概要情報
事件名 |
大阪府労委平成22年(不)第17号 |
事件番号 |
大阪府労委平成22年(不)第17号 |
申立人 |
X労働組合 |
被申立人 |
株式会社Y1、株式会社Y2 |
命令年月日 |
平成23年9月16日 |
命令区分 |
却下、棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
被申立人会社Y1が①その従業員である組合員Hに対し、組合加入の事実を確認したこと、②誠実に団体交渉に応じなかったこと、③Hに対し、他のパート従業員と比較して均等に勤務を割り当てなかったこと、④Hに対し、雇止めをしたこと、及びY1の親会社である被申立人会社Y2が団体交渉の申入れに応じなかったことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
大阪府労委は、Y2に対する申立てを却下し、Y1に対する申立てを棄却した。
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命令主文 |
被申立人株式会社Y2に対する申立てを却下する。
被申立人株式会社Y1に対する申立てをいずれも棄却する。
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判断の要旨 |
1 被申立人会社Y2の労組法上の使用者への該当の有無について
Y2は、被申立人会社Y1と密接な関係にあり、同社の経営について一定の影響を及ぼし得る地位にあったといえるものの、Y1は自らHの賃金、労働時間等を決定していたとみることができるから、Y2は同人の基本的な労働条件等について雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあったとまではいえないのであって、同人の労組法上の使用者に当たる旨の申立人組合の主張は採用できない。よって、Y2に係る申立ては、その余について判断するまでもなく、これを却下する。
2 Y1の工場長がHに対し、組合加入の事実を確認したことについて
Y1の工場長がHに対し、「組合に加入したのは間違いないか」と述べたことは認められるが、そのほかに組合加入及び分会結成への非難や組合批判、脱退慫慂などの趣旨の発言が行われたという主張も疎明もない。よって、上記発言は組合加入の事実を本人に確認しただけのものにすぎず、それ以上に組合に対する支配介入に該当するとまでいうことはできない。
3 団交におけるY1の対応について
平成21年4月3日、同20日及び6月30日開催の団交において、Y1は組合の団交申入書及び要求書に記載された要求事項、会社都合による休業の補償にかかる賃金の支払い並びに4月3日の団交で確認された事項としての協定書(案)への調印について、組合の要求に応じることができない旨説明するとともに、組合の要求事項に回答したことが認められるから、組合とY1との間で実質的な交渉が行われていたとみることができる。組合は団交に出席したY1のN取締役に決定権があったか否かも定かではないなどと、Y1の対応が不誠実団交に当たる旨主張するが、前記判断のとおり、これらの団交において実質的な交渉が行われていたとみることができるから、Nはこれらの団交について交渉する権限を有していたといえる。また、上記協定書(案)に関しては、団交開催が遅れたことと組合員に対し不当労働行為を行ったことについて謝罪すること、及び会社都合による休業補償についてY1が改めて組合と協議することについて、組合とY1との間で合意が成立していたとまでみることはできない。そうすると、Y1が同協定書(案)の内容には同意しないとして調印をしなかったことは、不誠実団交に当たるとまでは認められない。
以上のとおりであるから、上記の団交におけるY1の対応は不誠実団交に当たるとまではいうことができない。
4 Hに対する勤務の割当てについて
Hの勤務していた工場においては同人の組合加入の通知の前からパート従業員の勤務の割当ての均等化は行われていなかったとみることができるから、Y1によるHに対する勤務の割当てに関し、他のパート従業員と比較して勤務日数に差異が生じたことについては、同人が組合員であること又は組合に加入したことの故に行われた不利益取扱いに当たるとはいうことができない。
5 Hの雇止めについて
Y1がHを雇止めにした理由は、同人との雇用契約は当然に更新を予定したものではなく、同人が組合とともにY1に対し業務妨害を行っていることによるとされている。Hが雇用契約の更新に対する合理的な期待権を有していたとみる余地がないとはいえないが、当該雇用契約が就業規則で定められた懲戒の理由となる行為の有無等と何らの関係もなく当然に更新を予定していたものであるとまで認めることはできない。また、Y1が雇止めの理由としている組合及びHの行為は、正当な組合活動の範囲を逸脱したものといわざるを得ない。
そうすると、Y1が、Hが組合とともに業務妨害を行っているとして同人を雇止めにしたことは、労組法7条1号に該当する不当労働行為であると認めることはできない。
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掲載文献 |
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