労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  旭包装 
事件番号  岡委平成22年(不)第4号 
申立人  自治労全国一般岡山地方労働組合、同旭包装支部 
被申立人  旭包装株式会社 
命令年月日  平成23年8月8日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要    被申立人会社が①申立人組合支部の支部長X2に対し、平成21年冬季賞与を支給しなかったこと、②22年春闘におけるベースアップ及び賞与に関する団体交渉に誠実に応じなかったこと、③役職のない従業員を団体交渉に会社側として出席させたことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 岡山県労委は、会社に対し①X2に係る21年冬季賞与の額を再査定の上、同人に支払うこと、②上記②の団体交渉に誠実に応じること、③文書手交を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人旭包装株式会社は、申立人自治労全国一般岡山地方労働組合旭包装支部の組合員であるX2に対し、同人の平成21年12月現在の月額基本給に基本給比率(被申立人の正社員に支給された平成21年冬季賞与の総額を、X2を除く正社員の平成21年12月現在の月額基本給の総額で除して得られる数値)を乗じて得られる金額を基準として、2割減額の範囲内で再査定を行い、再査定の結果得られた額の金員及び同額に対する平成21年12月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払わなければならない。
2 被申立人旭包装株式会社は、申立人自治労全国一般岡山地方労働組合及び同旭包装支部が申し入れた平成22年ベースアップ及び賞与に係る団体交渉に、会社の経営状況や支払原資の額、査定基準を説明する等、誠実に応じなければならない。
3 被申立人旭包装株式会社は、申立人自治労全国一般岡山地方労働組合及び同旭包装支部に対し、次の文書を速やかに手交しなければならない。
年 月 日

  自治労全国一般岡山地方労働組合
   執行委員長 X1 殿
  自治労全国一般岡山地方労働組合旭包装支部
   支部長 X2 殿

旭包装株式会社
代表取締役 Y1

  当社が、貴組合所属のX2氏に対して平成21年冬季賞与を支給しなかったことは、岡山県労働委員会において労働組合法第7条第1号に該当する不当労働行為であると認定されました。
  また、当社が、貴組合の平成22年ベースアップ及び賞与に係る団体交渉の申し入れに対して誠実に対応しなかったことは、岡山県労働委員会において労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると認定されました。
  今後このような行為を繰り返さないようにいたします。
  (注:年月日は文書を手交した日を記載すること。)
4 申立人らのその余の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 申立人組合の支部長X2に対する賞与の不支給は、組合員であることを理由とした不利益取扱いか。
 被申立人会社における賞与査定については、査定項目、査定基準、査定権者など公正な査定を担保する仕組みが全く用意されていない。そして、X2の本件査定期間中の勤務状況は、賞与不支給に相当するほど劣悪なものであるとはいえず、本件不支給に係る査定は、会社の裁量権を逸脱するものであったと認められる。
 他方、第1回団交における会社側出席者について争いがあったこと、当委員会の第1回あっせんにおいて会社があっせん案に納得せず、あっせんが不調に終わったことなどからすると、支部の結成から本件不支給に至るまでの間において労使対立が顕在化していたものと認められる。
 このほか、後記2の会社の姿勢など諸般の事情を考慮すると、本件不支給はX2の組合活動を嫌悪して行われたものと推認される。
2 組合の団交申入れに対する会社の対応は、不誠実な団体交渉に当たるか。
 会社が①22年ベースアップを巡る労使交渉において、組合から提起された「平均で有額回答」というあいまいな表現が団体交渉の確認事項として書面化されたことを奇貨として、それが労使の妥結事項であるとの見解に固執し、その後の組合からの申入れにおいてベースアップ水準について具体的な金額の提示を求められてもそれに応じなかったこと(そして、一方的にベースアップを実施している。)、②22年賞与を巡る労使交渉において、組合の年間支給基準5か月という要求に対して、支給水準についての対案や各人ごとの支給額の決定方法等について何ら具体的に示さなかったこと(そして、一方的に22年夏季賞与を支給している。)は、使用者に求められる誠実交渉義務に反する。
3 団体交渉に役職のない従業員を会社側として出席させたことは、組合運営への支配介入であるか。
 団体交渉の使用者側交渉担当者については、使用者が自主的に決定することができると考えられるところ、例えば、組合加入を検討している労働者を業務命令により団体交渉に出席させたり、組合員ではない従業員を入れ替わり立ち替わり出席させて反組合的教育に利用するといったような特段の事情がある場合には、組合の運営に対する支配介入であると評価できる。しかし、本件においてはこのような事情は認められないから、支配介入であるとはいえない。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
岡山地裁平成23年(行ウ)第26号 棄却 平成24年8月29日
広島高裁平成24年(行コ)第13号 棄却 平成25年2月21日
 
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