労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  平成タクシー 
事件番号  広労委平成22年(不)第3号 
申立人  スクラムユニオン・ひろしま 
被申立人  有限会社平成タクシー 
命令年月日  平成23年7月12日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   (1) 被申立人会社に申立人組合の分会が結成されてから約1か月後に分会長X2が会社を離職したこと、(2) 会社の社長Y1及び部長Y2が従業員の互助会(親睦会)の会合で組合への加入を規制する発言をしたこと、(3) Y1が組合員X4に対し、組合を否定する発言をしたこと、(4) Y2が組合の委員長X1に対し、ビラ配布を規制する発言をしたこと、(5) 会社が組合員X5を、従業員を組合に勧誘したことを理由に教育指導員から外したこと、(6) Y2が組合の副分会長X3に対し、人身事故の責任を問う発言をしたことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 広島県労委は、会社に対し、(1) 教育指導の業務を命じるに当たっての、組合活動を理由とした差別的取扱いの禁止及び分会への加入を妨害する言動等による組合への支配介入の禁止、(2) 組合への文書の交付・掲示を命じ、その余の申立てを棄却した。  
命令主文  1 被申立人は、教育指導の業務を命じるに当たって、申立人分会の組合員の正当な組合活動を理由として差別する取扱いをしてはならない。また、申立人分会への加入を妨害する言動等により、申立人の組織及び運営に支配介入してはならない。
2 被申立人は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記の文書を申立人に交付するとともに、縦1メートル、横1メートルの大きさの紙に記載し、会社事務所正面玄関の従業員が見えやすい場所に30日間掲示しなければならない。
平成  年  月  日
スクラムユニオン・ひろしま
  委員長 X1 様
有限会社平成タクシー
代表取締役 Y1

 当社の貴組合分会所属の組合員に対する、正当な組合活動を理由として教育指導の業務を命じない不利益取扱いや、他の従業員に対する貴組合分会への加入を妨害する言動等が、広島県労働委員会において、労働組合法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為であると認定されました。
 今後、このような行為を繰り返さないようにします。
 (注: 年月日は文書を交付した日を記載すること。)

3 申立人のその余の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 申立人組合の元分会長X2の離職について
 被申立人会社は組合の分会の結成以前から、組合に対して強い不信感を抱いていたことが認められる。また、X2の離職に際して会社との間で交わされた合意書には解雇であるかのような表現が認められ、加えて会社は特定求職者雇用開発助成金を返還することになることを認識しつつ、解雇扱いとしているなど同人の離職に至る経緯には不自然な点がある。さらに、社長Y1は金銭的な負担を負ってでもX2の離職が必要であると認識していたことを示すような供述をしている。これらに鑑みれば、X2の離職が分会の結成等を理由とする解雇とまでは認定できないが、会社には同人の離職を理由として分会の結成及びその運営に介入し組合活動を萎縮させようとする意思があったものと認められる。
2 従業員の互助会(親睦会)における社長Y1及び部長Y2の発言について
 Y1及びY2の発言が仮に組合が主張する「組合になびくな」という表現ではなかったとしても、会社は組合員と他の従業員との離反を図り、分会への加入を妨害する意図をもった発言をなしたことが推認できる。そして、当該発言が分会の結成と極めて近接した時期におけるものであること等も勘案すると、当該発言は分会の活動及びその影響力が拡大することを妨げようとする意思の下でなされたものと認めることができる。
3 社長Y1の組合員X4に対する発言について
 X4の審問結果に照らすと、「組合をつぶす」などの発言があったと認定できるだけの十分な疎明であるとはいえない。
4 部長Y2の組合委員長X1に対する発言について
 組合のビラ配布について常に会社の許可を求めるかのようなY2の発言には労働組合活動への理解の不足が窺われるものの、同人は就業規則の規定に基づいた行動を要請したものと認められるから、当該発言のみをもって不当労働行為意思があったとまで認めることはできない。
5 会社が組合員X5を教育指導員から外したことについて
 会社がX5に教育指導員を命じなくなったことは、同人の自尊心を傷つけ、社内での評価を下げるものであり、同人に不利益が生じていることが認められる。また、社長はX5が従業員に対し組合加入の勧誘を行ったことを知っていたと推認でき、その近接した時期に教育指導の業務を命じなくなったことが認められる。これらの事情に鑑みれば、会社はX5が分会の中でも活動的な組合員であることを十分に認識し、その活動を阻む意思をもって教育指導の業務を命じないこととしたものと認められる。
 同時に、会社はX5に社内での評価を貶めるという不利益を被らせることにより、分会の活動を萎縮させ、その拡大を阻もうとしたものと認められる。
6 部長Y2の副分会長X3に対する事情聴取について
 組合は、Y2がX3に対し、同人と勤務を交替した別の従業員が起こした事故について事情聴取し、その際、「連帯責任を取って辞めてもらう」と発言したと主張するが、この件を理由とした処分は第2回審問時までに行われておらず、また、Y2の発言に「辞めてもらう」旨の発言があったことを認めるに足りる疎明はない。したがって、当該事情聴取が支配介入に該当する行為であると認定することはできない。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
広島地裁平成23年(行ウ)第33号 棄却 平成24年7月11日
広島高裁平成24年(行コ)第18号 棄却 平成24年12月25日
 
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