労働委員会裁判例データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  東京地裁令和元年(行ウ)第237号
関西宇部不当労働行為救済命令申立棄却命令取消請求事件  
原告  X1地方本部(「X1組合」)、X2支部(「X2組合」)(両者を「組合ら」) 
被告  国(処分をした行政庁 中央労働委員会) 
被告補助参加人  株式会社Z1(「会社」) 
判決年月日  令和2年3月23日 
判決区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 会社は、X2組合に対し労働者供給依頼の停止を一方的に通知して以降、他の組合に対してのみ労働者供給を依頼し、組合らによる労働者供給依頼に応じなかった。
2 本件は、会社が組合らからの労働者供給依頼の再開申し入れ(本件申入れ)に対し、これに応じなかったことが不当労働行為であるとして救済申立てのあった事件である。
3 大阪府労委は、不当労働行為とは認められないとして、組合らの申立てを棄却したところ、組合らはこれを不服として再審査申立てをしたが、中労委は、同申立てを棄却する命令(本件命令)をした。
4 組合らは、これを不服として、東京地裁に行政訴訟を提起したが、同地裁は、組合らの請求を棄却した。  
判決主文  1 原告らの請求を棄却する。
2 訴訟費用(補助参加によって生じたものを含む。)は、原告らの負担とする。 
判決の要旨  (1)X1組合は、労働者供給事業を行うことによって組合員の雇用安定を図り、労働者を組織化することを課題としており、そのため労働者の供給先の確保に努めているのであるから、会社が本件申入れに応じず、組合らに対する労働者供給依頼を再開しなかったことは、X1組合及びその下部団体であるX2組合に対し、小さくない不利益を生じさせるものである。
 他方で、会社は、使用者として、各組合に対して中立的態度を保持し、その団結権を平等に承認、尊重すべきであるが、それぞれの組合の主張内容や主張態度が異なる場合に、対応の仕方に相違を生ずること自体はやむを得ないものであり、上記の中立性の枠を逸脱するものでない限り、このような相違が生じ、これにより特定の組合に一定の不利益が生じることをもって直ちに当該組合に対する不当な差別であるということはできない。
(2)そこで、会社が本件申入れに応じなかった経緯を検討するに、会社は、本件申入れを受け、組合らに対する労働者供給依頼を停止している理由として、生コン需要の低下に加え、X2組合の組合員らの抗議活動や業務妨害行為等により、組合らとの間の信頼関係が破壊され、コンプライアンス上の重大な問題が生じていることを指摘するとともに、組合らに対し、新たに労働者供給契約を締結することに懸念を抱かざるを得ない状況であるため、従前の業務妨害行為について現在どのような認識を有しているのか、今後同様のことを繰り返す意思がないのかということについて意見交換をした上で、新たな労働者供給契約を締結するに足りる信頼関係の構築が可能かどうか等を検討したいと考えている旨を伝えたものである。
 会社が組合らに対する労働者供給依頼を停止するきっかけとなった平成20年7月2日のX2組合の組合員らによる抗議活動については、その後の刑事事件において有罪判決が確定しており、当該抗議活動が労働組合の活動としても社会的相当性を逸脱した違法なものであることが確定している。しかるに、組合らは、会社が上記の抗議活動を理由として組合らに対する労働者供給依頼を停止したことについて、強く抗議するのみで、その後も、本件申入れに至るまでの間、会社やその同業他社に対し、出荷業務の妨害を含む抗議活動を繰り返したり、会社の代表者であったC6元代表が居住するマンション付近で街宣行動を繰り返したりし(これらの抗議活動については、刑事事件において有罪判決が確定したり、民事事件において不法行為に基づく損害賠償請求を認容する判決が確定したりしており、労働組合の活動としても社会的相当性を逸脱した違法なものであることが確定している。)、本件申入れの時点においても、従前の活動方針を改める意思を有しておらず、上記の意見交換をしたい旨の会社の意向伝達に対して、回答することもなかったものである。
 これらの事情によれば、本件申入れの時点においても、組合らが平成20年7月2日の抗議活動と同様の抗議活動を行う可能性は相当程度あったといわざるを得ず、会社がコンプライアンスの観点からも組合らとの間で新たに労働者供給契約を締結することについて懸念を抱くことももっともであるということができる。そうすると、会社が、本件申入れを受け、組合らに対し、従前の業務妨害行為等に関する組合らの認識等について意見交換をしたい旨の意向を伝えることが、組合らに対する支配介入に当たるということはできないし、上記意向伝達に回答することもなかった組合らに対して労働者供給依頼を再開しなかったことが、組合らに対する不当な差別として支配介入に当たるということもできない。
(3) これに対し、組合らは、C6元代表の組合らに対する言動やその意向を受けたC7協組の方針の影響により組合らの組合員が大幅に減少していることから、会社は、本件申入れを拒絶することにより、組合らの弱体化を企図していたものということができる旨を主張するが、組合らが指摘するC6元代表の言動は、C6元代表が会社の代表取締役等を辞任してから1年半以上が経過し、しかも、会社が本件申入れに応じないことを明らかにした平成27年6月からは2年半以上が経過した後に行われたものである。以上に加えて、C7協組の方針の影響により組合らの組合員が減少したことと会社が本件申入れに応じなかったこととの間には関連性が認められないこと(なお、本件申入れ前にX2組合を退会した組合員1名についても、一身上の都合により退会したものであり、会社が組合らに対する労働者供給依頼を停止していたこととの関連性は明らかではない。)も併せ考慮すると、組合らが指摘する諸事情に基づき、会社の支配介入の意思を認定することは困難であるといわざるを得ない。
(4) 以上によれば、会社が本件申入れに応じず、組合らに対する労働者供給依頼を再開しなかったことは、労組法7条3号の不当労働行為に該当しないというべきであり、これと同旨の本件命令の判断は正当であり、その他、本件命令に違法な点は見当たらず、本件命令は適法である。 
その他   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委平成28年(不)第22号 棄却 平成29年12月11日
中労委平成29年(不再)第62号 棄却 平成30年9月19日
 
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