労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名  阪急トラベルサポート(緊急命令申立) 
事件番号  東京地裁平成24年(行ク)第74号 
申立人  中央労働委員会 
被申立人  株式会社阪急トラベルサポート 
決定年月日  平成25年3月27日 
決定区分  緊急命令申立ての認容 
重要度  重要命令に係る決定 
事件概要  1 組合、組合HTS支部及びX(以上三者を併せ、組合ら)は、会社が、平成21年3月18日付けで登録型派遣添乗員であるXに対するアサイン(会社が登録型派遣添乗員に雇用契約の申込みをすること) を停止したこと (本件アサイン停止)が労組法7条1号及び3号に当たり、組合らが求める関係者の同席の下での団体交渉を拒否したことが同条2号に当たるとして、①本件アサイン停止がなかったものとしての取扱い(X1の添乗業務への復帰、添乗業務復帰までの間に受けるはずであった賃金相当額の支払)、②A週刊誌の出版会社代表者を同席させる団交の応諾、③謝罪文の交付及び掲示の救済を申し立てた。
 なお、本件アサイン停止は、XがA週刊誌の取材(本件取材)に応じたところ、同誌に取材記事(本件記事)が掲載され、同記事は組合のブログにも紹介された(本件ブログ記事)が、会社は、これら記事の内容が事実に反し、会社の名誉を毀損し会社の業務を妨害するものであるとして、Xに対し事情聴取(本件事情聴取)を実施し、A週刊誌及び組合ブログに訂正記事の掲載を求めるように要求したが、Xが当該会社の要求を拒否したことにより行われたものであった。また、本件記事とは、「24時間体制で働いても、日当は新人で一日9000円ほど。15年以上のキャリアを積んで一日約1万6000円で、それ以上はビタ一文も出ない。雇用保険にも社会保険にも入れてもらえない。」と記載されたもの(本件日当等記事)、及び「添乗員になって数年経った頃、仲のよかった同僚が、仕事が原因で体調を壊し、立て続けに3人亡くなった。いずれも30代と40代の働き盛り。なのに、会社からは何の保障もなく、謝罪すらなかったという。」と記載されたもの(本件死亡記事)、である。
2 初審東京都労委は、本件アサイン停止が労組法7条1号及び3号に当たるとした上で、会社に対し、①Xの添乗業務への復帰、②同人の本件アサイン停止から添乗業務復帰までの間の賃金相当額の支払、③再発防止等を約束する文書の交付を命じ、その余の救済申立てを棄却した。会社は、本件初審命令の救済命令を不服として、再審査を申し立てたところ、中労委は、本件アサイン停止は不利益取扱いには当たらないが支配介入に当たると判断し、本件初審命令アの救済命令の内容を変更し、①会社が本件アサイン停止を解除し、Xを会社の登録派遣添乗員として取り扱い、②賃金相当額(1か月12日稼働、日当額を1万8300円として算出)1年間分の支払を命じた。
3 会社は国(中労委)に対し、本件アサイン停止は労組法7条3号に該当しないし、本件中労委命令の救済方法も過重であるとして、同命令の取消しを求め(第一事件)、組合らは国に対し、本件アサイン停止については労組法7条1号も成立するし、本件中労委命令の救済方法も不十分であるとして、同命令の取消しを求めるとともに、本件再審査申立ての棄却の義務付けを求めた(第二事件)。一方、中労委は、緊急命令の申立てをした。
4 東京地裁は、会社の請求については、棄却し、組合らの請求については、上記義務付けを求める部分を却下し、その余の請求を棄却した。また、同地裁は、中労委の緊急命令申立てに対し、申立てを認容した(本件)。 
決定主文  1 被申立人は、被申立人を原告とし、国を被告(申立人を処分行政庁)とする当庁平成23年(行ウ)第766号不当労働行為救済命令取消請求事件の判決確定に至るまで、申立人が中労委平成23年(不再)第5号事件について平成23年11月16日付けで発した命令に従い、
(1) 全国一般労働組合全国協議会東京東部労働組合HTS支部執行委員長Xに対して行った平成21年3月18日付けのアサイン停止を解除し、同人を同社の登録派遣添乗員として取り扱わなければならない。
(2) 前記Xに対し、同人が派遣添乗員として就労していたならば、受けるはずであった1年間分の賃金相当額(月12日稼動、日当額1万8300円で算出すること)を支払わなければならない。
2 申立費用は被申立人の負担とする。 
決定の要旨  1 本件命令の適法性
 (1) 事実認定について
  ア 会社が、組合HTS支部執行委員長Xに対して、平成21年3月18日付けで本件アサイン停止をしたことは、「事業場外労働に関するみなし労働時間制」の撤廃等を掲げて支部の中心的な存在として活動してきたXに対して、解雇と同視しうる措置を課し、同人を会社から排除することにより、組合及び支部の組合活動を減退させようとして行われたものであると推認できるとした上で、本件アサイン停止が労組法7条3号の支配介入に当たるとした本件命令の認定や判断に、疑義があると認めることはできない。
  イ また、会社とXの関係がその実態において派遣添乗ごとの短期労働契約が長期間にわたって専属的かつ継続的に繰り返されてきた等の事情から、会社を労組法7条の使用者に当たるとし、かつ、本件アサイン停止は解雇と同視しうる措置であるとした本件命令の各判断に疑義はない。さらに、一件記録等によれば、本件アサイン停止の手続は、慎重かつ的確であったということができず、性急であるというべきであるから、その手続の相当性に疑いがあるとした本件命令の判断にも疑義はない。
 (2) 救済方法の相当性
  Xの日当額は一時期を除けば基本的には勤務年数に応じて増額されたきたものと認めることができるから、本件アサイン停止直前の日当額を基準とした本件命令の救済方法についても疑義はない。
 (3) 以上によれば、本件命令は適法であると認めることができる。
2 緊急命令の必要性
 会社は、国が23年11月16日付けで本件命令を発した後、今日に至るまで本件主文を履行しておらず、本件命令の取消請求事件の判決が確定するまで不履行の状態が継続した場合、組合及び支部の団結権の侵害並びに同組合支部組合員であるXの経済的損失及び精神的苦痛は顕著となり、回復困難となるおそれがあると認められるから、緊急命令の必要性があるというべきである。
3 以上によれば、本件緊急命令の申立ては、理由があるからこれを認容し、主文のとおり決定する。 
その他   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京都労委平成21年(不)第46号 一部救済 平成23年1月11日
中労委平成23年(不再)第5号 一部変更 平成23年11月16日
東京地裁平成23年(行ウ)第766号、平成24年(行ウ)第284号 棄却・却下 平成25年3月27日
 
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