労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委平成26年(不)第64号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y法人(「法人」) 
命令年月日  平成28年11月21日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   本件は、法人が、①組合の交渉窓口担当者の変更を要求し、同担当者との窓口折衝を行わないとしたこと、②平26年5月28日及び同年7月2日の団体交渉において合意形成に向けた態度をとらなかったこと、③同月6日の組合からの団体交渉申入れに対し、同月2日の団体交渉及び団体交渉終了後の暴言・騒動について、組合が法人に謝罪しなければ団交に応じないなどとして団体交渉を拒否したことが不当労働行為に当たるか否かが争われた事件で、大阪府労働委員会は、法人に対し、文書の手交を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
年 月 日
 組合
  委員長 A1 様
法人        
理事長 B1
 当法人が行った次の行為は、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰りかえさないようにいたします。
(1)貴組合の窓口交渉者の交代を求め、それができない場合は、当面、担当者間での窓口対応を取りやめるとの対応を行ったこと(3号違反)。
(2)平成26年7月2日に行った団体交渉において、貴組合の要求事項である法人全体の労働条件について協議しない旨の回答を行い、終了予定時刻に退席したこと(2号及び3号違反)。
(3)貴組合からの平成26年7月6日付けの団体交渉申入れに対し、当法人が同年10月3日付けで団体交渉を申し入れるまでの間、団体交渉に応じなかったこと(2号及び3号違反)。
2 申立人のその他の申立てを棄却する。  
判断の要旨  1 争点1(法人が、組合の交渉窓口担当者であるA2執行委員の交代を求め、それができない場合は、当面、窓口対応を取りやめるとの対応を行っていることは、組合に対する支配介入に当たるか。)について
① 誰を交渉窓口担当者にするかは、組合が自主的に決定すべき事項であって使用者の介入すべき事柄ではない。
② 組合が窓口担当者であるA2執行委員と調整することを度々求めているにもかかわらず、法人が平成26年5月16日以降、本件申立てに至るまでの5か月間に渡って一貫してA2執行委員の交代を求め続け、さらに交代するまで担当者間での窓口対応を取りやめるとの対応をとったことは労使間の円滑な交渉を阻害したものである。 
③ したがって、法人が、A2執行委員の交代を要求したこと及びA2委員との窓口対応を行わなかった対応は、いずれも、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為である。
2 争点2(26.5.28団交及び26.7.2団交における法人の対応は、労働組合法第7条第2号及び第3号に該当する不当労働行為に当たるか。)について
(1)26.5.28団交における法人の対応について
 26.5.28団交は、言葉遣いをめぐり一時的に若干の混乱が認められるものの、組合が申し入れた議題については、法人が理事会資料を配付し、質疑応答がなされるなどして、ひととおり協議され、最後に組合が三六協定に係る選挙結果を伝えてほしい旨述べて、団交を終了したことが認められる。
 したがって、26.5.28団交が中身が伴わないものであったとまではいえない。
(2)26.7.2団交における法人の対応ついて
① 非組合員を含む全体の労働条件についても団交事項となり得るにもかかわらず、法人は、26.6.19法人申入書で、組合の説明が不十分であることだけを指摘して具体的な質問を行うこともないままに、26.6.30法人回答書で、法人全体の労働条件については協議しない旨回答し、26.7.2団交で26.6.30法人回答書を読み上げるのみであった。とすれば、法人には、この問題について、そもそも組合と協議する意思がなかったといわざるを得ない。
 また、組合が全体の中でA2執行委員等がどのような位置にあるのか教えてほしい旨求めた際に回答しなかったことも、法人にこの問題について協議する意思がないことを示す不誠実な態度であったとみるのが相当である。
② 法人が予定時間内で団交を終了することは、必ずしも非難されることではないが、法人が団交事項となり得る法人全体の労働条件について一切協議しないという不誠実な態度に終始した上、組合が交渉続行を求めていたにもかかわらず、団交終了時刻になったからというのみで、持ち帰るとだけ述べて、今後の対応について何ら示すことないまま退席したことは、実質的な団交に応じないまま、一方的に打ち切る不誠実な態度であったといわれてもやむを得ない。
(3)したがって、26.5.28団交における法人の対応は、労働組合法第7条第2号及び第3号に該当しないが、26.7.2団交における法人の対応は、同条第2号及び第3号に該当する。
3 争点3(26.7.6組合文書による団交申入れに対する法人の対応は、労働組合法第7条第2号及び第3号に該当するか。)について
① 26.7.2団交及び同団交後の組合の言動を理由として、ア組合の謝罪がなければ団交の日程調整にも応じない、イ26.7.2団交における組合の暴言、騒動のみを議題として団交を申し入れることを繰り返した法人の対応は、組合の言動を奇貨として、団交の開催を拒否したものとみられてもやむを得ない。
② 他方、法人は、26.10.3法人申入書で組合の謝罪を団交開催の条件とすることに固執することなく、組合の要求事項を加えた団交を申し入れ、その後も26.10.21法人申入書等を提出して交渉による解決の姿勢を示しているのであるから、26.10.3法人申入書提出以降の法人の対応は不当とはいえない。
③ したがって、26.7.6組合文書による団交申入れに対する26.10.3法人申入書までの法人の対応は、正当な理由のない団交の拒否に当たる。
4 団交の開催場所を法人施設外と指定したことについて
① 団交場所は、労使の合意によって決定されるべきものであるが、その合意は、必ずしも組合の要求に従ったものでなければならないものではない。
② 本件についてみると、ア会場の手配は、法人が行う旨申し出ていること、イ本件申立後の団交についてであるが、Cの会場借上げ費は、法人が費用負担していること、ウ組合からCを会場とすることについて、不都合や支障がある旨の具体的な主張がなされていないこと等を勘案すれば、Cでの団交開催は、特に組合にとって負担になるものと認められず、団交の開催場所を法人施設外と指定した法人の対応が組合に対する支配介入であるとまではいえない。  
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委平成28年(不再)第68号、中労委平成29年(不再)第50号 棄却 平成31年2月6日
 
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