労働委員会裁判例データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  東京地裁平成29年(行ウ)第445号
ジェイウェーブ外1社不当労働行為救済命令申立棄却命令取消請求訴訟事件 
原告  X支部(「組合」)
被告  国(処分行政庁 中央労働委員会) 
被告補助参加人  有限会社Z1 (「Z1])、有限会社Z2(「Z2」)
判決年月日  平成31年3月22日 
判決区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、(1)補助参加人Z1に日々雇用のミキサー車運転手と して雇用され勤務していた組合員X1の退院後における就労復帰を認めなかったこと、(2)Z1及びZ2が組合員X2に対して 組合加入後に就労日数を減少させたこと、(3)Z1がX2に対して組合加入後に専属車両を割り当てなくなったこと、 (4)Z2の代表取締役が組合員X2に対して組合脱退を働きかけたことが不当労働行為に該当するとして、大阪府労委に救済申 立てを行った事件である。
2 初審大阪府労委は、(2)について労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為の成立を認め、 Z1に対し、①組合員X2 に対し組合加入前と比べて配車差別することなく配車すること、②組合員X2に対し組合加入後、配車差別がなければ支払われて いたであろう賃金相当額と既支払額との差額の支払い、組合に対する文書手交を命じ、その余の申立てを棄却した。
3 これを不服として、組合は再審査の申立てを行ったが、中労委は再審査申立てを棄却した。
4 組合は、これを不服として、東京地裁に対して取消訴訟が提起されたが、同地裁は原告の請求を棄却した。 
判決主文  1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は、補助参加によって生じた費用も含めて、原告の負担とする。 
判決の要旨  1 争点1(Z2は、労組法の適用上、組合、組合員X1、組合員 X2との関係で同法第7条所定の使用者に当たるか)について
 本件におけるZ1とZ2との業務提携関係は、それぞれが自社の保有するミキサー車を自社の運転手に運転させて、他方から請 け負った輸送業務を行うという形態で行われるものにすぎず、Z2の代表者が業務提携に必要な範囲でZ1の運転手に対して指示 を与えることがあったにせよ、Z2が、Z1の運転手の業務全般につき指揮監督する立場にあったということも、Z1の運転手の 基本的な労働条件等について現実的かつ具体的に支配・決定することができる地位にあったということもできないから、労組法の 適用上、組合員X1及び組合員X2との関係で労組法第7条の使用者に当たるとする組合の主張は失当であり採用することができ ない。
2 争点2(Z1が、組合の求めた組合員X1の就労復帰を認めなかったことは労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に 該当するか)について
 組合員X1が乗務中に体調に異変を生じ脳出血と診断されて緊急入院したことことからすると、同組合員が乗務中に再び脳出血 を発症し重大事故につながるおそれがあること、その場合にZ1が使用者として第三者から法的責任を問われる可能性があること を懸念することはやむを得ないといわざるを得ない。しかるに、Z1が組合員X1に対して薬の処方を受けたことが分かる領収書 の提出を求めたにもかかわらずその提出がなく、また、同組合員が医療照会に必要な同意書の作成にも協力が得られなかった経緯 に照らすと、同組合員について即時就労復帰の判断はできないとしたZ1の措置には十分な合理性が認められる。
 また、組合員X1は従前ミキサー車運転手としてZ1に日々雇用されたのであって、脳出血を発症し た後、Z1が運転業務以外 に転換して雇用を継続するという措置を講じなかったのだとしても、 これをもって直ちに組合加入を理由とした不利益な取扱いであるとか支配介入であるということもできない。
 Z1が原告の求めた組合員X1の就労復帰を認めなかったことが労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に該当するとい うことはできない。
3 争点3(Z1が組合員X2の組合加入通知の翌日から約3か月間同組合員に対し専属車両を割り当てなかったことが労組法第 7条第1号の不当労働行為に当たるか)について
 確かに、運転手にとって同一車両を連続的に割り当てられることが事実上の便益となる側面があり、従前行われていた同一車両 の連続的割当につき組合加入を理由に中止することが労組法第7条第1号の不利益な取り扱うに当たる場合があることは否定する ことができない。
 しかしながら、Z1では、組合員X2が乗務していた車両につき、架装メーカーの下地処理の問題から再度塗装整備を行う必要 が生じ、この頃、同車両を組合員X2に連続的に割り当てることができなかった。この間に組合員X2に対して同車両を割り当て なかったことが同組合員の組合加入を理由とするものとは認めがたい。また、車両の割当ては基本的に使用者の判断によるもので あり、同一車両の連続的割当は事実上の措置にすぎないことを踏まえると組合員X2に同車両を割り当てることができなくなった 後、異なる車両を組合員X2のために確保し、これを連続的に割り当てなかったことが同人の組合加入を理由とする不利益な取扱 いに当たるとはいえない。
4 争点4(Z1はZ2代表者の発言について労組法第7条第3号の不当労働行為責任を負うか)について
 Z2の代表者は、Z1の管理職的な地位にあったとは認められず、また、Z2とZ1と実質的に同一であったとも認められない 上、Z2の代表者の発言がZ1の指示に基づきなされたと認めるべき具体的な事情もない。
 また、Z2の代表者の発言は、Z1とは別法人の代表者として、飽くまでも個人的な立場からなされたものである。
 よって、同発言についてZ1が労組法第7条第3号の不当労働行為責任を負わないとした本件命令の判断に違法はない。
5 争点5(救済方法の選択の当否(補助参加人Z1に対して謝罪文の掲示を行わせなかった本件命令に裁量を逸脱した違法はあ るか)について
 救済命令制度は、使用者の不当労働行為により生じた事実状態を救済命令によって是正することにより正常な集団的労使関係秩 序を回復させることを目的とする制度であり、救済命令を発するについては、労使関係について専門的知識経験を有する労働委員 会が、その裁量により、個々の事案に応じて決定する措置に委ねる趣旨と解され、正常な集団的労使関係が回復されて、将来の労 使関係にも危惧が残らないか否かは、労働委員会が有する労使関係についての専門的知識経験による労使関係の機微に基づく判断 に委ねるべき事柄といえることから、訴訟において救済の必要性が争われる場合、裁判所は、労働委員会の裁量権を尊重し、その 判断が前記趣旨、目的に照らして是認される範囲を超え、又は著しく不合理であって濫用にわたると認められるものでない限り、 労働委員会が救済の必要性についての判断に基づき発した命令を違法とすべきではないと解するのが相当である(最高裁判所昭和 45年(行ツ)第60号、第61号同52年2月23日大法廷判決・民集31巻1号93頁参照)。
 補助参加人Z1は、組合に対し、初審命令主文第2項で命じられた文書の手交を行うとともに、初審命令主文第1項の救済命令 の履行を議題とする団体交渉を行い、同救済命令の履行に係る提案書を交付するなどしたが、支払金額をめぐって双方の見解が対 立したため、履行に至らなかった経緯を踏まえると、本件命令の判断は、救済命令制度の趣旨、目的に照らして是認される範囲を 超え著しく不合理であって濫用にわたるものということはできない。 
その他   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委平成24年(不)第92号 一部救済 平成26年9月29日
中労委平成26年(不再)第52号 棄却 平成29年5月10日
 
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