労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名 日本ERM
事件番号 中労委平成19年(不再)第59号
再審査申立人 日本ERM株式会社
再審査被申立人 日本ERM労働組合
命令年月日 平成20年9月3日
命令区分 一部変更
重要度 重要命令
事件概要 1 本件は、会社による賃金未払いを契機として、平成18年11月8日に会社の北海道支社の従業員5名が組合を結成し、同月17日に会社に対し組合の結成を通知するとともに、未払賃金等に関する団体交渉(以下「本件団交」)を申し入れたところ、会社が、(1)本件団交を拒否したこと、(2)組合のA委員長を同日付けで解雇し、更に他の組合員全員を同月20日付けで解雇したこと(以下「本件解雇」)、(3)19年3月2日に北海道労委において組合と締結した組合員5名の未払賃金及び解雇予告手当の支払い等に関する和解協定(以下「本件和解協定」)を履行しなかったことが、不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
2 初審北海道労委は、申立事実の全てについて不当労働行為と認め、会社に対し、本件団交の応諾、本件解雇の撤回及びバックペイ、本件和解協定の不履行の禁止等を命じた。会社は、これを不服として、再審査を申し立てた。

命令主文 初審命令主文を変更し、会社に本件和解協定の速やかな履行を命じ、その余の本件再審査申立てを棄却した。
判断の要旨 (1) 本件団交について
 会社は、会社のB社長が持病のために、札幌へ赴き本件団交に対応することができなかったと主張するが、B社長は北海道労委の審査に2回出頭しており、その病状が遠距離の旅行を著しく困難にするほどに重篤なものであったとは認め難い。しかも 、持病のために札幌での本件団交に対応できないというのであれば、そのことについて組合に対し理解を求め、再調整を申し出ることも可能であったと考えられるが、そのような事実は認められない。それどころか、組合代理人がB社長に本件団交を札幌で開催するよう改めて求めたところ、B社長は、旅費を出してくれるなら札幌に行ってもよい などと、主に金銭上の負担に関する異議を述べるだけで、自身の病状についての話もせず、また、組合が郵送した本件団交申入れ書等の受取りさえ拒否しており、本件団交申入れに応じようとする姿勢はなく、組合を軽視する態度に終始していた。
 また、会社は、北海道支社の経営形態の特殊さゆえ、代理人を立てて本件団交に応じることもできなかったと主張するが、B社長の健康状態が本件団交に応じられないような状況であったとは認められないのであるから、代理人による対応ができないというのであれば、B社長自身が団体交渉に対応すれば足りることである。
 したがって、本件団交の拒否は、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たる。
(2) 本件解雇について
 会社は、本件解雇は、北海道支社の営業不振による同支社閉鎖に伴うもので、組合の結成や本件団交申入れを嫌悪し、組合の弱体化を図る意図をもって行ったものではないと主張する。
 確かに、同支社閉鎖が営業不振によるものであったことには争いはないが、会社は、閉鎖に先駆けて組合員らに何ら説明をすることもなく、かえって、組合との協議に応じるどころか、組合結成通知を受けるや、早々にA委員長を解雇し、他の組合員も全員をその4日後には解雇した。



 さらに、B社長は、同支社のC組合員に対して、組合などは相手にしないなどと組合否認ともいえる発言を行ったり、本件和解協定に関わる対応をみても、下記(3)のとおり不誠実な対応に終始しており、北海道労委の審問においては、労働組合一般について、「日本の国を悪くしたのはあなた方組合じゃないか。」との見方も述べている。 以上のとおり、B社長には組合に対する強い嫌悪が認められ、組合結成通知から極めて近接した期間内に組合員全員が解雇されたことや、同支社閉鎖について何の説明もなかったことを併せ考えると、本件解雇は、組合結成及びその活動に対するB社長の嫌悪を決定的な動機として、同支社閉鎖を口実に行われたとみるのが相当である。
 したがって、本件解雇は、労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に当たる。
 なお、会社は、A委員長の経歴詐称も解雇理由であると主張するが、A委員長に対する解雇通知書に経歴詐称に関わる記載はなく、A委員長と他の組合員らの解雇日が近接していることを併せ考えれば、A委員長は他の組合員と同じ不当労働行為意思に基づき解雇されたとみるのが相当であり、会社の主張は採用できない。
(3) 本件和解協定の不履行について
 会社は、本件和解協定締結時、B社長は、持病により判断能力が低下しており、同協定は、会社代理人がB社長の意思に反し締結したものであると主張するが、同協定締結時の北海道労委の調査にはB社長も出頭しており、同協定がB社長の意思に反し締結されたと認めるに足りる事実はない。 

 また、会社は、同協定には過大な未払賃金額が算定されていることに疑義を感じたとも主張するが、そうであれば、そのことを同労委に申し出るなどし釈明して然るべきであるのに、 本件初審の審問においてB社長が同協定の不履行について尋問されるまでの4か月以上の間、そのようなことを行った事実はない。しかも、同審問で、B社長は、審査委員に対し同協定の履行を約束しており、履行の義務は認識していたものと認められるが、結局、この約束を破り、以後は同協定の効力そのものを否認する態度を取り続けており、このような態度は、B社長の組合嫌悪の念に発して、組合と締結した同協定を無視して履行せず、組合員に経済的打撃を与える行為といわざるを得ない。
 したがって、本件和解協定の不履行は、労組法第7条第3号の不当労働行為に当たる。
(4) 救済方法について
 本件和解協定の趣旨は、本件団交の拒否及び本件解雇に係る紛争を、同協定の履行により一挙に解決しようとするものである。再審査においても、組合は、本件の救済について同協定の趣旨に沿った意向を保持していること等の事情を考慮すれば、端的に同協定の履行を命じることが相当であると思料されることから、初審命令を主文のとおり変更することとする。

掲載文献  

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
北海道労委平成18年(不)第11号 全部救済 平成19年10月12日
東京地裁平成20年(行ク)第294号 緊急命令申立ての認容 平成21年6月3日
東京地裁平成20年(行ウ)第658号 棄却 平成21年6月3日
 
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