労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  中労委平成30年(不再)第48号
ハートフル記念会不当労働行為再審査事件 
再審査申立人  X組合 
再審査被申立人  Y法人 
命令年月日  令和2年11月18日 
命令区分  一部変更 
重要度   
事件概要  1 本件は、法人が、①平成27年4月に分会長Aを刑事告発したこと、②平成26年3月から4月に配布されたビラについて、Aが作成を指示したものと結論付けたこと、③平成28年5月のビラ配布等について、A及び既に解雇されていた組合員Bに対し、平成28年5月16日付け業務命令(28.5.16業務命令)等により、出勤停止や法人施設への立入りの一切禁止等を命じ、副分会長C及び書記長Dに対し、平成28年5月30日付け業務命令等(28.5.30業務命令等)により、ビラ作成への関与等を繰り返し質問したこと、④分会が申し入れた団体交渉に応じなかったこと等が不当労働行為であるとして、組合が、神奈川県労働委員会に救済を申し立てた事件である。
2 初審神奈川県労働委員会は、法人に対し、Aに対する業務命令がなかったものとしての取扱い、誠実団体交渉応諾及び文書掲示を命じ、刑事告発に係る申立てを却下し、その余の申立てを棄却したところ、組合は、これを不服として、再審査を申し立てた。
3 再審中労委は、初審命令を一部取り消し、文書交付を命じた。
 
命令主文   初審命令主文中、Bに対する28.5.16業務命令並びにC及びDに対する28.5.30業務命令等について、救済申立てを棄却した部分を取り消し、文書交付を命じる。 
判断の要旨  (1) Bに対する28.5.16業務命令は、労組法第7条第1号の不当労働行為に当たるか。
 法人は、Bは既に解雇されていたため、28.5.16業務命令による不利益はないと主張するが、当時、Bは民事訴訟で解雇の効力を争っていたところ、同業務命令は、上記訴訟の結果にかかわらず、同人に対して組合員を含む法人関係者との接触及び法人施設への立入りを一切禁止して法人から完全に排除することにより、同人に新たな不利益を課すものであったといえる。そして、法人は、28.5.16業務命令は、Bによるビラの大量頒布に関する証拠隠滅防止を理由として発したものであると主張するが、Bがビラの頒布に関与し、証拠を隠滅するおそれがあったとは認められないし、法人施設への立入りや法人関係者への接触禁止を命じる合理的な理由があったとも認められない。
 かえって、Aが責任者を解任されて以来、法人と組合は激しく対立して労使紛争が長期化しており、法人がBに対して職員への接触や施設への立入りを改めて禁止する合理的理由が認められないことからすると、法人は、Bが組合に加入したことを嫌悪し、ビラを契機として、上記訴訟の結果にかかわらず、Bを法人から完全に排除することを企図して28.5.16業務命令を発したものといえる。
 よって、Bに対する28.5.16業務命令は、労組法第7条第1号の不当労働行為に該当する。
(2) C及びD(「Cら」)に対する28.5.30業務命令等は、労組法第7条第1号の不当労働行為に当たるか。
 法人が、法人の業績を安定させてはならない等の不穏当な内容を含むビラの作成配布について事実関係の調査を行う必要があると判断したこと自体は理解できる。しかし、28.5.30業務命令等については、ビラの作成配布に関する質問に加え、Cらの所属政党を確認する思想信条に関する質問に対する回答を命じたものであったこと、Cらの関与を強く疑っていることをうかがわせる記載があったこと、任意の聴取等の手続を経ずに業務命令の形でなされたこと、また、Cらがビラの作成配布への関与を否定し、今後の調査は組合を通してほしいと述べたにもかかわらず、同人らに対して直接質問を繰り返し行ったことが認められる。そうすると、同業務命令等は、回答しない場合に不利益処分を行うなどといった記載はないものの、ビラの作成・配布に関する事実を確認するための任意的な聴取の範囲を超えて、Cらに圧力をかけ、動揺を与えて萎縮させるという行き過ぎた調査を繰り返したものであって、同人らに精神的不利益をもたらすものであったというべきである。
 当時、Aの処遇をめぐって激しく労使が対立していたこと、法人が、A及びBがビラの作成配布に関与していたとして、28.5.16業務命令により同人らの法人施設への立入り等を禁止した経緯と、Cらに対して行き過ぎた調査を繰り返し行ったことからすると、Cらが組合の組合員であることを理由としてなされたものというべきである。
 よって、Cらに対する28.5.30業務命令等は、労組法第7条第1号の不当労働行為に該当する。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
神奈川県労委平成28年(不)第22号 一部救済 平成30年9月27日
横浜地裁平成30年(行ウ)第82号 棄却 令和3年1月20日
 
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