概要情報
事件名 |
佐川急便 |
事件番号 |
中労委平成21年(不再)第23号
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再審査申立人 |
佐川急便株式会社 |
再審査被申立人 |
スクラムユニオン・ひろしま |
命令年月日 |
平成22年 9月15日 |
命令区分 |
一部変更 |
重要度 |
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事件概要 |
会社が、①組合に対し、労組法上の労働組合であることの証明を求めるなどして団交の開催を引き延ばし、また、開催された団交に誠実に応じなかったこと、②病気休業中の組合員X1に対し、職場復帰を強要したこと及び同人の休業補償給付支給請求に係る手続きを遅延させたこと、③組合分会長X2に対し、傷病手当金支給申請に係る手続きを遅延させたことが不当労働行為であるとして申し立てられた事件である。
広島県労委は、上記①は団交拒否に該当するとして、団交の誠実応諾を命じ、その余の申立てを棄却したところ、会社は再審査を申し立てた。 |
命令主文 |
初審命令主文第1項を次のとおり変更する。
会社は、組合が平成20年1月16日付けで申し入れた団交のうち残業代の未払に関する団交に、自ら提示した交渉条件に固執するなど不誠実な対応をとることなく、速やかに応じなければならない。 |
判断の要旨 |
1 団交申入れ及び本件団交における会社の対応について
(1)ア 会社は、従業員が組合に加入していることが明らかであるにもかかわらず、組合加入者について問いただし、また、組合の組織運営に関する問題について明らかにすることなど、団交への応諾の判断に直接関係ない事項を求めており、組合の申し入れに誠実な態度をとったとは認められない。
イ 会社は、団交ルールが確立していなければ団交を行うことができないという状況にあったというわけではないにもかかわらず、団交ルールの確立に拘泥するなど、適切でない対応を行っており、組合の申し入れに対して、誠実に対応しようとしたものとはいえない。
(2) 組合が団交の席を立ったのは、会社には誠実に団交を行う意思がないと判断したことによるものであり、組合側から団交を打ち切ったといえない。会社は団交ルールとなっていなかった団交出席者の事前通知がなかったことをことさら取り上げて、謝罪か出席していた組合員の退席かを団交実施の条件とし、これが容れられなければ団交には応じないとの姿勢であった。したがって、本件団交における会社の対応は、不誠実であったといわざるを得ない。
(3) 以上のとおりであるから、組合の団交申入れに対する会社の一連の対応は、団交申入れに誠実に対応しようとしたものとはいえない。また、本件団交については、
会社が団交に誠実に応じようとしていたとは認められない。したがって、会社のこれらの行為は労組法7条2号に該当する不当労働行為である。
2 被救済利益の有無について
現に雇用される労働者である組合員が会社に1人もいなくなったとしても、組合員
が存在していた時期に申し入れられていた団交について、使用者の団交応諾義務が当然に消滅すると解することはできない。被救済利益は、救済命令発出の時点において救済を行うことが必要である場合において認められる。本件組合が申し入れた団交議題のうち、未払残業代の件については、義務的団交事項にあたることは明らかであり、同問題は未解決のままであるから被救済利益が喪われたとはいえない。また、現在訴訟が係属していることを理由に団交応諾義務を免れることはできない。 |
掲載文献 |
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