労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  中労委平成26年(不再)第24号
日本ロール製造不当労働行為再審査事件 
再審査申立人  X1組合 
再審査申立人  X2地方本部 
再審査申立人  X3支部 
  以上3組合を合わせて「組合」 
再審査被申立人  Y株式会社(「会社」) 
命令年月日  平成28年1月6日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、会社が、組合との間で、平成24年4月から5月にかけて行った ① パイプ事業部の事業縮小に伴う支部組合員の雇用及び労働条件、② 支部副執行委員長(当時)A及び支部組合員Bに対する人事異動、③ 支部組合員Cの退職願撤回に関する団交において、誠実に対応しなかったことが、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たるとして、救済申立てがあった事件である。
2 初審東京都労働委員会は、会社の対応は労組法第7条第2号の不当労働行為に当たらないとして、申立てを棄却したところ、組合が、これを不服として、再審査を申し立てたものである。 
命令主文  本件再審査申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 パイプ事業部の事業縮小に関する団交における会社の対応は、不誠実であったといえるか。
 (1) 平成24年4月から5月にかけて行われたパイプ事業部の事業縮小に関する団交(「本件団交」)において、会社は、パイプ事業部は続ける、雇用は守ると回答するだけでなく、事業計画についての説明会を行うとともに、事業計画についての書面も組合に提出し説明する等、OEM先との交渉中であることを踏まえ、その段階でできる範囲の具体的な説明をしており、加えて、パイプ事業部の経営状況も可能な限り説明していたのであるから、こうした会社の対応は、不誠実なものとはいえない。
 (2) 組合が重要な経営施策の変更について、事前に組合と十分に協議し理解を得た上で実施する旨の労使慣行があったとする根拠に挙げた平成7年の会社回答書は、事前協議・同意協定(案)に関する会社の姿勢を示したものであり、また、会社は、組合の要求した上記内容の事前協議・同意協定の締結に応じていないことからすると、労使慣行があったことの根拠にはならない。本件では、会社は事前に組合の理解を得るべく団交等を通じて、その段階でできる範囲の説明を行っているというべきところ、それ以上の説明等を要することを基礎付けるような上記労使慣行の存在は認められず、組合の主張は前提を欠き、採用できないから、不誠実団交であったとは認められない。
 (3) パイプ事業部を続けていく旨の会社の回答は、存続させるための努力をすることを明言したもので、その後の経過をみても、パイプ事業部は縮小しつつもなお存続しており、本件団交の時点において、事業計画の最終的な決定がなく、会社は、同事業部の実質的な閉鎖の可能性について説明できる状況にはなかったことから、会社が同事業部の実質的閉鎖の検討を不当に隠していたとはいえない。
 (4) 本件団交の時点では、会社はOEM先との交渉中であり、それが確定しないとパイプ事業部の具体的な事業計画が立てられる状況になく、組合員の労働条件や処遇への影響も不確定で説明できる状況になかったと認められることから、組合が主張するようなパイプ事業部の存続と赤字脱却のための将来展望まで、団交において説明することを求められているとはいえない。
 本件団交における会社の対応は、パイプ事業部の存続を確認した15年確認書が作成された経営環境とは大きく異なる状況下でなされたものであり、同確認書が存在するからといって、当該対応が不誠実なものであったとすることはできず、同確認書の内容は、当時の経営環境の下で確認がなされて作成されたものであり、本件団交において、会社は、できる範囲で具体的な説明をしているのであるから、不誠実な対応を行っていたとはいえず、組合の主張は採用できない。
 (5) 以上に述べたとおり、本件団交における会社の対応は、労組法第7条第2号の誠実交渉義務に違反するものとはいえない。
2 A及びBの平成24年5月21日付け人事異動に関する団交における会社の対応は、不誠実であったといえるか。
 組合員の人事異動について、会社が事前に支部と本人の同意を得て行うという労使慣行があったとは認められない。会社は、A及びBの平成24年5月21日付け人事異動(「5.21人事異動」)の前に説明会を開催し、団交にも応じて、これらの場において、5.21人事異動の理由等を説明するとともに、組合の要求に応じ、両名に対する人事異動の理由等も記載された書面を配付し、組合の理解が得られるよう努めており、また、5.21人事異動に関する団交の経過を踏まえると、両名の異動した後の人員補充等についても、必要な内容を説明しており、5.21人事異動に関する団交における会社の対応は、不誠実であったとはいえない。
3 Cの退職願撤回に関する団交における会社の対応は、不誠実であったといえるか。
 Cが退職願を提出した段階でCが再就職先が決まった旨述べたことから、Cの退職の申出に対し会社が同意して、両者の間に合意が成立したと会社が考えたことには相当の理由があり、Cの退職願の撤回が、両者間の合意が成立してから2週間以上経過した後になされ、その間に、後任者に対して異動の内示を行う等の退職手続が進んでいた状況の下で、会社が、これまでも退職願の撤回はあったが認めていないこと等から、退職願の撤回は認められないとしたことは、会社の人事政策上相当な対応であったと認められる。そして、会社は、退職願撤回に関する団交において、撤回に応じられない理由として上記の事情を説明しており、さらに、組合の再検討の要求に応じて、社長とも相談の上、改めて会社の考えを説明している団交の経過を踏まえると、Cの退職願撤回に関する団交における会社の対応は、不誠実であったとまではいえない。  
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京都労委平成24年(不)第37号 棄却 平成26年3月4日
東京地裁平成28年(行ウ)第343号 棄却 平成30年5月30日
 
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