労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委平成27年(不)第7号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  株式会社Y(「会社」) 
命令年月日  平成28年7月1日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   平成26年12月3日、会社は、41名の従業員に対し、同日付けの配転命令で同月8日着任の配転(以下「26.12.3配転という。」)を命じた。会社は、当該配転の一環として、A2に対してD店のグロッサリー部門(一般食品(生鮮、青果、海産、精肉、惣菜、ベーカリー以外の食料品)、家庭用品、日用雑貨)のマネージャーからE店の海産部門の主任への配転命令を命じた(以下、A2のE店の海産部門主任への配転命令を「本件配転命令」という。)。
 本件は、本件配転命令が組合員であるが故の不利益取扱いに当たるとともに、組合に対する支配介入に当たるとして申立てがあった事件で、大阪府労委は、会社に対して文書の手交を命じた。  
命令主文   被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに交付しなければならない。
年 月 日
X組合
執行委員長A1様
株式会社Y     
代表取締役 B
 当社が平成26年12月3日付けで貴組合員A2氏を配置転換したことは、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。  
判断の要旨  1 マネージャーは主任と同じ3等級ではあるものの、主任のうち部門の責任者であることが認められ、本件配転命令によりA2の職務等級に変更があったとの疎明はないものの、マネージャーから主任への変更は、実質的には降格ということができる。
 A2は入社以来12年8か月間、グロッサリー部門の業務のみに従事していたことが認められ、未経験の分野での就労に伴う就労環境や勤務評価への影響、また、アトピー性皮膚炎に係る健康面への影響が全くないとまではいえない。
2 会社が本件配転命令を行った理由についてみる。
① 26.12.3配転において41名の従業員が配転となっていること、当該配転においてA2の異動に関係する者(後任者等)で、新店であるF店に異動した者はいないこと、本件配転命令先であるE店の海産部門では、A2の前任者はおらず、1名増員であったことが認められ、本件配転命令と新店開店が直接関連しているとは認めがたい。
 また、生鮮センターの鮮魚部門を増強するとの会社方針との直接の関連性については疎明がない。
 以上のことからすると、本件配転命令が新店への対応と生鮮センターの増強という会社方針の一環であるという会社主張は不自然との疑念を払えない。
② 会社は、組合との26.12.5団交において、たまたまジョブローテーションに入った旨述べるのみで、具体的な人事方針や運用方針について言及しておらず、会社が主張するジョブローテーションの運用実態は不明瞭で、恣意的に運用された可能性が極めて大きいといわざるを得ず、ジョブローテーションの一環であるとの会社の主張は採用できない。
③ 会社は、A2の評価は低いとしながらも、同一部門に12年8か月間にわたり配置しており、この時期に全く経験のない部門へ異動させる必要があったのかは疑わしい。
 また、26.12.3配転において、会社がA2以外に、評価の低い従業員をその評価を高めるために異なる部門に異動させたとの事実の疎明もなく、A2の評価を高めるためであるとの会社の主張には理由がない。
④ 以上のことからすると、本件配転命令は、会社の恣意が入る余地が大きい中で、具体的な業務上の必要性が明確ではなく、人選の相当性など合理的な理由も認められない。
3 本件配転当時の労使関係とA2の組合活動についてみる。
 本件配転当時、組合と会社との間には激しい対立関係があり、A2は積極的に活動しており、さらに、会社は、本件配転命令の撤回を求めて組合が行った、あっせんの申請にも応じていない。また、A2の本件配転命令前の部署であるD店には執行委員長が在籍し、組合活動を行っていた。
 これらのことからすれば、会社は、活発な組織活動が行われていた本件配転命令当時、組合及びA2を好ましからざる存在と認識していたと推忍できる。
4 以上を総合的に判断すると、本件配転命令は、労使対立が激しい中で、人事権を恣意的に行使することにより、積極的に組合活動を行っていたA2に対し不利益取扱いを行ったものといえ、また、これにより、組合員の組合活動を萎縮させ、組合の弱体化を図ったものであって、労働組合法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為である。  
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪地裁平成27年(行ウ)第198号 棄却 平成29年6月12日
大阪高裁平成29年(行コ)第145号 棄却 平成29年12月20日
 
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