労働委員会裁判例データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  東京地裁令和元年(行ウ)第633号シーフォービジネスインテグレーション不当労働行為救済命令取消し請求事件 
原告  株式会社X(「会社」) 
被告  国(処分行政庁 中央労働委員会) 
被告補助参加人  Zユニオン(「組合」) 
判決年月日  令和3年3月25日 
判決区分  棄却 
重要度   
事件概要   本件は、会社が、①その運営するウェブサイトに、組合から、建造物侵入、暴行・傷害で逮捕者が出た等の記事及び会社の退職者に対し、厚生年金基金の脱退手続に関し、会社に連絡するよう呼び掛ける記事を記載したこと、②退職者に対し、組合から逮捕者が出た等と記載した上で、同封した退職経緯書を返信すれば当該脱退手続を完了させる旨の書面を送付したことが、不当労働行為に当たるとして救済申立てがあった事案である。
 東京都労委は、会社に対し、支配介入の禁止、記事の削除、文書交付及び履行報告を命じた。会社は、これを不服として、再審査を申し立てたが、中労委は、既に上記記事を掲載したサイトは閉鎖されていることを踏まえて、初審命令の一部を変更し、その余の再審査申立てを棄却した。会社は、これを不服として、東京地裁に行政訴訟を提起したが、同地裁は、会社の請求を棄却した。 
判決主文  1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は、補助参加によって生じたものも含め、原告の負担とする。 
判決の要旨  1 争点(1)-組合は、労組法上の労働組合に該当するか。
 労組法にいう労働組合とは、労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体又はその連合団体をいう(同法2条本文)。少なくとも救済命令を申し立てた当時、A労組は、会社の元従業員9名が加入して組合員となっており、使用者である会社に対し、Bを除く8名の組合員の退職金の支払を求める団交を求めていた団体であって、労働者が主体となって自主的に組織された労働者の経済的地位の向上を図ることを主たる目的とする団体であった。A労組は、平成27年12月に組合に加入して、その一支部となったものであること、組合は、平成5年に設立された労働組合として労働委員会で多数の救済命令を受けた実績がある団体であったことからすれば、記事掲載及び書面送付当時、組合は、労働者が主体となって自主的に労働者の経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体であった。
 2 争点(2)-記事掲載は、組合への支配介入に該当するか。
 労組法7条3号は、労働者が労働組合を結成し、又は運営することについて使用者が支配し介入することを禁止しているところ、会社代表者による記事掲載が支配介入に当たるかは、記事の記載内容を中心として、その経緯、手段、意図も考慮して総合的に判断する必要がある。記事は、会社の退職者を含む読者に対して、組合と関係を持つとトラブルに巻き込まれかねないといった印象を与えるものである。また、記事の概要及び本件掲載行為がされた時期を踏まえると、記事は、会社の退職者に対し、基金脱退手続を早期に受けるために、組合及び組合員Bを介することなく直接会社代表者Cに連絡するよう求めるものといえる。そうすると、記事掲載は、会社の退職者を含む読者に対して、組合と関係を持つとトラブルに巻き込まれかねず、基金脱退手続が早期に行われない可能性があるという危惧を抱かせるものであり、会社の退職者のうち、非組合員には組合に加入することを躊躇させ、組合員には組合から脱退することを促す効果を持つ行為であり、組合の組織結成を妨害し、組合を弱体化させる行為であり、本件記事掲載は、支配介入に該当する。

3 争点(3)-書面送付は、組合への支配介入に該当するか。
 書面のうち、組合から逮捕者を出した等の記載部分は、送付した退職者に対して、組合は、建造物侵入などで逮捕者を出し、組合員に使用者の情報を盗ませる不法行為を行っている組織であり、また、組合の会社に対する争議行為はCと会社代表者を争ったDの画策であるとの印象を与えるものである。そうすると、書面送付は、読者である非組合員には組合に加入することを躊躇させる効果をもたらし、組合員には組合から脱退することを促す効果をもたらすものといえ、組合を弱体化させる行為であり、組合への支配介入に該当する。
その他   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
都労委平成28年(不)第14号 全部救済 平成29年3月21日
中労委平成29年(不再)第28号 一部変更・棄却 令和元年10月2日
 
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