労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  中労委平成26年(不再)第58・59号
大磯恒道会不当労働行為再審査事件 
再審査申立人  社会福祉法人Y(「法人」) 
再審査被申立人  X1(「ユニオン」) 
再審査被申立人  X2(「組合」) 
命令年月日  平成28年4月6日 
命令区分  一部変更 
重要度   
事件概要  1 本件は、法人が、① 法人のセンター長であるA1及び法人の施設長であるA2を出勤停止の懲戒処分としたこと(本件懲戒処分)、② ユニオンに加入したA1及びA2に対し、同人らの役職を解任するとともに自宅待機を命じたこと(「本件解任等」)、③ A1及びA2に対し、法人本部の分室での勤務を命じたこと(「本件分室勤務」)、④ A1の賃金から役職手当相当額を減額したこと(「本件賃金減額」)、⑤ 組合が申し入れた団体交渉に応じなかったこと、⑥ 組合らとの団体交渉(「10.25団交」)に関して不誠実な対応を行ったこと、⑦「労働協約書」への押印に応じなかったことが不当労働行為に当たるとして救済申立てがあった事件である。
2 初審神奈川県労委は、上記②ないし⑦は不当労働行為に当たると判断し、法人に対し、A1及びA2の原職復帰、A1に対する役職手当相当額(年率5分加算)のバックペイ、誠実団交応諾、文書手交を命じたところ、法人は、これを不服として再審査を申し立てた。 
命令主文の要旨  1 初審命令を次のとおり変更する。
 (1) A1に対する本件賃金減額がなかったものとしての取扱い及び役職手当相当額(年率5分加算)のバックペイ
 (2) 本件解任等に係る文書掲示
 (3) 本件解任等、本件分室勤務及び本件賃金減額に係る文書手交
 (4) 組合が申し入れた団体交渉に正当な理由なく応じなかったこと及び10.25団交に係る不誠実対応についての文書手交
 (5) その余の本件救済申立てを棄却
2 その余の本件再審査申立てを棄却  
判断の要旨  1 本件解任等は労組法第7条第1号の不当労働行為に当たるか
 本件解任等には合理的な理由は認められず、他方、当時の労使事情において、A1らがユニオンに加入して組合活動を通じて法人に対抗していくことを公然化し、以来、ユニオンとの間で団交の開催をめぐる折衝が繰り返されていることや、法人の職員がA1らを擁護する行動に出る中、A1らが法人上層部に対抗する勢力を拡大させるとの危惧を窺わせる理事長の言動が認められることなどの事情を考慮すると、本件解任等は、ユニオンに加入したA1らの組合活動に危惧を抱き、これを嫌悪した法人が、A1らを職場から排除することを企図して行ったものとみるのが相当である。 そして、本件解任等により、A1らは職業上、精神上の不利益を受けたものというべきであるから、本件解任等は労組法第7条第1号の不当労働行為に当たる。
2 本件分室勤務は労組法第7条第1号の不当労働行為に当たるか
 本件分室勤務には合理的な理由は認められず、他方、当時の労使事情において、A1らの原職復帰を求める書面を各理事に提出するなど同人らに同調して法人上層部に異論を述べる職員が顕在化していることや、A1らとの接触は控えるよう職員に周知した上、分室の出入口に固定カメラを設置するといった法人の行動に加え、本件分室勤務が本件解任等に引き続き行われていることなどを考慮すると、法人は、自宅待機期間が満了したA1らが職場に復帰して組合活動を展開することを嫌悪しA1らを職員から徹底して遠ざけることを企図して、本件分室勤務を命じたものとみるのが相当である。そして、本件分室勤務は、A1らに対し精神上の不利益を与える取扱いであるから、労組法第7条第1号の不当労働行為に当たる。
3 本件賃金減額は労組法第7条第1号の不当労働行為に当たるか
 本件賃金減額には合理的な理由は認められず、他方、当時の労使事情において、本件懲戒処分や本件解任等をめぐる法人とA1らとの対立が、X2の結成を経て法人と職員との間の対立・紛争に発展し、組合活動を通じて法人上層部に対抗する機運が職員間に高まる中で本件賃金減額が通告されているなどの事情を併せ考慮すると、法人は、法人と対立を深める組合らの活動の中心的立場にあるA1に対する嫌悪の情を殊更に募らせ、同人に経済的打撃を与えることを企図して本件賃金減額を行ったものとみるのが相当である。そして、これによりA1が経済的不利益を受けていることは疑いの余地がないから、本件賃金減額は、労組法第7条第1号の不当労働行為に当たる。
4 組合が申し入れた団体交渉に法人が応じなかったこと及び10.25団交に係る法人の対応は労組法第7条第2号の不当労働行為に当たるか
 組合が申し入れた団体交渉の議題はいずれも義務的団交事項に当たり、正当な理由がない限り早期に団体交渉に応じるべきであったところ、組合が申し入れた団体交渉に法人が応じなかったことは、正当な理由はなく団体交渉の開催を引き延ばして応諾を拒否したものと認められ、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たる。
 また、10.25団交の席上、法人が、議題であった労働協約書案の記載内容全てについて回答するには理事会の決定を得る必要がある旨繰り返し述べる対応に終始したこと等は、団体交渉をないがしろにして労使間の合意達成を遅延させるなど不誠実な対応であり、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たる。
5 「労働協約書」への押印に法人が応じなかったことは労組法第7条第2号の不当労働行為に当たるか
 組合らが法人に押印を求めた「労働協約書案」は、その記載内容の大部分は団体交渉で合意したものであるものの、一部に労使合意に達していない内容が記載されており、法人が、当該記載が押印の妨げとなっていることを組合らに示唆していることや、後日、当該記載を削除した書面を組合らから提示され調印しているなどの事情を考慮すると、法人が上記協約書案への押印に応じなかったことには相応の理由があったというべきであり、団体交渉での労使合意内容の労働協約化を拒否したものとまでいうこともできないから、労組法第7条第2号の不当労働行為には当たらない。 
掲載文献    

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
神奈川県労委平成25年(不)第21号 一部救済 平成26年11月20日
神奈川県労委平成25年(不)第27号 全部救済 平成26年11月20日
 
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