労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  大阪府労委平成25年(不)第24号・同第52号 
事件番号  大阪府労委平成25年(不)第24号・同第52号 
申立人  X労働組合、同Z支部 
被申立人  Y市 
命令年月日  平成27年1月13日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   ①平成24年11月30日付け、12月10日付け、25年4月4日付け、5月10日付け及び同月29日付けの団交申入れに対する被申立人市の対応、②市が申立人組合からの組合事務所の使用料減免申請を不承認としたことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 大阪府労委は市に対し、1 25年4月4日付け団交申入れの誠実応諾、2 文書手交を命じた。 
命令主文  1 被申立人は、申立人X労働組合及び同X労働組合Z支部が平成25年4月4日付けで申し入れた団体交渉に誠実に応じなければならない。
2 被申立人は、申立人X労働組合及び同X労働組合Z支部に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
記(省略)
 
判断の要旨  1 平成24年11月30日付け団交申入れへの対応について
 被申立人市は、既に市から申立人組合に対する同一議題についての団交申入れが拒否されている以上、24年11月30日付け団交申入れに応じないことには正当な理由がある旨主張する。
 この点に関し、市が同年11月13日、組合に同日付け文書を交付して職員基本条例の制定等に関する団交を申し入れた際、組合は、制定しなければならない明確な理由がない以上、協議はしようがないと主張し、同文書を受領しなかったことなどが認められる。このような組合の対応は、労使協議により問題を解決する姿勢からはほど遠く、問題なしとしない。しかし、労働組合の団交権は最大限に尊重すべきものであって、組合が以前、団交申入れに応じなかったというのみでは直ちに組合からの同一議題の団交申入れに応じない正当な理由になるとまではいえない。
 また、市の上記団交申入れについて更にみると、市は当初から1か月未満の協議期間をもって市議会に議案を提出することを前提に団交を申し入れたとみるのが相当であるが、職員基本条例についての組合との協議の重大性に比べ、その期間は短いといわざるを得ない。
 以上のとおりであるから、11月13日付け文書に係る団交が開催されなかった原因は市側にもあったというべきであり、上記のような組合の対応をもって市が11月30日付け団交申入れに応じなかったことの正当な理由ということはできない。したがって、市は正当な理由なく団交申入れに応じず、もって、組合を軽視し、支配介入を行ったと判断され、かかる行為は労組法7条2号及び3号に該当する不当労働行為である。
2 24年12月10日付け団交申入れへの対応について
 市が組合に対し、24年12月7日付け文書により退職手当の調整率の変更についての団交を申し入れた際、組合が市の対応を批判し、同文書を受領しなかったこと、その後、組合が12月10日付けで同一の議題について市に団交を申し入れたことなどが認められる。
 市は当初から、組合との協議後、直ちに市議会に追加提案し、組合への団交申入れ後、1か月未満で退職手当の調整率の引下げを実行することを前提に団交を申し入れたとみるのが相当である。退職手当の調整率の引下げの影響の大きさと比べ、市が設定した協議期間はあまりに短いというほかない。組合が、市の団交申入れに対して、来春退職予定の職員等に対する具体的な説明も行われておらず、わずか2日で合意を見出すのは無理がある旨主張したことが認められるところ、かかる主張には理由がある。
 以上のとおりであるから、前記1の場合と同様に、市は組合の団交申入れに正当な理由なく応じず、もって組合を軽視し、支配介入を行ったと判断される。
3 組合事務所の使用料減免申請を不承認としたことについて
 市は、長期間にわたり使用料を免除し無償で使用を許可してきた組合事務所について、平成25年度から使用料を徴収することとしたものと解される。市は、その理由を明らかにして組合に説明を行い、その理解を得るよう努力する必要があるというべきであるが、市がかかる説明を行ったと認めるに足る疎明はない。市は組合に対して説明を行わないまま、組合事務所の使用料に係る取扱いを一方的に変更し、使用料の支払を求めたというのが相当である。したがって、市が組合事務所の使用料減免申請を不承認としたことは、組合に対する支配介入に当たり、労組法7条3号に該当する不当労働行為である。
4 25年4月4日付け団交申入れへの対応について
 市が組合事務所の使用に関する団交申入れに対し、行政財産の目的外使用許可や使用料に関する事項は管理運営事項であって交渉の対象とすることができないため、団交申入れを受けることはできない旨返答したことが認められる。
 しかし、組合は組合事務所のあり方や使用条件全般について団交を申し入れたというべきであり、行政財産の目的外使用許可の際の条件付与そのもののみを対象にしたとみることはできず、市は組合事務所の使用料に係る問題が団体的労使関係に影響を及ぼす範囲において、組合らとの団交に応じるべき義務を有しているというべきである。
 以上のとおりであるから、市は正当な理由なく団交申入れに応じなかったというべきであって、かかる行為は労組法7条2号に該当する不当労働行為である。
5 5月10日付け及び同月29日付けの団交申入れに対する対応について
 25年5月10日の団交申入れに関し、①同日、組合と市が組合の平成25年夏季要求書についての団交を同月13日以降4回にわたり行うことに合意したこと、②同月16日の団交で市が、同要求書について応えることができないので、団交を打ち切る旨記載された文書を組合に提出したこと、③同月21日、市が同要求書について最終回答を提示する旨記載した回答書を組合に交付したことなどが認められる。市は同要求書に対し、最終回答を一定の理由とともに通知したのみで、団交でその内容について説明を尽くそうとしたとは解せない。したがって、市は説明を尽くさないまま、当初予定されていた団交を途中で打ち切り、もって組合を軽視し、支配介入を行ったと判断され、かかる行為は労組法7条2号及び3号に該当する不当労働行為である。
 次に、25年5月29日付け団交申入れは、平成25年夏季要求書及び同月10日に市が組合に提出した団交申入書(平成23年人事院勧告の実施等について協議を申し入れたもの。以下「市文書」)についてなされたものとみるのが相当である。これに対して市は6月3日付け回答書で、平成25年夏季要求書については既に最終回答を示しており、また、市文書については5月27日付け回答書・通知書に市の考えを示しているとして、5月29日付け団交申入れを受けない旨通知した。
 しかし、同団交申入れのうち平成25年夏季要求書に係る部分については、上記のとおり、市は説明を尽くさないまま団交を打ち切ったのであるから、組合が再度、団交を申し入れた場合には応じるべきであることが明らかである。したがって、市は正当な理由なく応じなかったと判断される。
 また、市文書に係る部分については、上記回答書・通知書の記載によれば、市は5月21日の団交における組合の対応を理由に市文書を議題とする団交に応じなかったと解される。しかし、同団交で市文書に係る協議が実質的に行われなかったことについては、市側にも問題があったというべきである。したがって、同団交で十分な協議が行われなかったことをもって5月29日付け団交申入れに応じなかったことの正当な理由ということはできない。
 以上のとおりであるから、市は団交申入れに正当な理由なく応じず、もって組合を軽視し、支配介入を行ったと判断され、かかる行為は労組法7条2号及び3号に該当する不当労働行為である。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委平成27年(不再)第4・6・26・27号 棄却 平成28年11月16日
 
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