労働委員会関係裁判例データベース

(この事件の全文情報は、このページの最後でご覧いただけます。)

[判例一覧に戻る]  [顛末情報]
概要情報
事件名  トクヤマエムテック・トクヤマ 
事件番号  東京地裁平成26年(行ウ)81号 
原告  日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部(「組合」) 
被告  国(処分行政庁・中央労働委員会) 
被告補助参加人  株式会社トクヤマ(「親会社」 
被告補助参加人  株式会社トクヤマエムテック(「会社」) 
判決年月日  平成27年2月27日 
判決区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 親会社が、会社の組合員A1(会社のパートタイム従業員)に対する不当労働行為の謝罪等に関して指導するよう組合が申し入れた団交に応じなかったこと、会社が、①A1に組合加入の事実を確認等したこと、②誠実に団交に応じなかったこと、③A1に対する勤務割当てを不均等に行ったこと、④A1を雇止めしたことが不当労働行為に当たるとして争われた事件である。
2 初審大阪府労委は、親会社に対する申立てを、労組法上の使用者に当たらないとして却下し、会社に対する申立てを、いずれも不当労働行為に当たらないとして棄却した。組合は、これを不服として中労委に再審査を申し立てたところ、中労委は申立てを棄却した。
3 組合は、これを不服として東京組合は、これを不服として地裁に行政訴訟を提起したところ、同地裁は、組合の請求を棄却した。 
判決主文  1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は、補助参加によって生じた費用も含めて原告の負担とする。 
判決の要旨  1 争点①(本案前の主張)について
 別件訴訟の判決が確定して、本件雇止めが有効にされ、A1が会社との間の雇用契約上の権利を有する地位を喪失したとしても、なお、本件に係る争点③ないし⑤について不当労働行為であるか否かを判断し、A1の過去の地位に関する救済命令の要否を判断する必要性は残るというべきであり、使用者による救済命令上の義務の履行が客観的に不可能であり、あるいはその履行が救済の手段方法としての意味をおよそ有しないとはいえない。本件命令の取消しを求める訴えの利益がないとする補助参加人らの主張は採用することができない。
2 争点②(親会社に使用者性があるか)について
 会社は就業規則及び本件規則を策定していたこと、パートタイム従業員については、B1工場長が採用の際の面接を実施し、採否のほか、労働時間及び賃金を決定しており、親会社に対し、意向の確認や報告はされていなかったことからすれば、組合らの関係について、会社が親会社の100%子会社であること以上に、親会社が会社に対し、A1を含む労働者の基本的な労働条件等について、雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的な支配力を有していたとは認められない。
3 争点③(会社による支配介入が存したか)について
 B1工場長がA1に対し実施した本件面談は、一般論としてみると、労働者の組合加入が公然化し、労使間の紛争が生じた段階において、使用者の利益代表である者が当該労働者に個別的に接触し、その要求事項の確認という労使関係上の具体的問題についての発言をするものであって、その不適切さは否めないものの、それを超えて支配介入行為になるものとまではいえない。
4 争点④(会社による不誠実団体交渉が存したか)について
(1)  本件B2発言について
 B2取締役は、2つの問題について、平成20年末頃の段階から社内で検討していたという発言をしたが、実際には、それは会社の休業手当問題の検討開始時期に関するものであったことが認められる。しかしながら、同発言の内容が、原告に対し、虚偽の情報を提供することによって、回答内容の意味合いについて誤信を抱かせることとなり、会社の対処を見据えて交渉を進めることが不可能となってしまうとする原告の主張は俄に理解しがたい。会社は、B2が説明したとおりに本件支払をしているのであって、本件B2発言に係る交渉事項に関する限り、交渉を具体的ないし現実的に阻害したとは認められず、不当労働行為があったとすることはできない。
(2) 決定権限ある者の不出席について
 団体交渉において、使用者側の交渉担当者として指名された者は交渉事項について、当然に労働協約を締結する権限までをも有するものではない。B2取締役は、総務部門の長として団体交渉権限を与えられており、協約締結権限のない事項であっても、交渉権限そのものは有していたことが認められる。B2取締役を交渉担当者としたことは不誠実団体交渉に当たらない。
(3) 協定締結拒否について
 本件協定案の第2項は、原告と会社との間に対立が生じていたのであり、また、第3項については、合意が全く成立していなかったことが明らかであり、会社において、不当に本件協定案の労働協約化を拒否したものとは認められない。本件協定案による協約締結を拒否したことについて、会社による不当労働行為があったとすることはできない。
(4) 本件支払について
 団体交渉の経緯に照らし、 A1への賃金の60%額の休業手当支払をもって、組合が反対している事項について、使用者が一方的に実施することに当たるとする原告主張の前提となる事実を認めることはできず、不当労働行為があったとすることはできない。
(5) 形式的な文書回答への終始について
 団体交渉が決裂し、以降、会社から原告に対する歩み寄りがなかったことをもって、会社の対応について、誠実交渉義務の違反があるとすることはできない。
5 争点⑤(A1に対する勤務割当が不利益取扱いに当たるか)について
 作業現場の同じCが退職するまでの4、5月度の勤務日数の割当を比較すると、A1の方が多く、また、作業現場毎にそもそも作業日数が異なる体制にあって、完全に平等な勤務日数の割当は困難であること、原告が団体交渉の議題に本件勤務割当をA1に対する不利益な取扱いとして取り上げた時期が本件雇止め後であったことを併せ考えると、本件勤務割当をもって、当該職場における従業員の一般的認識のうえで組合活動を萎縮させ、組合活動一般に対して制約的効果が及ぶ原因となる経済的待遇等における不利な差別的取扱いであると認めるに足りないというべきである。会社による労組法7条1号の不利益な取扱いがあったとすることはできない。
6 争点⑥(本件屋止めが不利益取扱いに当たるか)について
 原告の活動は、補助参加人らの業務を妨害し、使用者の自由な意思の抑圧及び財産に対する支配を阻止する行為であることは明らかであり、同時に、原告において、補助参加人らの業務を妨害し、補助参加人らの使用者としての自由な意思の抑圧及び財産に対する支配を阻止することで、自己の要求を受け入れさせようとする目的の下に行った行為であると推認することができる。そうすると、原告の組合活動と称する活動については、正当性は認められないというべきである。また、A1は、原告の一連の抗議行動や出荷妨害等に関し、主体的に参加していたものと推認することができる。会社がA1に対する本件雇止めの理由とした原告及びA1の行為は、正当な労働組合の行為には当たらないものと認められるのであり、本件就業規則の規定に該当し、懲戒解雇を相当とする重大なものといわざるを得ないから、A1の雇止めを相当とする事由であるともいうべきである。また、原告及びA1の行為により、会社は980万1076円の損害を被ったことが認められるのであり、本件規則に該当し、これもまた、懲戒解雇を相当とする重大なものといわざるを得ないから、A1の雇止めを相当とする事由であるともいうべきである。本件雇止めは、労働組合の正当な行為の故の不利益取扱いとはいえず、労組法7条1号の不当労働行為があったとすることはできない。 
その他   

[先頭に戻る]

顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委平成22年(不)第17号 棄却 平成23年9月16日
中労委平成23年(不再)第66号 棄却 平成25年7月17日
 
[全文情報] この事件の全文情報は約201KByteあります。 また、PDF形式になっていますので、ご覧になるにはAdobe Reader(無料)のダウンロードが必要です。