概要情報
事件名 |
東日本旅客鉄道(千葉動労) |
事件番号 |
中労委平成21年(不再)第22号 |
再審査申立人 |
国鉄千葉動力車労働組合(「組合」) |
再審査申立人 |
個人(組合員19名) |
再審査被申立人 |
東日本旅客鉄道株式会社(「会社」) |
命令年月日 |
平成23年4月20日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
組合が、平成18年3月10日から同月18日にかけて、列車の最高速度を10km/h減速し、回復運転を行わないという争議行為(本件争議行為)を行ったのに対し、会社が、(1) 警告を発するなどしたこと、(2) 組合所属の運転士が乗務する列車へ会社の管理者等を添乗(本件添乗)させ、現認・監視などを行ったこと、(3) 組合員らに対し、本件争議行為実施後、事情聴取(本件事情聴取)を行ったこと、(4) 組合員らに対し、戒告、訓告、厳重注意の処分(本件処分)や、これに伴う定期昇給の一部カット、夏季手当の減額を行ったことが不当労働行為に当たるとして、救済申立てのあった事件である。
千葉県労委は、上記のいずれも不当労働行為に当たらないとして組合の救済申立てを棄却したところ、組合と組合員19名は、再審査を申し立てた。 |
命令主文 |
本件再審査申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
1 本件争議行為は正当な争議行為か
組合らは、(1) 本件争議行為は、通常作業と比べて作業の速度を落とす、スローダウン(怠業)の一種であり、これによる物的施設や所有権の侵害はなく、これまで判例で「積極的態様」として理解されてきた行為は存在しない、(2) 会社は就労を受け入れたのであり、怠業における使用者の自由意思は確保されていた、(3) 本件争議行為の影響等について、不測の事態が生じる危険性が高まったことはないと主張するが、いずれも失当である。
すなわち、本件争議行為は、(1) 意図的に会社における列車の定時運行体制に支障を生じさせるものであり、単に不完全な労務提供や労務の一部のみの提供という消極的態様にとどまるものではない。(2) また、本件争議行為への会社の対応に照らすと、会社が組合員らの就労を受け入れたからといって、本件争議行為を容認したとか、これが正当性を有するということにはならない。(3) さらに、本件争議行為は、乗務員等の連携作業を乱すものであり、その結果として、列車事故等を招きかねないという内在的危険性を有するものである。
以上のとおりであるから、本件争議行為は、いわゆる怠業という範ちゅうを超えたものであり、争議行為として正当性の範囲を逸脱するといわざるを得ない。したがって、本件争議行為は労働組合の行為としての正当性を有しないものである。
2 本件争議行為を理由とする本件処分やこれに伴う定期昇給の一部カット等は、組合員らに対する不利益取扱いや組合に対する支配介入に当たるか
ア 本件争議行為は労働組合の行為として正当性を有しない。したがって、本件争議行為を理由とする本件処分やこれに伴う定期昇給の一部カット等は、労働組合の正当な行為をしたことを理由とする不利益取扱いとはいえないから、労働組合法第7条第1号の不当労働行為に該当しない。
イ 本件処分やこれに伴う定期昇給の一部カット等は、その根拠や処分の程度等において相当性が認められ、かつ、本件処分に当たって、会社が組合の弱体化を図ったとする事情もうかがえないから、労働組合法第7条第3号の支配介入に当たるとすることもできない。
3 会社が、(1) 警告を発するなどしたこと、(2) 本件添乗を行ったこと、(3) 本件事情聴取を行ったことが、組合に対する支配介入に当たるか
ア 本件争議行為は正当な争議行為であるとはいえないから、会社が警告すること自体は不当であるとはいえない。また、警告書の内容、掲出方法等をみても、組合の運営に不当に介入するものとはいえない。したがって、会社が警告を発するなどしたことは、労働組合法第7条第3号の支配介入に当たるということはできない。
イ 本件争議行為は正当な争議行為であるとはいえないことからすると、本件添乗の的は、運転状況や違法な争議行為等の事実を把握するためであるとする会社の主張は理解できる。また、添乗の態様や状況をみても、運転士に対してみだりに話しかけたことなどは認められず、運転速度等の確認以上のことは行っていないことから、組合の弱体化を図ったということはできない。したがって、本件添乗は、労働組合法第7条第3号の支配介入に当たるということはできない。
ウ 本件争議行為は正当な争議行為であるとはいえないから、本件争議行為による就業規則違反の有無について、会社がその事実関係を確認して、弁明の機会を与えることは、それ自体何ら不当であるといえない。また、本件事情聴取の内容や状況をみると、組合員に対する報復・威嚇的な言動が行われたというものではない。したがって、本件事情聴取は、労働組合法第7条第3号の支配介入に当たるということはできない。 |
掲載文献 |
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