労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  中労委平成28年(不再)第68号、中労委平成29年(不再)第50号
大阪YMCA・大阪YMCA(団交)不当労働行為再審査事件 
再審査申立人  Y法人 
再審査被申立人  X組合 
命令年月日  平成31年2月6日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、法人が、組合の交渉窓口担当者の交代を求め、交代できない場合は窓口対応を取りやめる対応をしたこと、26年度賃上げに関する団交に誠実に対応しなかったこと、組合の行為について謝罪しなければ団交に応じないとしたこと、28年度賃上げに関する団交申入れに対し理事会前に応じなかったことが不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
2 初審大阪府労働委員会は、法人に対し、上記に関する文書手交を命じたところ、法人は、これを不服として再審査を申し立てた。 
命令主文  本件再審査申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 組合の交渉窓口担当者の交代を求め当面窓口対応を取りやめるとの対応は支配介入に当たるか。
 組合は26年5月15日と同月16日の法人メールを受信したことが強く推認されるものの、結局、これらのメールをめぐるやりとりは、A組合員が同年4月末に交渉窓口担当者となって初めて担当した団体交渉設定についてのメールの送受信に係る行き違いに留まるのであって、本来組合が自主的に決定すべき交渉窓口担当者について、使用者が交代を要求しうるような事態が生じていたとまではいえない。以上からすると、法人の対応に一定の酌むべき事情がないとはいえないものの、A組合員との窓口対応において、円滑な事務的調整が行われなかったことが一度あったからといって、組合が自主的に決定するものである交渉窓口担当者の交代を求め、交代するまで窓口対応を取りやめるという法人の対応は、組合の運営に対する支配介入に当たる。
2  26年7月2日の団交における法人の対応は労組法第7条第2号及び第3号の不当労働行為に当たるか。
 組合は、法人の求めに応じ、文書で要求趣旨を回答し、26年7月2日の団交において、全体の労働条件の開示を求める理由を説明し、資料の提示の方法について法人に配慮する姿勢もみせている。
 これに対し、法人は、法人全体の労働条件について協議する考えはない、回答は同年6月30日のとおりとの回答を繰り返すのみで、回答の理由を説明することも組合の説明の不十分さを具体的に指摘することもなく、1項目でも出してほしいとの組合の要求に対しても沈黙するなどして応じず、資料を出さない理由も回答しなかった。このような交渉態度は、誠実な対応を通して組合の理解を得ようとする姿勢に欠けるものといわざるを得ず、労組法第7条第2号及び第3号の不当労働行為に当たる。
3 26年7月6日付け団交申入れに対する同年10月3日付けで団交を申し入れるまでの法人の対応は労組法第7条第2号及び第3号の不当労働行為に当たるか。
 26年7月2日の団交で、組合員は「あほか。帰らへんぞ。」などと声を荒げたことがあったこと、交渉後、組合員5名は法人が退室を求めてもなかなか応じず、法人側の代表交渉委員を呼び戻すよう求め続けたことが認められ、組合の言動に必ずしも適切とはいえない言動があったことは事実であるから、法人が組合に同様の行為を繰り返さないよう求めること自体は理解できなくはない。
 しかしながら、組合の言動により交渉の中断を余儀なくされたというわけではない。また、団交後の事務室立入りの状況は、法人側交渉委員が一人で長時間取り囲まれたというわけではなく、実際に身体に危険を感じさせるような暴力が行われたとの事実もなく、「おまえ」や「こら」といった組合の発言をもって暴力的言辞による威迫行為があったとまではいえない。これらの組合の言動は、誠実に交渉を行わなかった法人の態度に組合が抗議し、更なる交渉を求めてなされたものである事情を考慮すると、組合の態度を非難し、謝罪し反省しなければ次回交渉の日程調整をしないとしたことに正当な理由があるとはいえない。よって、法人の対応は労組法第7条第2号及び3号の不当労働行為に当たる。
4 28年3月15日付け団交申入れに対する法人の対応は労組法第7条第2号及び第3号に当たるか。
ア  組合は、28年度の賃上げに関する早期の話合いを求めて団交を申し入れたのに対し、法人の回答は「現時点では回答はできません」「現時点では・・・賃金改定に関して確定的に申し上げる内容がありません」としており、5月の理事会前には賃上げについて組合と交渉しないといっているに等しく、基本的には5月の理事会前の団体交渉を拒否したものと認められる。
 法人は、理事会前の日程調整の可能性に言及しているが、単に「業務多忙」という抽象的な理由を回答書に示しただけで、具体的な事情を説明することもなく、約1か月半後まで日程調整不可能と回答したもので、早期に団体交渉が開催できるよう調整する努力は見受けられない。
 法人は、当該時点の見込みに基づく説明と話合いであれば団体交渉を行う意思があったと主張するが、現時点では賃金改定に関して確定的に申し上げる内容がありません、としか回答していないのであって、当該時点の見込みに基づく説明と話合いを行う意思があったとは認められない。
さらに、組合は26年当初から協定に基づき10日以内の団交開催を強く求めていたが、法人は、28年と同様、理事会前にも応じるかのような姿勢を示しながらも、結局は、理事会後にしか団交に応じておらず、誠実に団交に応じようとしていたとは評価することはできない。
イ  法人は、3月下旬に次年度の予算を承認し、正規雇用者の給与改定と有期限雇用者の翌年度の契約締結をしていることからすると、少なくとも4月に実施する正規雇用者の給与改定や有期限雇用者の賃上げの状況について、5月の理事会前に説明することは可能といえる。また、組合が提示を求める教員の各人数等は、27年度実績のものであるから、5月の理事会を待たずとも回答できるものである。このように、5月の理事会前にも回答できる事項があるにもかかわらず、理事会前の団交に応じない法人の対応は、正当な理由に基づくものとは言えず、労組法第7条第2号及び第3号の不当労働行為に当たる。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委平成28年(不)第18号 全部救済 平成29年9月25日
大阪府労委平成26年(不)第64号 一部救済 平成28年11月21日
 
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