労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  福島県労委平成30年(不)第2号
アルファエレナ福島・アルファクラブ不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y1会社、Y2会社(併せて「会社」) 
命令年月日  平成31年2月26日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要  本件は、被申立人会社Y1社及びY2社が、申立人X組合より平成30年4月11日付けで申入れのあった団体交渉について、申入事項が裁判で係争中であることを理由に拒否したことが、不当労働行為に当たるとして、組合から、同年6月21日に申立てがあった事件であり、福島県労働委員会は、会社に対し、団体交渉に応じることを命じた。 
命令主文  1 被申立人Y1会社及びY2会社は、申立人X組合が平成30年4月11日付けで申し入れた団体交渉について、裁判で係争中であることを理由に拒否してはならず、誠意をもって速やかに応じなければならない。
2 被申立人Y1会社及びY2会社は、前項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。 
判断の要旨  1 争点1「Y2会社は、労働組合法上の使用者に当たるか」について
(1) 労働組合法第7条にいう「使用者」とは、同法が助成しようとする団体交渉を中心とする集団的労使関係の一方当事者としての使用者を意味し、 労働契約上の雇用主が基本的にはこれに該当するものの、雇用主以外の事業主であっても、労働者の労働条件等について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、 決定することができる地位にある場合には、その限りにおいて、使用者に当たると考えられる。
(2) 団体交渉における組合の要求事項であるA2の解雇の撤回や未払い賃金の支払い等について総務課C1が実質的な交渉権限を有していたと言える。
(3) Y2会社は、Y1会社の従業員の労務管理に携わっていたものと推認できる。
(4) Y2会社は、Y1会社の従業員であるA2の懲戒解雇に関与している程度は高いものと認められる。
(5) 以上、(2)ないし(4)により、親会社であるY2会社は、いわゆる完全子会社であるY1会社の労働者の基本的な労働条件等について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあったと言える。
 以上により、Y2会社の主張は採用できず、Y2会社は、労働組合法第7条に定める使用者に当たる。
2 争点2「Y1会社及びY2会社が、30年4月11日付けで、組合からなされた団体交渉申入れに応じていないことについて正当な理由はあるか」について
(1) 団体交渉を拒否する正当な理由について
① A2の解雇に関連する請求を団体交渉事項とする利益がないとの会社側の主張については、本件申立てに係る要求事項は解雇の撤回自体ではなく、懲戒解雇に対する謝罪及び慰謝料の支払いであって、そもそも要求事項が同一ではないことから、当該請求を団体交渉とする利益がないとは言えず、会社側の主張は失当である。
 また、組合からの団体交渉の申入れに会社側は全く応じていなかったわけではなく計5回の団体交渉を行ってきた等の会社側の主張については、 会社側と組合の間で団体交渉を継続する余地がないほど十分に本件申立てに係る要求事項の協議を行ったとは認められず、会社側の主張は採用できない。
② 団体交渉は、労働条件等の争いを労働組合の団結権・争議権等を背景として、交渉技術を尽くし、政策的な考慮も加えて将来にわたる権利関係ないし法律状態を形成する目的や機能を有するものである。裁判の係争中であっても、労使の自主的な交渉により、紛争の解決を図ることが望ましいのであるから、使用者は原則的に団体交渉に応じる義務を負担しているところであって、直ちに団体交渉を拒否したり、形式的な団体交渉を行うのではなく、誠実に対応すべきであり、裁判において係争中であることが、主要かつ正当な理由に当たらないことは言うまでもない。
(2) 団体交渉の開催に応じないことについて
 団体交渉の開催に関する事前の合意の有無にかかわらず、会社側は団体交渉に応じる必要がある。また、(1)で述べたとおり、会社側が団体交渉を継続する余地がないほど十分に交渉を行ったとは認められないこと、裁判において係争中であることは団体交渉を拒否する正当な理由に当たらないことから、会社側の主張は失当である。
 したがって、会社側が、平成30年4月11日付けで、組合からなされた団体交渉申入れに応じていないことは、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為に当たる。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
福島地裁平成31年(行ウ)第2号 棄却 令和元年12月17日
仙台高裁令和2年(行コ)第1号 棄却 令和2年7月29日
 
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