労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  ソクハイ 
事件番号  中労委平成21年(不再)第21号 
再審査申立人  株式会社ソクハイ 
再審査被申立人  連合ユニオン東京ソクハイユニオン 
命令年月日  平成22年7月7日 
命令区分  一部変更 
重要度   
事件概要  1 本件は、会社が、(ⅰ)組合が平成19年11月30日付けで申し入れた、①配送員(会社と「運送請負契約」を締結し配送業務に従事)の労働者性を認め労災保険等へ加入すること、②年末年始の稼働等を議題とする団体交渉に応じなかったこと、(ⅱ)配送員であり組合の執行委員長であるX1を前記団交拒否に係る救済申立ての調査期日に出席したことを理由として営業所長から解任したこと、(ⅲ)X1の処遇に係る団交に応じなかったことが不当労働行為に当たるとして、申し立てられた事件である。
2 初審東京都労委は、会社に対し、①19年11月30日付団交申入れの応諾、 ②X1 に対する営業所長解任がなかったものとしての取扱い及び営業所長職の報酬と既支給額との差額の支払、 ③これらに関する文書交付等を命じたところ、会社はこれを不服として、再審査を申し立てた。
命令主文  Ⅰ 初審命令主文第1項を取り消し、連合ユニオン東京ソクハイユニオンが平成19年11月30日付けで申し入れた団体交渉に係る救済申立てを棄却する。
Ⅱ 初審命令主文第2項ないし第4項を次のとおり変更する。
 1 株式会社ソクハイは、連合ユニオン東京ソクハイユニオンの執行委員長であったX1に対し、同人が飯田橋営業所長であった時期の報酬の平均月額の8か月分と、平成20年2月1日から同年9月30日までの期間について既に支給した報酬額との差額相当額を支払わなければならない。
 2  株式会社ソクハイは、本命令書受領後1週間以内に、下記文書を連合ユニオン東京ソクハイユニオンに手交しなければならない。


平成年月日
連合ユニオン東京ソクハイユニオン
執行委員長 X2 殿
株式会社ソクハイ
代表取締役 Y
当社が、①貴組合から平成20年1月24日付け及び同月31日付けで申入れのあった団体交渉を拒否したことは労働組合法第7条第2号の、②貴組合の執行委員長であったX1氏に対し同年1月31日付けで飯田橋営業所長を解任したことは労働組合法第7条第1号及び第4号の不当労働行為であると、中央労働委員会において、それぞれ認定されました。
今後、このような行為を行わないよう留意します。
(注:年月日は文書を手交した日を記載すること)
判断の要旨  1 メッセンジャー即配便と称し自転車を用いて書類等の配送業務を行う会社の配送員(以下「メッセンジャー」)は、労組法上の労働者に該当するか(争点(1))について
(1)労組法3条にいう「労働者」は、労働契約法や労働基準法上の労働契約によって労務を供給する者のみならず、労働契約に類する契約によって労務を供給して収入を得る者で、労働契約下にある者と同様に使用者との交渉上の対等性を確保するための労組法の保護を及ぼすことが必要かつ適切と認められるものをも含む、と解するのが相当である。
(2)本件のように会社との業務委託(請負)の契約形式によって労務を供給する者にあっては、(A)①当該労務供給を行う者達が、発注主の事業活動に不可欠な労働力として恒常的に労務供給を行うなど、いわば発注主の事業組織に組み込まれているといえるか、②当該労務供給契約の全部又は重要部分が、実際上、対等な立場で個別的に合意されるのではなく、発注主により一方的・定型的・集団的に決定しているといえるか、③当該労務供給者への報酬が当該労務供給に対する対価ないしは同対価に類似するものとみることができるか、という判断要素に照らして、団交の保護を及ぼすべき必要性と適切性が認められれば、労組法上の労働者に該当するとみるべきである。他方、(B)当該労務供給者が、相応の設備、資金等を保有しており、他人を使用しているなどにより、その業務につき自己の才覚で利得する機会を恒常的に有するなど、事業者性が顕著である場合には、労組法上の労働者性は否定されることになる。
(3)本件メッセンジャーの労働者性を検討すると、①メッセンジャーは会社の企業組織から独立した立場で本件書類等配送業務の依頼を受けているのではなく、会社の事業の遂行に不可欠な労働力を恒常的に供給する者として会社の事業組織に強く組み込まれており、②メッセンジャーの報酬等の契約内容は会社が一方的・定型的・集団的に決定しているといえ、③メッセンジャーの収入は、本件書類等配送業務に係る労務供給に対する対価であるとみるのが相当である。他方、メッセンジャーは、配送業務の手段の一部を所有し、経費を一部負担しているが、それらは事業者性を基礎づけるものとはいえず、むしろ自己の才覚で利得する機会は全くない点で、事業者性は認めがたい。
 以上からすれば、 メッセンジャーは、 労働契約又は労働契約に類する契約によって労務を供給して収入を得る者として、使用者との対等な交渉を確保するための労組法の保護を及ぼすことが必要かつ適切であると認められ、労組法上の労働者に当たる。
2  19年11月30日付け団交申入れに対する会社の対応は不誠実なものであったといえるか(争点(2)ア)について
 ①組合が開催を申し入れた12月は会社の繁忙期であり、会社は団交申入れ事項のうち緊急性の高い問題については当面の対策を講じつつ、組合副執行委員長X3に年明けへの延期の要請をしていること、②年明けに開催された団交での会社の回答は組合の要求に沿うものではないが、会社の対応に不誠実なところは認められないこと、③本申入れ事項につき組合から継続しての又は改めての団交申入れを行った証拠はないこと等から、19年11月30日の団交申入れに対する会社の対応は労組法7条2号の不当労働行為に該当しない。
3 X1委員長の処遇に関する(20年1月24日付け及び同月31日付け)団交申入れに係る申入事項は義務的団交事項といえるか(争点(2)イ)について
(1)会社は、会社の営業所長は労組法上の労働者とはいえないと主張する。しかし、営業所長は、 労組法上の労働者であるメッセンジャーから選ばれて、 メッセンジャーの現場管理者と位置付けられる者であること、営業所長それ自体としてみても、所長業務の遂行において、会社の営業組織・人事管理体制に強く組み込まれ、その契約内容は会社がおおむね一方的・定型的・集団的に決定しており、その報酬は会社が画一的に決定した基準による労働の対価であると認められる一方、事業者性が顕著であるとの事情は認められない。したがって、営業所長は、労組法上の労働者として同法の保護の対象となる。
(2)組合の20年1月24日付け団交申入れは、会社が、X1が降雪日に営業所を不在とし東京都労委で行われた調査期日へ出席したことを巡り、X1らを呼び出したことを契機としたものであるが、同調査期日にX1らが出席することは会社も当然予想し、認識していたと考えられるにもかかわらず、期日直後に同人らを呼び出したのであるから、組合らが同呼び出しは組合が本件救済申立てをしたことを快く思わず、降雪時の営業所不在を口実として、同人らを不利益に取り扱うために行ったものではないかとの疑念をもち、そのような不利益取扱いがなされないようにするため同申入れを行ったものと推認できる。そうすると、同申入れに係る議題は、X1個人の処遇に係るもので義務的団交事項に該当する。よって、これを団交議題ではないとして会社が拒否したことは労組法7条2号の不当労働行為に該当する。
(3)組合の20年1月31日付け団交申入れは、X1の所長解任について交渉を求めるものであり、同人個人の処遇に関する事項として義務的団交事項に当たるから、同申入れの拒否は労組法7条2号の不当労働行為に該当する。
4 X1に対する所長解任は、同人の東京都労委における調査期日に出席し発言したことを理由としたものか、あるいは、同人が、会社の再三の呼出しに応じないことにより、会社とのコミュニケーションが取れないことを理由としたものか(争点(3)ア)及びX1に対する所長解任は、不利益な取扱いといえるか(争点(3)イ)について
(1) 会社は、X1 に対する所長解任は、X1 が会社の呼出しに応じないなど、会社とのコミュニケーションがとれないが故のものと主張するが、東京都労委の調査期日にX1が営業所に在席しなかったため業務に支障が生じた事実は認められず、会社は同調査期日にX1が出席することは当然予想していたと考えられることからすると、営業所を不在としたことは所長解任の理由となる程の任務懈怠とは言い難いこと、 上記3(2)のとおり、 X1 が会社の呼出しに応じず組合が団交を申し入れたのには理由があるのに、最初の呼出しからわずか4日目の4 回目の呼出しをもって、 営業所長の業務遂行上コミュニケーションが取れないと評価することは相当とは認め難く、所長解任を申し渡した措置は性急に過ぎるものといわざるを得ないこと等からすると、会社のX1に対する所長解任は合理性に乏しい理由によるものであり、かつ、性急に行われたものといわざるを得ない。
(2) 所長解任後の報酬は明らかに減少しており、X1は経済的不利益を受けたとみるのが相当であり、加えて、仕事上、精神上の不利益を被ったものといえる。
(3) 上記(1)、(2)及び組合らの活動にはこれまでの会社の営業施策の変更を迫るものが含まれ、会社はこうした組合らの活動の中心的役割を担っていたX1を快く思っていなかったことが推認されることからすると、X1に対する所長解任は同人が上記調査期日に出席し組合執行委員長として発言したことの故になされた労組法7条1号及び4号の不当労働行為に該当する。
5 救済方法について
(1)上記2ないし4のとおり、19.11.30団交申入れに対する会社の団交拒否は不当労働行為には該当しないが、X1委員長らの処遇に関する団交申入れに対する団交拒否は労組法7条2号に、同人に対する所長解任は同法同条1号及び4号に該当する。
(2)会社は20年9月30日をもってX1を無期限稼働停止処分とし、また、同年5月12日、X1に対し「運送請負契約」を解除する旨を通知した。当委員会は、本件の救済に当たっては、X1がメッセンジャーとしての地位を喪失していることを前提として救済の内容を考えざるを得ない。 よって、会社に主文Ⅱの1のとおり報酬差額相当額の支払、及び2のとおり文書手交を命じることとする。
掲載文献  

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京都労委平成19年(不)第94号・平成20年(不)第9号 全部救済 平成21年6月2日
東京地裁平成22年(行ウ)第433号 棄却 平成24年11月15日
 
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