労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  中労委平成26年(不再)第52号
ジェイウェーブ外1社不当労働行為再審査事件 
再審査申立人   X組合 
再審査被申立人   Y1社、Y2社 
命令年月日  平成29年5月10日 
命令区分  棄却 
重要度   
事案概要  1 本件は、Y1社の次の行為が不当労働行為であるとして、組合が大阪府労働委員会(以下「大阪府労委」という。)に救済申立てを行った事件である。
 (1)A1組合員の就労復帰を認めなかったこと。
 (2)A2組合員の就労日数を減少させたこと。
 (3)A2組合員に専属車両を割り当てなくなったこと
 (4)Y2社の代表者であるB2がA2に対して組合脱退の働きかけをしたこと。
2 初審の大阪府労委は、(2)については、労組法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為であると判断し、Y1社に対し、①配車差別の禁止、②賃金差額の支払い、③組合に対する文書手交を命じ、その余の救済申立てを棄却したところ、組合はこれらを不服として再審査を申し立てた。 
命令主文  本件各再審査申立てをいずれも棄却する。 
判断の要旨  1 Y2社は組合並びにA1組合員及びA2組合員の労組法上の使用者に当たるか)
 Y1社及びY2社は、お互いに必要に応じて業務提携をし、共同配車を行っているが、法人格、代表者等はそれぞれ異なり、両社はそれぞれ独立した法人として活動していることから、同社が実質的に同一であるということは到底できない。またY2社がY1社の運転手の労働条件を支配決定できる地位にあったとは到底いえない。そして、他にY2社がY1社の労働者の基本的な労働条件等について、Y1社と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあったことを示す事情も認められない以上、Y2社は組合並びにA1組合員及びA2組合員との関係で労組法第7条の使用者に当たらない。
2 A1組合員の就労復帰を認めなかったこと
 A1組合員はCにより入院したのであり、就労復帰して乗務中に再び発症すれば重大な事故につながるおそれがあり、そのような事態が生じればY1社はA1組合員の使用者としての責任を免れない可能性があることから同人の就労復帰について慎重であったことは無理かならぬ面がある。
 Y1社が就労復帰の判断をA1組合員の主治医に確認したところ、現時点では就労復帰が認められない旨述べた後、団体交渉においてY1社が組合に対して薬代の領収書の提出を求めたところ、提出を約したにもかかわらず、これを提出せず、医療照会をするためのA1組合員の同意書の作成協力も拒否した。
 Y1社は、A1組合員の就労復帰が可能であるかについて慎重に取り扱う必要があり、組合及びA1組合員は就労可能であることをY1社に示せてないのであるから、Y1社が現状においては判断がつかず、就労復帰を認められないとしたことは合理的な理由があるというべきであり、労組法第7条第1号あるいは第3号の不当労働行為はいずれも成立しない。
3 A2組合員の就労日数を減少させたこと
 A2組合員は、組合加入直後から就労日数は絶対的にも相対的にも顕著に減少したといえ、同人が不利益を被ったことは明らかであり、また、Y1社の代表者であるB1と組合の間には緊張関係があったということができる。
 Y1社におけるY2組合員の就労日数減少に関する合理的理由は認められず、組合員であるが故に行われた不利益取扱いに該当すると認めるのが相当であり、さらに、組合活動を萎縮させ得るものとして、支配介入にも該当するといえ、労組法第7条第1号あるいは第3号の不当労働行為に該当する。
4 A2組合員に専属車両を割り当てなくなったこと
 A2組合員が平成24年7月までに主に乗務していた車両については、8月は塗装整備を行っていたことから、割り当てることは不可能であった。そしてA2組合員はメンテナンスが不十分であったというのであるから、塗装整備後に同車両に乗務させないこととしたことには相応の合理的な理由がある。
 また、A2組合員とY1社において「常勤」とされる他の運転手の乗務車両の状況の間に特段の差異は認められないほか、同一車両に乗務している運転手はほとんどいないことが認められることからすれば、Y1社がA2組合員に専属車両を割り当てなかったことが、労組法第7条第1号の不利益取扱いに当たるとはいえない。
5 Y2社の代表者であるB2がA2組合員に組合脱退を働きかけたこと
 Y2社の代表者であるB2が実質的にY1社の管理職的な地位にあることを認めるに足りる証拠はないし、Y2社はY1社の従業員の使用者とは認められない。さらに、本件発言が、Y1社の代表者であるB1の指示を受けた、あるいはY1社の意を体して行われたという事情も認められない。したがって、Y2社の代表者であるB2がA2組合員に対してなした本件発言をY1社の行為とみることはできない。
6 救済利益及び救済方法
 A2組合員への賃金支払いを命じる初審命令主文にある「平成24年8月分以降の同組合員が就業していた期間の賃金」のうち、「平成24年8月分」とは同月に支払う賃金のことをいうものと解されるところ、賃金の支払い条件は、月末締めの翌月10日払いになっていることに鑑みれば、平成24年7月21日から31日までの分を含む7月就労分が含まれることは明らかであるから、組合主張の不服はその前提を欠く。
 その余の点については、本件における全ての事情に鑑み、初審命令主文の救済が相当であると考える。  
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委平成24年(不)第92号 一部救済 平成26年9月29日
東京地裁平成29年(行ウ)第445号 棄却 平成31年3月22日
 
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