労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名  平成タクシー  
事件番号  広島高裁平成24年(行コ)第18号  
控訴人   有限会社平成タクシー  
被控訴人   広島県(処分行政庁:広島県労働委員会)  
被控訴人補助参加人   スクラムユニオン・ひろしま  
判決年月日   平成24年12月25日  
判決区分   棄却  
重要度   
事件概要  1 ①会社に組合の分会が結成されてから約1か月後に分会長X2が会社を離職したこと、②会社の社長Y1及び部長Y2が親和会(従業員の互助会、親睦会)の会合で組合への加入を規制する発言をしたこと、③Y1が組合員X4に対し、組合を否定する発言をしたこと、④Y2が組合委員長X1に対し、ビラ配布を規制する発言をしたこと、⑤会社が組合員X5について、従業員を組合に勧誘したことを理由に教育指導員から外したこと、⑥Y2が組合の副分会長X3に対し、人身事故の責任を問う発言をしたことが、不当労働行為に当たるとして、広島県労委に救済申立てがあった事件である。
2 広島県労委は、会社に対し、①教育指導の業務を命じるに当たっての、組合活動を理由とした差別的取扱いの禁止及び分会への加入を妨害する言動等による組合への支配介入の禁止、②組合への文書の交付・掲示を命じ、その余の申立てを棄却した。
 これに対し、会社は、これを不服として、広島地裁に行政訴訟を提起したが、同地裁は、会社の請求を棄却した。
 本件は、同地裁判決を不服として、会社が広島高裁に控訴した事件であるが、同高裁は、控訴を棄却した。
判決主文  1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用(補助参加によって生じた費用を含む。)は控訴人の負担とする。  
判決の要旨  1 当裁判所も、本件命令は適法である、と判断する。
2 その理由は、次のとおり〔要旨抄録〕改めるほか、原判決の「事実及び理由」中の「第3 当裁判所の判断」に記載のとおりであるから、これを引用する。
(1) 原判決〔第3の2の(2)「本件事件争点1(元分会長X2の退職は、労働組合の正当な行為をしたことを理由とする不利益取扱い及び支配介入に該当するか)についての検討」に係る〕20頁1行目から同2行目の「したがって、原告の上記主張は採用できない。」を削除し、改行の上、次のとおり付加する。
 「会社は、県労委の審査手続において、分会長X2の離職に関して、解雇以外の「不当労働行為を構成する具体的事実」は主張されておらず、本件命令でも、不当労働行為に関する事実を特定した認定がされていないとも主張する。
 しかし、組合は、審査手続において、X2の退職について、退職に至る経緯、事情を主張しており、これに対して、会社も反論している。また、県労委も、命令書において、X2の離職に至る経緯、合意書の記載内容等の具体的事実を認定し、特別退職金や解雇予告手当の支給など会社に不自然な行為があったことを認定した上、諸事情を総合して、会社が組合に対して反組合的意思を持ち、X2の離職を利用して分会の活動を萎縮させようとした旨判断している。すると、組合から、X2の退職に関する「不当労働行為を構成する具体的事実」として退職に至る経緯、事情について主張があり、会社からも反論があり、これに対応して、県労委において、具体的事実を認定した上で、不当労働行為があったとの結論を導いていることが認められ、会社の防御権が侵害されたとは認められない。
 したがって、会社の主張は理由がない。」
(2) 原判決〔第3の2の(3)「本件事件争点2(親和会における、会社代表取締役Y1及び統轄管理部長Y2の発言は、組合に対する支配介入に該当するか)についての検討」に係る全文〕20頁3行目から21頁15行目までを削除する。
(3) 原判決〔第3の2の(4)の〕21頁16行目の「(4)」を「(3)」と改める。
(4) 原判決〔第3の2の(3)(改訂後)「本件事件争点5(会社が分会の組合員であったX5を教育指導員から外したことは、労働組合の正当な行為をしたことを理由とする不利益取扱い及び組合に対する支配介入に該当するか)についての検討」に係る〕23頁3行目末尾に「県労委がX5に対して新人乗務員への教育指導の業務を命じないことを不当労働行為と認定して救済命令を発するのに、予備的申立てが必要であるとは解されない。」を付加する。
(5) 原判決〔第3の4の(2)「Y1及びY2が親和会の会合において『組合になびくな』と同趣旨の発言をしたことが不当労働行為に当たるか」に係る〕26頁16行目末尾に改行の上、次のとおり付加する。
 「会社は、言論による支配介入が問題となる場合には、使用者側の言論の自由にも配慮する必要があり、本件では、互助会である親和会において、長時間の会合中に組合に関する質問が出た際、数分間の話の中で「組合になびくな」と同趣旨の発言があったとしても、支配介入に当たるとはいえない旨主張する。
 しかし、使用者側の言論の自由を考慮しても、上記発言の趣旨、発言者の地位・立場、発言の時期・状況、発言の経緯等の諸事情を総合勘案すれば、上記発言は、分会の組織・運営に干渉し、悪影響を与えるものとして、支配介入に該当すると認めるのが相当である。」
(6) 原判決〔第3の5の(2)「X5に対して新人乗務員への教育指導の業務を命じていないことが、組合に対する支配介入に該当するか」に係る〕28頁17行目末尾に改行の上、次のとおり付加する。
 「(3) 会社は、平成22年8月30日から退職した平成23年1月15日までのX5の出勤日数は少なく、この間の新人乗務員への教育指導業務は1件しかなかったから、X5に対して新人乗務員への教育指導業務を命じなかったことは不当労働行為に当たらない旨主張する。
 しかし、社長Y1は、分会の活動や分会が影響力を拡大させることに対して敵対的な感情や嫌悪感を抱いていたと認められ、この事実に、Y1は、X5が分会への加入を勧誘したことを知っていたこと等の諸事情を総合すれば、Y1は、X5が上記勧誘を行ったことを理由として、新人乗務員への教育指導業務を命じないことにしたと認められる。X5の退職日までの間、教育指導業務が結果として1件しかなかったことは、X5に新人乗務員への教育指導業務を命じなかったことが不当労働行為に該当する旨の認定を妨げるものではない。」
(7) 原判決〔第3の5の(3)の〕21頁16行目の「(3)」を「(4)」と改める。
(8) 原判決〔第3の6「まとめ」の〕28頁25行目の「認め難い」の次に「(会社は、組合の申立書には「請求する救済の内容」が明示されておらず、救済命令における特定も欠如する旨主張する。しかし、労働委員会は、不当労働行為の成立を認めた上で、どのような救済命令を命じるかについては個々の事案に応じた適切な是正措置を決定し命令する裁量権を有している。本件においても、本件命令の主文は、不当労働行為を認定した理由中の判断も斟酌すれば特定を欠いて不明確で労働委員会の有する裁量権の範囲を越えて濫用したものであると認めることはできない。)」を加える。
その他   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
広島県労委平成22年(不)第3号 一部救済 平成23年7月12日
広島地裁平成23年(行ウ)第33号 棄却 平成24年7月11日
 
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