概要情報
事件名 |
大阪府労委平成23年(不)第57号 |
事件番号 |
大阪府労委平成23年(不)第57号 |
申立人 |
X労働組合 |
被申立人 |
株式会社Y |
命令年月日 |
平成25年4月26日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
申立外財団法人Zで放射線技師として勤務していた申立人組合の分会長X2は、平成12年3月20日、Zの健康診断事業の廃止に伴い解雇された。組合は、23年6月、被申立人会社YがZに重要な影響を与える地位にあったことが判明したとして、Yに対し、X2の解雇等を議題とする団交を申し入れた。本件は、YがX2との間に労使関係はないとの理由でこの団交申入れに応じないことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
大阪府労委は、申立てを棄却した。 |
命令主文 |
本件申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
申立人組合は、被申立人会社Yは組合の分会長X2との間に直接の雇用関係がなくても、申立外財団法人Zを実質的に「支配」しており、組合つぶしを行ったものであるから、労組法上の使用者に当たる旨主張し、その根拠として、①理事等による人的支配、②貸付金、覚書等による経済的支配、③申立外医療法人Aを通じての事業上の支配、④Zの職員、理事等を一時務めていたZ2を通じての運営上の支配等を挙げる。
しかし、人的関係については、平成11年4月1日から12年3月31日までの間にZの理事にYの関係者は見当たらないこと等の事実からみて、11年夏以降、12年3月の本件解雇前後も含め、Yが理事及び評議員の多数を確保することで実質的にZを支配していたという組合の主張は採用できない。
財政面での関係については、Yは11年8月にZに対し、子会社を通じて3,000万円の短期貸付を行ったことが認められるが、YはZをあくまでも独立した一法人として扱い、返済もさせたのであるから、これをもってYがZを支配していた証左とみることはできない。
Aとの関係については、Aは12年3月、Yの融資を受けて、Zからレントゲン車等を買い取ったこと等が認められる。これらの事実からすると、Zが検診事業の廃止を決める一方で、当初、ZとAとの間で、Zの取引先、顧客や検診事業に関する情報をAが全て承継することが企図されていたことがうかがわれ、そこにYも関与していたとみることもできる。しかし、従来からZ及びAの双方と関係のあったYがAへの資金提供を行ったとしても、経済的損失のリスクを回避する手段として特に不自然なことともいえず、これらの事実をもってしても、YがZの従業員の解雇について支配力をもっていたとみることはできない。
Z2との関係について、組合は同人がYの顧問であり、Yは同人を介してAの買収を行うなど、Aが主導的役割を果たしてZから組合排除を行わせた旨主張する。しかし、Z2はもともとYとは何の関係もなかったところ、同人の行動が必ずしもYの意を受けてなされたものとはいえない。
組合は、以上のほか、Yの社長Y1や取締役Y3の発言等を根拠として、YによるZへの介入行為があった旨主張する。しかし、Y1の発言をみると、YはZを立て直す方針であったものの、組合との関係でこれを断念して撤退したとみることができ、この発言をもってYがZを支配下に置いていたとはいえない。また、Y3の発言をみると、Yが本格的にZの経営に介入する前に、組合との問題が整理されないまま、撤退せざるを得なかった旨述べている。
これらのことからすると、YはZの検診事業のAへの委譲に関与はしていたとみることができるものの、組合排除のためにZに積極的に介入し、Zを支配していたとまでみることはできない。
以上のことから、Yは、Zと密接な関係にあり、一定の影響力を行使していたとみることはできるものの、いずれの対応も、短期資金貸付等契約関係の一方当事者としての活動の範囲内に留まるものといえ、YがX2の解雇についてYと実質的に同一性を有するほどにZを支配していたとまでみることはできず、Yが同人の労組法上の使用者に当たるという組合の主張は採用できない。 |
掲載文献 |
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