概要情報
事件番号・通称事件名 |
中労委平成27年(不再)第4・6・26・27号 泉佐野市・泉佐野市(26年度) 不当労働行為再審査申立事件 |
再審査申立人
平27不再4・26号 |
市 |
再審査申立人
平27不再6・27号 |
市職労 |
再審査申立人
平27不再6・27号 |
現業支部 市職労と併せて「組合」 |
再審査被申立人
平27不再4・26号 |
市職労 |
再審査被申立人
平27不再4・26号 |
現業支部 市職労と併せて「組合」 |
再審査被申立人
平27不再6・27号 |
市 |
命令年月日 |
平成28年11月16日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
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事案概要 |
1 本件は、市が、① 市庁舎内の組合事務所に係る25年度の使用料減免申請を不承認としたこと及び26年度の使用料減免申請を不承認とするとともに、使用を許可するに当たり条件を付したこと(「本件使用料減免不承認決定」)が労組法第7条第3号の不当労働行為に、② 本件使用料減免不承認決定に関する25年4月4日付及び26年3月13日付団体交渉申入れ(「本件各団体交渉申入れ」)に応じなかったことが同条第2号の不当労働行為に当たるなどとして、組合がそれぞれ救済申立てを行った事案である。
2 初審大阪府労委は、上記1のいずれも不当労働行為に該当するとして、市に対し、上記1の②の誠実団交応諾及びに上記1に係る文書手交を命じたところ、市及び組合は、これを不服として、それぞれ再審査を申し立てた。 |
命令主文 |
本件各再審査申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
1 本件使用料減免不承認決定は支配介入に当たるか
(1) 市は、25年2月中旬、組合に約1か月半の期間しか設けず、同年度から使用料を徴収する意向を伝えたのみで、具体的な内容は明らかにしておらず、組合が市の提案を検討、判断するために配慮しているとはおよそ言い難い。さらに、市は、その理由や経緯、経過措置の内容等について組合に説明や協議を行おうともせず、これらに関する団交拒否に正当な理由はない(後記2)。このような市の対応は、労使間において長期間にわたり反復継続されてきた組合事務所使用料に係る取扱い(無償)を変更するに当たって、使用者である市に要求される労使交渉等の合意形成の努力に著しく欠けるものであったといわざるを得ない。
(2) 使用料の徴収は財政健全化施策の一環との市の主張は全く根拠を欠くとまではいえないが、市は、22年2月の財政健全化計画策定後も24年度までは減免承認決定をしていたところ、財政健全化計画の中で行政財産使用料の見直しがどのように位置づけられたかなど具体的な事情は何ら明らかでなく、本件使用料減免不承認決定は、財政健全化計画上の必要性から行われたとは認め難く、合理的理由があったとはいえない。
(3) 23年4月の市長就任以降、給与月額8%減額や職員基本条例の制定など組合員の労働条件に大きな影響を与える条例の改正が、労使協議が十分に行われないまま相次いで行われており、労使対立の状況の中、市は一貫して組合を軽視する態度をとっていたといえる。
(4) 上記のとおり、本件使用料減免不承認決定は、労働組合の自主的運営を支える主要な柱の一つである組合事務所の貸与について、労使間において長期間にわたり反復継続されてきた使用料に係る取扱いを、何ら労使交渉等の合意形成の努力を行うことなく、一方的に変更したものであり、しかもその変更に合理的理由があるともいえない。そして、市長就任以降の労使対立状況における、上記のような一方的変更は、他に特段の理由が見当たらない以上、市の著しい組合軽視の姿勢を示すものというほかなく、組合弱体化の意図に基づくものであることが強く推認され、組合運営に対する支配介入の不当労働行為と評価せざるを得ない。
したがって、本件使用料減免不承認決定は、労組法第7条第3号の不当労働行為に該当する。
2 本件各団体交渉申入れに応じなかったことは、正当な理由のない団交拒否に当たるか
組合事務所の使用料減免に関する事項が団体交渉の対象となるか検討するに、本件使用料減免不承認決定自体は、条例に基づき市の権限と責任において処理すべき事項であり、管理運営事項に当たり交渉の対象とはなし得ないが、不承認決定の処理に伴って発生する組合との団体的労使関係上の事項については、団体交渉の対象となると解される。
本件の申入事項全体をみると、組合としては、従前の取扱いのとおり、使用料の減免を求め(申入事項①)、それができないとしても不承認の理由(申入事項②)や不承認により組合が受ける不利益の回避(申入事項③)、代替手段・措置の可能性(申入事項④)について交渉を求めたものと解される。このうち、申入事項①は管理運営事項に関するものと評価しうるが、これは、組合として申入事項②ないし④について団体交渉を申し入れる前提として、従前の取扱いを求めるという基本的な立場を明らかにした面もあるといえる。申入事項②ないし④は、いずれも市との間で長期間にわたり無償で組合事務所の貸与が認められてきた労使関係上の取扱いの処理・変更(本件使用料不承認決定)に伴って生ずる問題について団体交渉を求めているといえるのであって、団体的労使関係の運営に関する事項といえるから、組合と市の間において、団体交渉の対象となる事項であると解される。そうすると、組合が本件使用料減免不承認決定に伴って生ずる問題について団体交渉を求めているにもかかわらず、市は、申入れを全体として管理運営事項であり交渉の対象とすることができないとして、交渉を一切拒否しているといえ、管理運営事項と評価しうる事項を一部含んでいることを理由に、明らかに義務的交渉事項についての申入れである本件各団体交渉申入れに一切応じない市の対応は、正当な理由のない団交拒否であるというべきである。
したがって、本件各団体交渉申入れに対する市の対応は、労組法第7条第2号の不当労働行為に該当する。
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掲載文献 |
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