概要情報
事件番号・通称事件名 |
大阪高裁平成29年(行コ)第145号
サンプラザ不当労働行為救済命令取消請求事件 |
控訴人 |
株式会社X(「会社」) |
被控訴人 |
大阪府(処分行政庁・大阪府労働委員会) |
被控訴人補助参加人 |
C1労働組合
Z1労働組合(「組合」) |
判決年月日 |
平成29年12月20日 |
判決区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
平成26年12月3日、会社は、41名の従業員に対し、同日付けの配転命令で同月8日着任の配置転換を命じた。会社は、当該配転の一環として、A1に対して喜志店のグロッサリー部門(一般食品(生鮮、青果、海産、精肉、惣菜、ベーカリー以外の食料品)、家庭用品、日用雑貨)のマネージャーから河内長野店の海産部門の主任への配置転換(以下「配転」という。)を命じた。
本件は、本件配転が組合員であるが故の不利益取扱いに当たるとともに、組合に対する支配介入に当たるとして申立てがあった事件で、大阪府労委は、会社に対して文書の手交を命じた。
これを不服として、会社は、大阪地裁に行政訴訟を提起したが、同地裁は、会社の請求を棄却した。
これを不服として、会社は、大阪高裁に控訴したが、同高裁は、これを棄却した。 |
判決主文 |
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。 |
判決の要旨 |
1 当裁判所は、原判決と同様に、会社の請求は理由がないものと判断する。その理由は、原判決を補正し、後記2のとおり会社の当審における補充主張に対する判断を付加するほかは、原判決「事実及び理由」第3の1及び2のとおりであるから、これを引用する。
2(1)本件配転が組合員であるA1に対する不利益取扱いに当たらないことについて
会社は、本件配転は、将来の店長候補は複数部門を経験すべきとの人事異動方針の下に行われたものであり、海産部門での包丁技術の習得はパート従業員でもこなせるものであり、また、そもそも、年末年始の繁忙期に包丁技術の習得をすることを求めてはいないと主張し、さらにA1が本件配転を拒否したことは、A1が罹患していたアトピー性皮膚炎とは無関係であると主張する。
しかしながら、原判決「事実及び理由」中の第3の2(1)イに記載のとおり、①12年8か月間にわたってグロッサリー部門のみを担当していたA1からすれば、未経験の海産部門における業務に対応するためには相当な期間を費やして業務に必要な技術(例えば、包丁で魚類をさばくこと等)を習得する必要があること、②A1が新たな技術等を習得するに当たっては、他の従業員に質問等する必要があると考えられるところ、本件配転が年末という繁忙な時期であったことから、同質問等も容易にできない状況にあったとうかがわれること、③A1は、本件配転による異動後、正社員として海産部門におけるパート従業員を指導しなければならないところ、海産部門における業務経験がないA1にとって、経験者であるパート従業員を指導しなければならないことは、上記②の点も併せ鑑みると、それ自体、相当な精神的負担を伴うものといえること、④海産部門における業務に従事することによって、A1のアトピー性皮膚炎が悪化する可能性も否定できないこと、以上の諸事情を総合的に勘案すると、本件配転は、A1に対する不利益取扱いに該当すると認めるのが相当であり、会社の主張は採用できない。
(2)本件配転は、業務上の必要性及び合理性があり、組合員であることを理由とする不利益取扱いでもなく、組合の運営に支配介入するものでもないことについて
A1のキャリアアップや会社の業務上の必要性の観点から、A1に海産部門の経験を積ませること自体は、会社の経営判断として不合理であるとまではいえないことを考慮しても、それまでのグロッサリー部門から未経験の海産部門に異動させる必要性は、さほど高いものであったとは認められない。他方、原判決「事実及び理由」第3の2(2)ウで説示のとおり、本件配転は、A1ら10名の組合員から合計2100万円以上もの残業代の請求がなされるなど、組合との対立が深刻化している状況でなされたものである一方で、年未の繁忙な時期に、あえてA1をそれまで長年継続して従事してきたグロッサリー部門からそれまで経験したことがない海産部門に異動させたというものであって、本件配転の必要性は乏しいといわざるを得ないことも併せ鑑みると、会社は、組合との対立関係を嫌悪し、A1が組合員であることを理由として、あえて同人が望まない不利益な本件配転を実施したと認めるのが相当である。そして、本件配転は、これにより、組合員の組合活動を萎縮させ、組合の弱体化を図ったものと認められるから、労組法7条3号の支配介入に当たると認めるのが相当である。
3結論
本件配転は、組合員であるが故の不利益取扱い(労組法7条1号)にに当たるとともに、これによりA1が会社を退職するに至るなど、組合員の組合活動を萎縮させる支配介入(同条3号)にも当たると認められるから、本件配転が不当労働行為に当たるとした処分行政庁の判断に違法な点はない。また、同不当労働行為を是正するための救済方法として、文書の手交を会社に命じた本件命令に処分行政庁の裁量権を逸脱、濫用した違法があると認められない。
よって、会社の請求は理由がないから、これを棄却する。 |
その他 |
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