労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  中労委平成29年(不再)第33号
神奈川歯科大学不当労働行為再審査事件 
再審査申立人  Y大学 
再審査被申立人  ユニオンX 
命令年月日  平成31年2月8日 
命令区分  変更、棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、法人が、①平成25年4月10日付けの休職命令(25年休職命令)によって休職中であった組合員Aに対し、(a)Aから就労可能であるとの診断書が提出された後も復職を認めなかったこと、(b)休職を理由に賃金を減額し、同年6月支給分の賞与(25年夏季賞与)を支給しなかったこと、(c)休職期間満了後、出向や自宅待機を命じたこと、②休職命令の撤回等に関する団体交渉に誠実に応じなかったことが不当労働行為であるとして、神奈川県労委に救済申立てがあった事件である。
2 初審神奈川県労委は、上記①(a)(b)及び②は不当労働行為に当たるとして、法人に休職期間中の賃金差額及び賞与に係るバックペイ並びに文書手交を命じたところ、法人は、これを不服として、再審査を申し立てた。
3 中労委は、初審命令を変更し、その余りの申立てを棄却した。 
命令主文  (1) 初審命令を変更し、文書交付を命じ、その余の本件救済申立てを棄却する。
(2) その余の本件再審査申立てを棄却する。 
判断の要旨  (1) Aに対し、平成25年7月1日から平成26年10月9日までの間、復職を認めなかったことは、労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に当たるか(争点1)
 Aの復職要求をめぐって、労使間の対立が深刻化し、法人は、組合活動が活発化し、休職していたAの復職により組合の影響力が拡大することを警戒していたことがうかがわれる。このように緊張した労使関係の下で、法人がAから相応の医学的根拠のある一連の診断書及び復職願いが出されたにもかかわらず、25年7月1日から26年10月9日までの間、合理的な理由もなく復職要求を認めなかったことは、Aの休職を継続させることにより、A及び組合の影響力を職場から排除しようとしたものであり、組合を嫌悪してなされたものとみるのが相当であり、かかる法人の対応は、Aが組合員であることを理由としたものであり、また、組合の弱体化を図ったものといえることから、労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に当たる。
(2) Aに対し25年夏季賞与を支払わなかったことは、労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に当たるか(争点2)
 法人が理事会でAに対する25年夏季賞与の不支給を決定した25年6月5日当時の労使関係をみると、従前からAの勤務場所、勤務内容をめぐる対立はあったものの、組合やAは休職自体を一旦受け入れていたものとみられ、復職の要求が具体化するのは、Aが就労可能であるということについて相応の医学的根拠のある診断書を提出して復職を求めた同年6月14日以降であるから、同月5日の時点までに、労使対立が深刻化するに至っていたとは認められない。他方で、賞与の支給の可否について理事会に一定の裁量が認められているものと解されるところ、法人からみてAが看護師としての労働義務を十全に履行していたとはいい難いことや、25年休職命令が不合理であったとまではいえないことなどを踏まえると、法人が、25年休職命令により休職中であるAに対し、25年夏季賞与を不支給としたことが格別不合理であったとはいえない。以上によれば、Aの組合所属又は組合活動がなければ法人はAに当該賞与を支払っていたであろうと認めることはできず、法人が、Aに対し、25年夏季賞与を支払わなかったことは、労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為には当たらない。
(3) 平成25年4月22日の第4回団体交渉及び平成26年1月31日の第5回団体交渉における法人の対応は、労組法第7条第2号及び第3号の不当労働行為に当たるか(争点3)
 第4回団体交渉における法人の対応については不誠実であったとまではいえないが、第5回団体交渉における法人の対応については、Aの復職に関連した組合の要求に対して具体的な回答をしなかったことは不誠実であり、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たるとともに、上記(1)で判断したAの復職を認めなかった法人の対応と一連のものといえ、Aの復職に向けた組合の活動を妨害するものであるから、労組法第7条第3号の不当労働行為にも当たる。
(4) 救済方法について
 上記(1)については、法人は、Aが提起した未払賃金請求訴訟の確定判決に基づいて、平成25年7月から平成26年10月までの各月分の未払賃金を支払っていることからすると、法人がAの復職を認めなかったことによるAの経済的損害は既に回復されているといえ、さらに、本件に現れた一切の事情も併せ鑑みれば、バックペイを命じる必要はなく、文書交付のみ命じるものとする。また、上記(3)の第5回団体交渉における法人の不誠実な対応についても、文書交付を命じるものとする。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
神労委平成26年(不)第7号 一部救済 平成29年6月13日
東京地裁令和元年(行ウ)第238号 棄却 令和2年6月26日
 
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