概要情報
事件名 |
阪急トラベルサポート |
事件番号 |
都労委平成21年(不)第46号 |
申立人 |
全国一般労働組合全国協議会東京東部労働組合、同HTS支部、X1 |
被申立人 |
株式会社阪急トラベルサポート |
命令年月日 |
平成23年1月11日 |
命令区分 |
一部救済 |
重要度 |
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事件概要 |
申立人組合の支部執行委員長である申立人X1は被申立人会社に派遣添乗員として登録し、申立外旅行会社に派遣されて添乗業務に従事していた。平成20年8月、同人は雑誌『週刊金曜日』の記事執筆のための取材に応じ、その記事が21年2月に掲載されたところ、会社は当該記事の内容が事実に反していること及び『週刊金曜日』への訂正申入れ等を同人が拒否したことを理由に3月18日付けで同人をアサイン停止(添乗業務を割り振らない措置)とした。
本件は、会社が(1) X1をアサイン停止としたこと、(2) 組合が申し入れた、『週刊金曜日』代表者が同席する形での団体交渉を拒否したことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
東京都労委は、会社に対し(1) X1について、添乗業務への復帰及びアサイン停止から添乗業務復帰までの間に同人が受けるはずであった金員相当額の支払いを含め、アサイン停止がなかったものとして取り扱うこと、(2) 組合への文書交付、(3) 履行報告を命じ、その余の申立てを棄却した。 |
命令主文 |
1 被申立人株式会社阪急トラベルサポートは、申立人全国一般労働組合全国協議会東京東部労働組合HTS支部執行委員長X1に対し、次の措置を含め、平成21年3月18日付けのアサイン停止がなかったものとして取り扱わなければならない。
(1) X1を添乗業務に復帰させること。
(2) アサイン停止から添乗業務復帰までの間にX1が受けるはずであった金員相当額を同人に支払うこと。
2 被申立人会社は、本命令書受領の日から1週刊以内に、下記内容の文書を申立人全国一般労働組合全国協議会東京東部労働組合及び同全国一般労働組合全国協議会東京東部労働組合HTS支部に交付しなければならない。
記
年 月 日
全国一般労働組合全国協議会東京東部労働組合
執行委員長 A 殿
全国一般労働組合全国協議会東京東部労働組合HTS支部
執行委員長 X1 殿
X1 殿
株式会社阪急トラベルサポート
代表者取締役 B
当社が、平成21年3月18日付けで貴組合HTS支部執行委員長X1氏に対してアサイン停止の措置を行ったことは、東京都労働委員会において不当労働行為であると認定されました。
今後、このような行為を繰り返さないよう留意します。
(注: 年月日は交付した日を記載すること。)
3 被申立人会社は、前各項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。
4 その余の申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
1 申立人X1のアサイン停止について
被申立人会社の東京支店長は、3月18日、X1に対し『週刊金曜日』の記事についての事情聴取を行った後、同誌への抗議等を行うよう迫り、同人が拒否するや否や、あらかじめ準備した抗議文を手渡して直ちにその場でアサイン停止を通告したのであるが、これはあまりにも性急に過ぎ、不自然である。また、同人が事実関係について反論している以上、当該記事の執筆者や同誌に対して何らかの調査を行うのが筋ともいえるところ、会社はそれを全く行っていない。さらに、会社は虚偽の事実を掲載したとか、重大な名誉毀損があったなどといいながら、同誌に対して記事の訂正、撤回を申し入れるなどのことをしていない。むしろ会社は、X1にのみ責任を転嫁して、同誌に直接面会する機会を避け続けていたともいえる。
そして、本件アサイン停止が行われた頃、事業場外みなし労働制の問題等を巡って労使関係の緊張は非常に高まっていたものと推認され、本件アサイン停止の直後、相当数の支部組合員が組合から脱退したことが認められる。
以上を総合勘案すれば、本件アサイン停止の真の狙いは、本件雑誌記事についてX1が取材に応じたことを奇貨として、派遣添乗員の労働問題とりわけ事業場外みなし労働制の撤廃を巡って激しく会社と対立していた組合の支部執行委員長である同人を職場から排除することによって、組合の会社における影響力を弱体化することにあったと判断せざるを得ない。このような会社の行為は、X1の組合活動を理由とする不利益取扱いに該当するとともに、組合の弱体化を意図した支配介入にも該当する不当労働行為である。
2 『週刊金曜日』代表者が同席する団体交渉への会社の対応について
組合は、会社が当委員会に申請したあっせんの席で、X1のアサイン停止を解除するのであれば、『週刊金曜日』代表者の団交出席にはこだわらないものの、そうでなければ、団交の内容を自由に記事にするとの前提で同誌の関係者を団交に出席させるなどと主張した。このような経緯からすれば、会社が、同誌は団交本来の目的である労働条件や労使関係に関する話合いを行うためではなく自らの取材・報道目的のために団交に出席するのではないかとの疑念を抱くのは至極当然である。したがって、『週刊金曜日』の団交出席が取材目的ではないことは明確であるとの組合の主張は採用することができず、会社が同誌の出席する団交を応諾しなかったことには相応の理由があるということができる。 |
掲載文献 |
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