日付けで申し入れた団体交渉に誠実に応じなければならない。 2 会社は、組合に対し、下記の文書を速やかに交付しなければならない。
 記
  年 月 日X組合
 執行委員長 A1 様
 
 株式会社Y     当社が、貴組合からの令和元年7月19日付け団体交渉申入れに応じなかったことは、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条第2号及び第3号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。代表取締役 B1
 
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| 判断の要旨 | 1 A2組合員は、会社との関係において労組法上の労働者に当たるか 会社法上、株式会社と取締役との関係は委任とされる(会社法第330条)が、取締役が使用人(従業員)としての地位を兼務している場合、当該兼務者は、その会社との間では、役員としての委任契約の関係と使用人としての労働契約の関係とを併存させており、取締役が使用人としての地位にあるときは、その限りにおいて、労組法上の労働者に当たるというべきであり、当該兼務者の①業務内容と会社の指揮監督の状況、②会社における服務態様、③報酬の労務対価性、④会社経営への関与を実質的に検討して、それらを総合して判断する必要がある。
 ア 会社におけるA2組合員の業務内容と会社の指揮監督の状況について
 A2がB2取締役の加工手配図面に従って作業していたことだけをもって会社の指揮監督に服していたとまではいえないものの、①会社におけるA2の業務内容は、従業員から取締役に選任される前後で担当業務に変化はなく、一貫して、他の従業員と同様、工場で製品加工という現場作業に従事していたこと、②会社における指揮監督の状況については、少なくとも担当業務の範囲内において、また加工手配図面に関しても、取締役としての意思決定や指揮監督する行為があったとはいえず、そのほかにA2が会社でどのように指揮監督していたかについても具体的な疎明はないこと、③ 31.3.1会社通知書では会社から担当する業務の遂行を細かく指示されていること、からすると、A2はその業務遂行に当たり、会社の指揮監督の下に労務の提供を行っていたと見ることもできる。
 イ A2組合員の会社における服務態様について
 A2は、タイムカードの打刻と有給休暇消化記録の提出により会社から勤怠管理をされ、さらに、会社から外出する際は、B1社長が作成し4月末に回収する「打刻理由説明書」に、公用か私用か、あるいは私用であればその理由の記入が求められていたことからすると、A2は、服務態様から見る限り、会社による一定の時間的拘束を受けていたといえる。
 ウ A2組合員の報酬の労務対価性について
 A2の報酬には労務提供への対価の要素も含まれていたとみることができること、31.3.1会社通知書から、A2は会社から、労務を提供しなければ減給されることも想定されていたことを勘案すると、A2の報酬の一部には労務対価性があったとみることができる。
 エ A2組合員の会社経営への関与について
 A2組合員は、取締役会や、平成16年以降は役員会議に出席したこと、同21年の労使会議に会社側として参加したこと、同15年から18年頃にかけて会社設備の導入に関与したこと等は認められるものの、これらのことからは、A2組合員が役員として会社経営に参画していたとまでみることはできない。加えて、31.3.1会社通知書が会社から交付された時期には、A2組合員の会社における影響力は著しく弱まり、会社の経営に関与していたとみることはできない。
 オ 以上のことを総合的に判断すると、31.3.1会社通知書が交付され、解任に至る当時、A2組合員は、取締役であっても、実質的には使用人としての地位にあったと見るのが相当であり、労組法第3条の労働者に該当するというべきである。したがって、会社は、A2は役員であって、労働者ではなく、A2が加入する組合は労組法第2条ただし書第1号に該当し、労組法の労働組合ではないと主張するが、かかる主張には理由がない。
 2 1.7.19団交申入れに対する会社の対応は、正当な理由のない団交拒否に当たるとともに、組合に対する支配介入に当たるかについて
 当該団交の議題は、労働者であるA2組合員の解雇事案であったというべきであり、これは組合の労働条件に関するものであることから、義務的団交事項に当たることは明らかである。
 会社は、団交申入れに対し、団交に応じる義務があるにもかかわらず正当な理由なく応じておらず、この会社の対応は労組法第7条第2号に該当する不当労働行為である。また、B2が組合員であることを否定し、団交申入れに応じなかった会社の対応は、組合の運営に対する支配介入であり、労組法第7条第3号に該当する不当労働行為である。
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| 掲載文献 |  |