労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  黒川乳業(15年就業規則改定等) 
事件番号  中労委平成18年(不再)第26号・第28号 
再審査申立人  黒川乳業株式会社 
再審査申立人  関西単一労働組合 
再審査被申立人  黒川乳業株式会社 
再審査被申立人  関西単一労働組合 
命令年月日  平成22年4月21日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、会社が、①組合分会長X1に対し、分会の加盟するA団体が行ったB市立病院への会社との取引見直し等の要請行動(以下「申入れ行動」)に参加したことを理由として、出勤停止3日間の懲戒処分を行ったこと、②組合が就業規則全面改定について団交を申し入れたのに対し、説明するための「話合い」を行ったものの、団交には応じなかったこと、③前記②の団交に応じないまま、就業規則を全面改定し、分会員に適用したことが不当労働行為であるとして申し立てられた事件である。
2 初審大阪府労委は、前記②は団交拒否に該当するが、就業規則が既に全面改定されて全従業員に適用されているから改めて団交応諾を命ずる実益はないとして、文書手交を命じ、その余の救済申立てを棄却した。組合及び会社は、いずれもこれを一部不服として再審査を申し立てた。
命令主文  本件各再審査申立てを棄却する。
なお、初審命令主文第1項中、「C」を「X2」と、「D」を「Y」と改める。
判断の要旨  1 X1分会長に対する懲戒処分(争点①)について
 A団体が行った申入れ行動は、B市立病院と会社との取引中止には至らなかったとしても、会社に対する評価を低下、毀損させるものであり、会社の営業を妨害するおそれが大きく、会社の事業活動を阻害する可能性をもつものであって、正当な組合活動とはいえず、X1がこれに参加したことも正当な組合活動とはいえない。
 申入れ行動への参加を理由としたX1に対する懲戒処分は、「労働組合の正当な行為をしたことの故をもって」不利益な扱いを会社が行ったとはいえないし、分会長であるがゆえに重い処分がなされたとみることはできず、通常会社における懲戒処分に比して重いとも認められない。また、会社が同処分によって分会ないし組合の運営に対して支配介入したと認めるべき事情もない。したがって、本件懲戒処分は不当労働行為に該当しない。
2 就業規則全面改定案に関する団交の拒否(争点②)について
 就業規則で定められる内容は労働条件に極めて重要な影響を及ぼすものであるから、就業規則の制定や改定は、義務的団交事項に該当する。
 組合は、就業規則の改定について、絶対反対との姿勢を示す一方で徹底協議を求めるとして団交を申し入れていたのであるから、会社は、改定の説明のための団交ならば応じるという限定的な対応にとどまらず、改定自体についても組合の要求を聴取し、要求に応じられない場合にはその理由を十分説明するなどして納得が得られるよう努力すべきであったのであり、これを怠った会社の対応は団交応諾義務に違反するものであり、労組法7条2号の不当労働行為に該当する。
なお、就業規則の改定手続自体は完了している本件においては、文書の手交を命ずることが相当である。
3 就業規則の全面改定及び改定後の就業規則の分会員への適用(争点③)について
(1)別組合と協議したのみで改定した就業規則を公示し、分会員も適用対象としただけでは、分会員が不利益な取扱いを受けたとはいえず、そのほか、改定によって不利益な取扱いを受けた具体的事実を認めるに足りる証拠は存しない。また、改定後の就業規則は別組合の組合員も適用対象とされていること等から、分会員を改定就業規則の適用対象としたことが不当労働行為意思に基づくものとは認められない。
(2)就業規則の全面改定・適用の手続は、労基法所定の手続に従って行われ、会社は、改定案について別組合と組合に対して同じ頃に意見聴取を申し入れており、組合との団交が行われなかったのは、改定そのものについての団交か否かにつき組合と会社の意見の相違に起因するものであって、別組合との間で団交を行い、また、会社の団交拒否に正当な理由がなかったとしても、本件就業規則の全面改定・適用が組合の組合活動を抑圧すること等を意図してなされたものとまでは認められず、他にこの点に関し会社の不当労働行為意思を認めるに足りる証拠はない。
(3)会社による就業規則の全面改定・適用を不当労働行為ということはできない。
4 結論
 以上のとおりであるから、初審命令の判断は相当であり、また、救済方法についても相当であるから、本件各再審査申立てには理由がない。
掲載文献  

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委平成15年(不)第54号・平成16年(不)第40号 一部救済 平成18年 4月 7日
東京地裁平成23年(行ウ)第70-2号 棄却 平成24年10月11日
 
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