事件番号・通称事件名 |
東京地裁平成28年(行ウ)第343号
日本ロール製造不当労働行為救済申立棄却命令取消請求事件 |
原告 |
X1 |
原告 |
X1東京地方本部 |
原告 |
X1東京地方本部X2支部(以上3組合をあわせて「組
合」) |
被告 |
国(処分行政庁・中央労働委員会) |
参加人 |
Z1株式会社(「会社」) |
判決年月日 |
平成30年5月30日 |
判決区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
1 本件は、会社が、組合との間で、平成24年4月から5月にかけ
て行った①パイプ事業部の事業縮小に伴う支部組合員の雇用及び労働条件、②支部副執行委員長(当時)A1及び支部組合員A2
に対する人事異動、③支部組合員A3の退職願撤回に関する団交において、誠実に対応しなかったことが、労組法第7条第2号の
不当労働行為に当たるとして、救済申立てがあった事件である。
2 初審東京都労委は、会社の対応は労組法第7条第2号の不当労働行為に当たらないとして、申立てを棄却し、これを不服とし
た組合は再審査を申し立てたが、中労委は初審命令を維持し、組合の再審査申立てを棄却した。
3 組合はこれを不服として東京地裁に行政訴訟を提起したところ、同地裁は組合の請求を棄却した。 |
判決主文 |
1 原告らの請求を棄却する。
2 訴訟費用(参加によって生じた費用を含む。)は原告らの負担とする。 |
判決の要旨 |
一 争点1(本件団交に係る会社の対応が不当労働行為[労組法第7
条第2号]であるか否か)について
組合が平成24年4月から5月に行われた本件団交の各段階で交渉の俎上に乗せた各事項はおよそ労働者の労働条件等に関する事
項ではないということはできないが、刻々と変化する本件団交の目的、経緯、具体的様相、経営環境等に照らしてみると、会社は
その時々において可能な限度で本件団交に対応しているということができ、かかる一連の会社の対応が、不誠実であるとみること
はできず、正当な理由なき団体交渉拒否であるということはできない。
よって、本件団交における会社の一連の対応は、団体交渉することを正当な理由なく拒んだものとはいえず、不当労働行為に該当
しない。
二 争点2(本件異動に係る会社の対応が不当労働行為[労組法第7条第2号]であるか否か)について
会社が組合員の配転を実施する際に、組合との間で事前に協議し、組合及び組合員本人の同意を得る旨の労使慣行が存在すると認
めることはできない。
会社は、平成24年5月11日の説明会において、組合に対し、本件異動について、発令日、対象者の選定理由及びパイプ事業部
の運営上の支障に対する手当を、同月17日の団体交渉において、組合に対し、本件異動の理由や内訳をそれぞれ説明している。
また、事業計画についても、上記団交において一定の回答をした。そうすると、会社が同日以降に組合からの上記事項についての
説明要求に応じなかったとしても、一連の対応が不誠実交渉であるとみることはできず、正当な理由なき団体交渉拒否であるとい
うことはできない。
したがって、本件異動に係る会社の一連の対応は、団体交渉することを正当な理由なく拒んだものとはいえず、不当労働行為に該
当しない。
三 争点3(本件退職願の撤回に係る会社の対応が不当労働行為[労組法第7条第2号]であるか否か)について
会社においては、各事業本部長がその事業部に所属する従業員から退職願を受理して承認すると、その時点で退職合意が成立す
るところ、A3が所属する事業本部の本部長は、平成24年5月1日、A3に対し退職理由を尋ね、その動機が転職にあって退職
の意思に問題がないことを確認した上で、本件退職願を受理したのであるから、同日、会社とA3との間に退職合意が成立したと
認められる。そして、本件退職願の提出後、同月17日になってA3及び組合から同退職願を撤回する旨の申出がされたが、退職
合意が成立しているから意思表示を撤回することはできないし、退職手続が積み重ねられている状況を考慮するとその撤回を認め
ないことが不相当であるともいえない。
このような状況において、会社は、同月25日の団体交渉において、組合に対し、本件退職願の提出時に退職合意が成立してい
ること、それを前提として本件退職手続を進めていること、本件退職願の撤回は認められないことを説明したことに加え、同団体
交渉に先立つ同月18日、23日及び24日にも同様の説明を既にしていることも併せて考慮すれば、上記会社の一連の対応が不
誠実交渉であるとみることはできない。
したがって、本件退職願の撤回に係る会社の対応は、団体交渉することを正当な理由なく拒んだものとはいえず、不当労働行為
に該当しない。 |
その他 |
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