概要情報
事件番号・通称事件名 |
大阪府労委平成28年(不)第22号
不当労働行為審査事件 |
申立人 |
X1組合、X2支部 |
被申立人 |
Y会社(「会社」) |
命令年月日 |
平成29年12月11日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、被申立人が、申立人X2支部に対し日々雇用労働者の供給依頼の停止を一方的に通知して以降、別組合に対してのみ日々雇用労働者の供給を依頼し、申立人らによる日々雇用労働者の供給依頼に応じないこと、が不当労働行為であるとして救済申立てのあった事件で、大阪府労働委員会は、申立てを棄却した。 |
命令主文 |
本件申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
1 争点(組合らの本件申入れに応じない会社の対応は、組合らに対する支配介入に当たるか。)について
会社内に複数の労働組合が併存していて、各組合が組合活動の一環として労働者供給事業を行う場合には、会社としては、各組合の行う労働者供給事業について中立的な態度を保持すべきであるから、使用者が一方組合と労働者供給契約を締結しておきながら他方組合との締結を拒否することは、特段の事情がない限り、他方組合の活動力を低下させ弱体化を図る意図を推認させ、同組合に対する労働組合法第7条第3号の支配介入に当たる。
本件申入れに応じない理由について、会社は、①生コン需要が回復していないこと、②組合らとの信頼関係が破壊されていること、③コンプライアンス上の重大な懸念があることの3点を挙げ、いずれの点からみても、組合らと他の2労組で異なる取扱いをすることには、合理的かつ十分な理由があり、平等取扱い、中立義務には反していない旨主張するのでこれらが特段の事情といえるか、以下検討する。
会社は組合らとの信頼関係が破壊されていると主張するところ、20.7.2抗議活動は5名の組合員が逮捕される刑事事件になり、3名の組合員が威力業務妨害罪で有罪になったこと等が認められ、これらのX2支部の活動は、いずれも労働組合の活動として正当化できる範囲を逸脱したものといわざるを得ない。
会社は、この点について、これらの事実を挙げた上、X2支部による業務妨害行為が繰り返されたことにより、X2支部との間に新たに労働者供給契約を締結するだけの信頼関係の構築がなされていない状況にあると考えているとし、生コン需要が回復し、労働者供給事業を拡大する必要が生じたときには、新たに契約を締結することを検討するが、その際には、これまで繰り返されてきた業務妨害行為についてX2支部が現在どのような認識を持っているのか、今後同様のことを繰り返す意思がないのかについて、意見交換をさせていただいた上で、新たに契約を締結するに足りるだけの信頼関係の構築が可能かどうか等を検討させていただく旨回答しており、X2支部とX1組合の関係から一体として、組合らとの信頼関係が違法行為の繰返しにより破壊されているとの会社の主張は首肯することができる。 これらのことからすると、会社が組合らとの間の信頼関係が破壊されているとして、本件申入れに応じないことには特段の事情があるといえる。
なお、組合らは、申立外生コン会社から事業を引き継いでまもなく、会社が組合らに対する対決姿勢に転じてきたため労使紛争が生じるようになり、その対立は激化し、会社は刑事弾圧を積極的に推進してきた旨、20.7.2抗議活動以前から、会社は組合らからの労働者供給を減少させ、他の2労組と比較し差別的取扱いを行っていたのであり、会社の組合嫌悪に基づく不当労働行為が組合らの行動につながったとして、会社が本件申入れに応じない理由とする信頼関係の破壊は、組合嫌悪という真の意図を隠すための表向きの理由にすぎず、会社は不当労働行為意思の下に他の2労組に対してのみ日々雇用労働者に会社の業務を行わせた旨主張するが、これらの組合らの主張を認めるに足る疎明はない。 以上のことからすると、会社が本件申入れに応じない理由として挙げるその余の理由について判断するまでもなく、会社が本件申入れに応じないことには特段の事情が認められるのであり、この取扱いによって、組合らと他の2労組との間で会社の対応に差異が生じていることをもって、直ちに組合らに対する会社の支配介入であるとはいえないのであるから、組合らの本件申入れに応じない会社の対応は、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為であると認めることはできず、本件申立てを棄却する。 |
掲載文献 |
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