労働委員会命令データベース

(この事件の全文情報は、このページの最後でご覧いただけます。)

[命令一覧に戻る]   [顛末情報]
概要情報
事件名 高宮学園
事件番号 中労委平成19年(不再)第11号
再審査申立人 学校法人高宮学園
再審査被申立人 労働組合東京ユニオン
命令年月日 平成20年2月6日
命令区分 棄却
重要度 重要命令
事件概要 1  本件は、平成17年1月21日に申し入れた組合代々木ゼミナールグループ支部長Aの配転に係る団交(第1回団交)と、同年3月17日に申し入れたB支部書記長及びC支部執行委員の配転に係る団交(第2回及び第3回団交)について、学園がいずれも誠実に対応しないことが不当労働行為(労働組合法7条2号)に該当するとして、東京都労委に救済申立てがあった事件である。
2  東京都労委は、第1回及び第2回団交のいずれも不当労働行為に該当するとして、学園に対し、(1)組合から配転の必要性等について団交の申入れがあったときは、それらを説明するなど誠実に応じること、(2)文書交付、掲示及び履行報告を命じたが、学園はこれを不服として再審査を申し立てたものである。


命令主文 本件再審査申立てを棄却する。
判断の要旨 (1) 団交の誠実性について
ア 配転命令対象者が組合役員であり、配転に昇格が伴う場合には、組合は配転命令が組合弱体化のために行われ、昇格は不当な配転目的の隠蔽であるとの疑念を持つから、労使関係の安定化等を図る見地から、使用者は、当該配転が企業経営に及ぼす利益や、他の従業員を選択せず当該組合役員を選択した理由、昇格理由等に十分配慮した説明を行う義務があると解するのが相当である。
イ 第1回団交について
学園のA支部長の配転の必要性に関する説明は、各校舎で生徒指導を強化できる体制を作り意識が高い人を登用していく必要がある等という配転の基本的方針を示す程度のもので具体的な説明とは言い難い。また、人選理由は、Aのほか11名の候補者となる職員がいるにもかかわらず、学園がAを配転対象者として選択した理由を説明した形跡はない。してみると、配転の必要性及び人選の理由の学園説明は、配転が学園経営にもたらす利益やAを選択した理由について十分に配慮をしたものとはいえない。
ウ 第2回及び第3回団交について
(ア) 配転の必要性及び人選の理由について
 学園は、地方校を活性化するために教科能力のある職員を配置して生徒指導を徹底するとか、札幌校には地歴公民を担当できる職員がいないこと等を説明しているが、B支部書記長が現職から外れた後の業務見通し、本件配転による札幌校活性化の見通しなどに言及していない上、他に10名の候補者がいたにもかかわらず、Bを選択した理由に言及していない。
(イ) 昇格の理由について
 学園は、配転命令は組合員のみならず20名以上に発令されていること、人事考課の結果である等と回答しているが、組合が、昇格は不当な配転目的の隠蔽工作との疑いを抱いていた状況の下では、学園の説明は抽象的で、組合の疑問を払拭して妥結に向けて努力したものと認めることはできない。
(ウ) 学園は、配転後の労働条件について、寮長代理業務の労働時間を具体的に説明しておらず、業務内容についてもその一部を例示したにとどまり十分な説明をしておらず、課長手当等についてもプライバシー保護を理由に非開示としている。
エ 以上を総合すると、第1回団交ないし第3回団交における学園対応はいずれも不誠実であり、これらを不当労働行為とした初審判断は相当である。
(2) 救済方法について
学園は、本件後のD支部書記長の配転に関する団交の際、人選の理由及び役職の決定において抽象的な説明をしたにとどまり、本件の初審審査係属中に本件と同様な不誠実な説明態度を取ったことからすれば、学園の不誠実な対応は常態化している。以上に加え、学園には団交拒否等を巡る申立事案が過去数件あり、かつて組合に対し団交で誠実な対応をする旨約束していたのにその後も不誠実対応を取り続け本件申立てをされていること等から、学園の労働組合法の趣旨を無視ないし軽視する姿勢は顕著であって、組合員の配転に係る団交において同種の交渉態度を繰り返すおそれがあることは明らかである。
したがって、初審命令のとおり命ずるのが相当である。

掲載文献  

[先頭に戻る]

顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京都労委平成17年(不)第67号 全部救済 平成19年1月23日
東京地裁平成20年(行ウ)第206号 棄却 平成21年4月8日
 
[全文情報] この事件の全文情報は約237KByteあります。 また、PDF形式になっていますので、ご覧になるにはAdobe Reader(無料)のダウンロードが必要です。