労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪高裁平成29年(行コ)第227号
ナンセイ不当労働行為救済命令取消請求控訴事件
原告  株式会社X(「会社」) 
被告  大阪府(同代表者兼処分行政庁・大阪府労働委員会) 
被告補助参加人  Z1労働組合
関西地区生コン支部(「組合」) 
判決年月日  平成30年4月12日 
判決区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 組合が平成27年2月7日、A1の組合加入を通知したところ、 会社は、同年3月21日の団体交渉において、同月31日に定年退職となるA1の再雇用条件について、著しく低い条件を提示し た。組合は、同月30日、A1の再雇用条件に係る団交再開を申し入れた(「本件団体交渉申入れ」)が、会社は応じなかった。
 本件は、会社が、①60才で定年退職となるA1に対し、著しく不利益な定年再雇用の労働条件を提示し、従前どおりの労働条 件での再雇用を求めた組合の要求を拒否し、A1を再雇用しなかったこと、②A1の再雇用にかかる労働条件についての本件団体 交渉申入れに応じなかったことが、それぞれ、不当労働行為に当たるとして救済申立てのあった事件で、大阪府労働委員会は、会 社に対し、A1の再雇用、バックペイ、団交応諾並びに文書の手交及び掲示を命じた。
2 会社は、これを不服として、大阪地裁に行政訴訟を提起したところ、同地裁は、会社の請求を棄却した。
3 会社は、これを不服として、大阪高裁に控訴したが、同高裁は、会社の控訴を棄却した。 
判決主文  1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は、控訴人の負担とする。 
判決の要旨  当裁判所の判断
1 原判決の引用等
 当裁判所も、会社の本件請求はいずれも理由がないものと判断する。その理由は、後記2のとおり、当審における会社の補充主 張に対する判断を加えるほかは、原判決の第3の1ないし3で認定説示するとおりであるから、これを引用する。
2 当審における会社の補充主張に対する判断
(1) 就業規則の解釈について
 会社は、就業規則において「再雇用」の文言が用いられていることを根拠に、会社は定年退職前の雇用条件と同一の再雇用条件 を提示する義務を負わず、被用者は、会社が提示した再雇用条件で勤務の延長を希望したときに限り、63歳まで再雇用されるこ とになる旨主張する。
 しかし、定年後の雇用に関する就業規則に「再雇用」の文言が用いられていることをもって直ちに、会社が、無制限に定年退職 後の再雇用条件を決定することができるものと解することはできず、当該就業規則の内容全般及び変更の有無、経緯、実際の運用 状況を勘案して、当該就業規則の解釈を行う必要がある。そして、原判決において認定説示したとおり(原判決第3の2(1)ア (ア))、平成18年8月1日変更後の会社の就業規則における定年後の雇用の定め(38条)によれば、①従業員が希望すれば 63歳まで再雇用する、②その後も当該従業員が希望した場合は、それまでの就業状況や健康などを勘案し、雇用条件を見直した 上で65歳まで再雇用することができるとされていること、平成18年8月1日変更前の会社の就業規則における定年後再雇用の 規定には、上記①に当たる記述はなく、従業員が希望した場合は、それまでの就業状況や健康などを勘案し、雇用条件を見直した 上で65歳まで再雇用することがあるとのみ規定されていたこと、会社は、C2との間でその定年退職日である平成26年3月 31日以降も労働条件を変更することなく雇用していたことに鑑みれば、平成18年8月1日変更後の会社の就業規則は、63歳 までは、「それまでの就業状況や健康などを勘案し、雇用条件を見直すことなく再雇用」する旨規定す るものであると認めるのが相当である。
 したがって、会社の主張は採用することができない。
(2) A1の健康状態について
 会社は、3月21日団体交渉において再雇用契約書を提示した時点で、A1は運転業務に従事させられない病状であったのであ り、この病状を前提に再雇用条件を提示することは何ら不合理ではなく不当労働行為に当たらないと主張する。
しかし、A1は、脳梗塞に罹患した後も、職場復帰して、ミキサー車運転手として稼働してきたものであり、そもそも、A1の脳 梗塞、高血圧あるいは糖尿病について、主治医から診療経過を取り寄せるか、少なくともA1本人から現在の病状について聞き取 りを行わなければ、「勤務中に倒れる可能性がある」かどうかの正確な判断は困難であるというべきである。また、A1が本件健 康診断後に精密検査の紹介状の交付を受けたにもかかわらず、自主的に自身の健康管理のため精密検査を受けていなかったとして も、本件健康診断は定年後再雇用の時期から半年以上も前の平成26年8月29日に実施されたものであり、定年後再雇用に当 たっては、本件健康診断後の体調の推移も踏まえる必要があることから、会社は,A1に対し、医師の診断を受けるよう指示し、 その結果を踏まえて検討すべきであったにもかかわらずこのような指示も行っていない。これらの点に鑑みると、仮に会社が本件 健康診断の結果を見せたとする2人の医師が本件健康診断の結果を踏まえて会社主張のとおり判断したのだとしても、単に本件健 康診断の結果をもってなされた上記の医師の判断に基づいてA1の再雇用の適否を判断することが適切であるとは認められない。 したがって、会社の主張は採用することができない。
3 結論
 以上の次第で、本件救済命令は適法であり、会社の本件請求はいずれも理由がないから棄却すべきである。 
その他   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委平成27年(不)第24号 全部救済 平成28年12月12日
大阪地裁平成29年(行ウ)第5号 棄却 平成29年10月11日
最高裁平成30年(行ヒ)第292号 上告不受理 平成30年9月27日
 
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