労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  神奈川県労委平成28年(不)第22号
ハートフル記念会不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  法人Y(「法人」) 
命令年月日  平成30年9月27日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   本件は、法人が、①組合の分会長A1を偽造有印私文書行使罪で告発したこと、②法人施設内で配布されたビラについて、法人の最終調査報告書において、A1分会長が作成を指示したものと結論づけたこと、③法人施設内等で配布されたビラへの関与について、A1分会長及び組合員A2に対して出勤停止等を命じたこと、④別の日に法人施設内等で配布されたビラへの関与について、組合の副分会長A3及び書記長A4に対して繰り返し質問をし、文書回答を求めたこと、⑤平成27年5月28日以降の組合からの団体交渉申入れにおける会社の対応、⑥平成29年4月1日付け業務命令書により、A1分会長に対し法人施設への立入りの禁止等を命じたことが不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 神奈川県労働委員会は、上記③及び⑥のA1に対する業務命令がなかったものとしての取扱い、誠実団交、③~⑥について文書掲示を命じ、その余の申立てを却下又は棄却した。 
命令主文 
1 被申立人が申立人分会長A1を偽造有印私文書行使罪で告発したことに係る申立てを却下する。
2 被申立人は、申立人分会長A1に対する平成28年5月16日付け業務命令及び平成29年4月1日付け業務命令をなかったものとして取り扱わなければならない。
3 被申立人は、申立人が平成28年5月28日から同年12月6日までに申し入れた申立人分会長A1の出勤停止の撤回及び同年9月29日に最高裁判所で確定した救済命令の履行を議題とする団体交渉に誠実に応じなければならない。
4 被申立人は、本命令受領後、速やかに下記の文書の内容を縦1メートル、横2メートルの白色用紙に明瞭に認識することができる大きさの楷書で記載した上で、被申立人の全ての施設において職員の見やすい場所に毀損することなくl4日間掲示しなければならない。

 当法人が、①貴組合の分会長A1に対し、平成28年5月16日付け業務命令で出勤停止等を命じたこと及び平成29年4月1日付け業務命令で法人施設への立入り禁止等を命じたこと、②貴組合の組合員A2に対し、平成28年5月16日付け業務命令で出勤停止等を命じたこと、③貴組合の副分会長A3及び書記長A4に対し、平成28年5月30日付け業務命令、同年6月15日付け業務指示及び同年7月13日付け業務指示により組合活動に関して繰り返し質問して文書回答を求めたこと及び④組合による平成28年5月28日から同年12月6日までの分会長A1の出勤停止の撤回及び同年9月29日に最高裁判所で確定した救済命令の履行を議題とする団体交渉申入れに対する法人の対応は、①については労働組合法第7条第1号及び第3号に、②及び③については同条第3号に、④については,同条第2号に該当する不当労働行為であると神奈川県労働委員会において認定されました。
 今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
 平成 年 月 日
 組合 
  分会長 A1殿
法人
 理事長B1

5 その余の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 争点①(法人が本件告発をしたことは、A1分会長が組合員であることを理由とした不利益取扱いに当たるか否か、また、組合の連営に対する支配介入に当たるか否か。)
 本件告発は、本件申立てから1年以上前になされており、既に除斥期間を徒過していることから、本件告発に係る申立てを却下する。

2 争点②(法人が、28.3.7最終調査報告書において、古畑ビラの作成を指示したのはA1分会長であると結論づけたことは、同人が組合員であることを理由とした不利益取扱いに当たるか否か、また、組合の運営に対する支配介入に当たるか否か。)
 28.3.7最終調査報告書には、「法人としては、『A1分会長の指示により古畑文書が作成された』とする告発については、ほぼ事実であろうと考えるのが適切である」との記載があるが、当該記載によって、A1分会長に具体的にどのような不利益が生じたのかが明らかではなく、組合活動にいかなる影響を及ぼしたのかも点不明であるから、法人が、28.3.7最終調査報告書において、古畑ビラの作成を指示したのはA1分会長であると結論づけたことは、不利益取扱い及び支配介入には当たらない。

3 争点③(法人が、A1分会長及びA2合員に対し、28.5.16業務命令書により出勤停止等を命じたことは、同人らが組合員であることを理由とした不利益取扱いに当たるか否か、また、組合の運営に対する支配介入に当たるか否か。)
(1) 不利益取扱いについて
ア 法人が、28.5.16業務命令書により出勤停止を命じたことは、A1分会長に職業上及び組合活動上の不利益を生じさせるものいえる。一方、当該命令は、法人が、26.3.24解雇通知書により、A2組合員を解雇した後に発したものであるから、同人に対しては新たな具体的不利益を生じさせたものとはいえない。
イ 法人は、前件初審命令から前件最高裁決定まで一貫して求められ続けたA1分会長の原職復帰を徹底して実現しようとはせず、同人の組合活動に深刻な抑制的効果を及ぼす28.5.16業務命令を28.5.24事情聴取において約束した通知をしないまま継続し続けたことからすると、同命令は、同人の組合活動を激しく嫌悪し、法人の支配領域内から完全に排除することを企図して発せられたものと推認せざるを得ない。
ウ 法人は、28.5.16業務命令は、A1分会長が法人施設内でC党のビラを大量に頒布した疑いがあり、調査の必要や証拠隠減の防止という合理的理由に基づくものである旨等主張するが、当該業務命令は、合理的理由に基づくものとは言えない。
エ したがって、法人が、A1分会長に対し28.5.16業務命令書により出勤停止を命じたことは、同人が組合員であることを理由とした不利益取扱いに当たる。
(2)支配介入について
  28.5.16業務命令書は、A1分会長及びA2組合員に組合事務所への立入りを実質的に禁止するものであり、法人が、28.5.16業務命令書により、A1分会長及びA2組合員に出勤停止を命じたことは、組合の運営に対する支配介入に当たる。

4 争点④(法人が、A3副分会長及びA4書記長に対し、28.5.30業務命令書、28.6.15業務指示書及び28.7.13業務指示書により繰り返し質問をして文書回答を求めたことは、同人らが組合員であることを理由とした不利益取扱いに当たるか否か、また、組合の運営に対する支配介入に当たるか否か。)
 法人が、A3副分会長及びA4書記長に対し、28.5.30業務命令書、28.6.15業務指示書及び28.7.13業務指示書により繰り返し質問をして文書回答を求めたことが、それ自体として不利益取扱いに当たるとは認められないが、組合の存在をことさらに無視しながら、業務命令に名を借りて個々の組合員に対して向けられた威圧的行為であり、ひいては組合の運営に対する干渉となるから、組合の組織・運営に対する支配介入に当たる。

5 争点⑤(法人が、A1分会長に対し、29.4.1業務命令書により法人施設への立入り禁止等を命じたことは、同人が組合員であることを理由とした不利益取扱いに当たるか否か、また、組合の運営に対する支配介入に当たるか否か。)
 29.4.1業務命令は、28.5.16業務命令同様、組合活動を激しく憎悪した法人がその支配領域から完全に排除することを企図して発せられたものと推忍ことができる。
 組合の、B3職員に対する除名処分について、3年近く経過した後に29.4.1業務命令によってA1分会長に法人施設への立入禁止及び在宅禁止を命じる緊急性は認められない。また、仮にA1分会長のB3職員に対するパワーハラスメント行為が認定されたとしても、両名の職場を離すなどの対応を取れば、当該命令を発するまでの必要はないから、29.4.1業務命令は合理的理由に基づくものとは言えない。
 法人が、A1分会長に対し、29.4.1業務命令書によって法人施設への立入り禁止等を命じたことは、同人が組合員であることを理由とした不利益取扱いに当たる。
 29.4.1業務命令は、組合事務所への立ち入りを実質的に禁止するものであり、組合の影響に重大な影響を及ぼすものであるから、組合の運営に対する支配介入に当たる。

6 争点⑥(組合が平成28年5月28日から同年12月6日までに行ったA1分会長の出勤停止の撤回及び平成28年9月29日に最高裁判所で確定した救済命令の履行を議題とする団体交渉申入れに対する法人の対応は、正当な理由のない団体交渉拒否に当たるか否か。)
 法人は、A1分会長を職場に戻すことを団交議題とすることについて、事件が調査中であるから受け入れられない旨回答しているが、28.5.16業務命令は、法人との接触を全面的に禁止され、その就労の機会を奪われるという極めて重大な効果を及ぼしていることからすれば、法人は、調査の方法や進捗状況、終了時期の見込みといったその調査内容自体に直接関わらない事項については、団体交渉において、組合の質問に対して具体的な回答をしたり必要な資料を提示するなどして誠実に説明しなければならない。
 最高裁判所で確定した救済命令の履行法人について、法人は、A1分会長を責任者や相談員に復帰させているから原職復帰が実現されている旨等主張する。法人は、28.9.30辞令によりA1分会長を施設の主任相談員に任命しているが、同辞令には、28.5.16業務命令による法人との全面的な接触禁止措置はそのまま維持されており、最高裁で確定した救済命令で命じた原職復帰が実質的に実現されたものとは到底言えない。
 上記いずれについても、法人が組合の申し入れた団体交渉を拒む正当な理由と認めることはできない。
 したがって、法人の対応は、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為に当たる。 
掲載文献   

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