労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  中労委平成29年(不再)第28号
シーフォービジネスインテグレーション不当労働行為再審査事件 
再審査申立人  株式会社Y(会社) 
再審査被申立人  Xユニオン(組合) 
命令年月日  令和元年10月2日 
命令区分  一部変更・棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、組合が、厚生年金基金の脱退一時金支給手続(以下「JJK手続」という。)について団体交渉を申し入れたところ、会社がこれに応じなかったので、団交拒否の救済申立てを東京都労委に行ったことに端を発する。東京都労委において一旦JJK手続について労使間で合意がされたところ、組合員が会社に対して個別に退職金請求訴訟を行ったことを契機に、会社が同合意を撤回し、①28年8月14日にフェイスブック上で会社が運営するウェブサイト(以下「本件サイト」という。)上に本件記事を掲載し、②同月17日付で退職者に対し本件書面を送付した。組合は、団交拒否について申立てを取り下げるとともに、上記①②の会社の行為につき、労組法第7条第3号の不当労働行為であるとして追加申立てを行った。

2 初審東京都労委は、29年3月21日付けで、上記①②ともに不当労働行為に該当するとして、会社に対し、今後同様の行為をすることを禁止し、本件サイトから本件記事を削除すること、文書交付及び履行報告を命じたところ、会社は、これを不服として、再審査を申し立てた。

3 再審中労委は、初審命令の一部を変更し、その余りの再審査申立てを棄却した。 
命令主文  I 初審命令主文を次のとおり変更する。
1 再審査申立人株式会社Yは、再審査被申立人Xユニオンを誹謗中傷し、又は再審査被申立人Xユニオンの組合員に対し組合を介さず個別交渉を求めるなどの内容を、インターネットの掲示板に記載し、又は同組合員に直接文書を送付するなどの方法によって、再審査被申立人Xユニオンの運営に支配介入してはならない。
2 再審査申立人Yは、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を再審査被申立人Xユニオンに交付しなければならない。


 年 月 日
Xユニオン
執行委員長 A 殿
株式会社Y      
代表取締役 B

 当社が、平成28年8月14日にフェイスブック上のウェブサイト「Y・別館」に、貴組合を誹謗中傷し、貴組合を通さずにJ JK手続の個別交渉を求める内容の記事を記載したこと及び退職者に同月17日付書面を送付したことは、いずれも中央労働委員会において、不当労働行為であると認定されました。
 今後、このような行為を繰り返さないよう留意します。
 (注:年月日は文書を交付した日を記載すること。)

Ⅱ その余の本件再審査申立てを棄却する。 
判断の要旨  (1) 組合は、労組法第2条の労働組合か
組合は、結成以降、労組法第2条の労働組合として活動しており、また、C4BI労組を支部組合として以降も、一貫して会社に対し退職金という労働条件に係る団体交渉の申入れをするなどし、それに対して会社が何ら対応しないことへの抗議活動もしており、これらは、労働条件の維持改善その他の経済的地位の向上を図ることを目的とするものといえ、組合は、労組法第2条の労働組合に当たる。

(2) 会社が、28年8月14日、本件サイトに本件記事を記載したことは、労組法第7条第3号の不当労働行為に当たるか
ア 本件記事は、組合が違法行為や社会的相当性を欠く行為を頻繁に行っているかのような記載があり、また、組合が逮捕者を出したとする記載及び組合員に情報等を盗ませる等の記載は、インターネット上の記事及び「2ちゃんねる」の書き込みを基にしているが、インターネット上の記事には組合が逮捕者を出した記載はなく、「2ちゃんねる」の記事は匿名の書き込みであって、当該書き込みを真実であると信じた相当な事情も主張されておらず、全体にわたり、裏付けのない憶測に基づいて組合を誹謗中傷したものといえる。
イ 本件記事は、組合を経由せず直接会社に連絡することを呼び掛けるものであり、本件記事は、一旦JJK手続について合意された後、これを会社が白紙撤回して組合がこれに抗議するという労使関係の急速に悪化する中で掲載されたことも考慮すると、組合員を組合から切り離し、あるいは組合に未加入の退職者の組合への加入をちゅうちょさせ、組合の弱体化を図ったものといえる。
ウ したがって、会社が本件サイトに本件記事を掲載したことは、労組法第7条第3号の不当労働行為に当たる。

(3) 会社が退職者に28年8月17日付け本件書面を送付したことは、労組法第7条第3号の不当労働行為に当たるか
本件書面は、本件記事と同様、裏付けのない憶測に基づき組合を批判するものであって、組合を批判し、ひいては組合の弱体化を図る意図がなかったといえない。本件書面は、JJK手続を進めるに当たり、公然化していない組合員を組合から切り離すことを図り、あるいは組合に未加入の退職者の組合への加入をちゅうちょさせ、組合の弱体化を図るものであり、本件書面を送付したことは、労組法第7条第3号の不当労働行為に当たる。

(4) 救済方法について
会社は、既に本件記事を掲載した本件サイトごと閉鎖したことを踏まえ、初審命令主文の一部を変更する。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
都労委平成28年(不)第14号 全部救済 平成29年3月21日
東京地裁令和元年(行ウ)第633号シーフォービジネスインテグレーション不当労働行為救済命令取消し請求事件 棄却 令和3年3月25日
 
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