労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委平成27年(不)第24号
不当労働行為事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  株式会社Y(「会社」) 
命令年月日  平成28年12月12日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   組合が平成27年2月7日、A2の組合加入を通知したところ、会社は、同年3月21日の団体交渉(以下「団交」という。)において、同月31日に定年退職となるA2の再雇用条件について、著しく低い条件を提示した。組合は、同月30日、A2の再雇用条件に係る団交再開を申し入れたが、会社は応じなかった。
 本件は、被申立人が、①定年退職となる組合員に対し、著しく不利益な定年再雇用の労働条件を提示し、従前どおりの労働条件での再雇用を求めた組合の要求を拒否し、組合員を再雇用しなかったこと、②申立人組合員の再雇用にかかる労働条件についての団交申入れに応じなかったことが、それぞれ、不当労働行為に当たるとして救済申立てのあった事件で、大阪府労働委員会は、会社に対し、A2組合員の再雇用、バックペイ、団交応諾並びに文書の手交及び掲示を命じた。 
命令主文  1 被申立人は、申立人組合員A2を、平成27年4月1日以降も従業員として再雇用したものとして取り扱い、改めて再雇用契約を締結するまでの間、同組合員に対し、定年退職前と同一の労働条件で再雇用されていれば得られたであろう賃金相当額を支払わなければならない。
2 被申立人は、申立人が平成27年3月30日付けで申し入れた、申立人組合員A2の労働条件を議題とする団体交渉に応じなければならない。
3 被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交するとともに、縦2メートル×横1メートル大の白色板に下記の文書と同文を明瞭に記載して、被申立人本社の正面玄関付近の従業員の見やすい場所に2週間掲示しなければならない。
(省略)
 
判断の要旨  1 争点1(会社が、A2組合員を定年後再雇用しなかったことは、組合員故の不利益取扱い及び支配介入に当たるか。)について
(1)組合員故の不利益取扱いに当たるかについて
① 会社は、A2組合員について従前の総支給額より著しく低い再雇用条件を提示しており、この再雇用条件の提示は不利益な取扱いに当たる。
② 会社は、定年退職となるA2組合員を再雇用するに当たり、同組合員の健康状態を踏まえて再雇用条件を提示した旨主張する。
ア 会社は、A2組合員に脳梗塞の既往症があることを認識しながら、平成25年5月16日に同組合員を正社員のミキサー運転手として雇用し、また、A2組合員の健康診断書(A2健康診断書)にて同組合員の健康状態が明らかになった後も、A2組合員を同27年2月26日までミキサー車運転手として就労させており、その間、業務に支障が生じたとか、健康状態を理由に就業状況等に配慮したと認めるに足る疎明はない。
イ また、会社は、A2組合員の勤務ぶりについて従前よりも動けなくなっているとの変化を感じたため、平成27年2月頃に同組合員の健康状態を把握しようと思い立った旨主張するが、そうであるならば、同年2月以降、改めてA2組合員に健康診断を受診させ、その結果で判断すべきであったにもかわらず、会社が医師らに意見を求めたと主張するのは同26年8月のA2健康診断書についてであったことからすると、会社は、同組合員の健康状態等を勘案して再雇用条件を提示したとはいえず、会社の主張は採用できない。
ウ したがって、A2組合員の再雇用条件が同組合員の健康状態を勘案して提示されたとはいえない。
③ 遅くとも、25年9月からは、組合と会社との間で労使紛争が発生しており、社長自らが組合に良い感情を抱いていなかったのであるから、会社はA2組合員の定年退職当時、組合を嫌悪していたことは容易に推忍できる。
④ 以上を総合的に勘案すると、会社は、再雇用制度について就業規則で規定し、非組合員運転手については、定年後も定年前と同様の労働条件で雇用していながら、A2組合員については、同人の組合加入通知を受けた直後に、著しく低い再雇用条件を提示することによって、同組合員に再雇用契約の締結を拒否することを余儀なくさせたものであって、実質的にA2組合員の定年後の再雇用を拒否したといえる。
 よって、会社がA2組合員を定年後に再雇用しなかったことは、労働組合法第7条第1号に該当する不当労働行為である。
(2)支配介入に当たるかについて
 A2組合員の組合加入通知後に、同組合員に対し著しく低い再雇用条件を提示し、再雇用契約を拒否させて同組合員を再雇用しなかったことは、会社からA2組合員を排除するとともに組合活動を萎縮させ、組合の弱体化を図ったというのが相当であって、組合に対する支配介入にも当たり、労働組合法第7条第3号に該当する
2 争点2(組合の3.30団交申入れに対する会社の対応は正当な理由のない団交拒否に当たるか。)について
① 会社は、3.30団交申入れを拒否した理由として、再雇用条件は合理的でその理由を3.21団交で説明したにもかかわらず、A2組合員や組合が一切譲歩等しないのであるから、この状況下では団交を継続する必要性も合理性もない旨主張する。
ア 会社は、A2組合員に対して定年退職前と同一の労働条件を提示すべきであったところ著しく低い条件を提示しており、これには理由がない。
イ 組合及びA2組合員は提示された労働条件に納得していないこと、3.21団交で、社長は、サインをしないのなら、それは仕方がない旨、再雇用契約に合意するかしないかである旨述べていること、がそれぞれ認められ、会社が提示した不合理な再雇用条件に固執したまま、3.21団交が終了したことが認められる。
 したがって、会社が3.21団交で誠実に交渉を行い、合意達成の可能性を模索したとはいえない。
ウ このような状況下で、組合は、3.30団交申入れにて、A2組合員の労働条件について団交の再開を求めたのであるから、会社は、同団交申入れに応ずべきであり、これを拒否することは、団交を正当な理由なく拒むことに当たる。
エ 以上のことからすれば、会社が3.30団交申入れに応じなかったことに正当な理由はなく、会社の主張は採用できない。
② したがって、3.30団交申入れに対する会社の対応は、正当な理由のない団交拒否に当たり、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為である。  
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪地裁平成29年(行ウ)第5号 棄却 平成29年10月11日
大阪高裁平成29年(行コ)第227号 棄却 平成30年4月12日
最高裁平成30年(行ヒ)第292号 上告不受理 平成30年9月27日
 
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