労働委員会関係裁判例データベース

(この事件の全文情報は、このページの最後でご覧いただけます。)

[判例一覧に戻る]  [顛末情報]
概要情報
事件名 高宮学園
事件番号 東京地裁平成20年(行ウ)第206号
原告 学校法人高宮学園
被告 国(裁決行政庁 中央労働委員会)
被告補助参加人 労働組合東京ユニオン
判決年月日 平成21年4月8日
判決区分 棄却
重要度  
事件概要  本件は、組合役員の配置転換(以下「配転」)に関する平成17年1月27日、同年3月17日及び同月24日に開催した団体交渉(以下、順に「第1回団交」、「第2回団交」など、第1回ないし第3回団交を合わせて「本件各団交」)における学園の対応がいずれも労組法7条2号の不当労働行為に当たるとして救済申立てがあった事件である。
 初審東京都労委は、本件各団交における学園の対応が労組法7条2号の不当労働行為に該当すると認めて、学園に対し、配転に関する団交に誠実に応じること、文書手交及び掲示並びに履行報告を命じる旨の救済命令を発したところ、これを不服として学園から再審査の申立てがなされ、中労委は学園の再審査申立てを棄却した。
 学園はこれを不服として行政訴訟を提起したが、東京地裁は学園の請求を棄却した。
判決主文 学園の請求を棄却する。
判決要旨 1 本件各団交における学園の対応が労組法7条2号の不当労働行為に当たるか
(1)誠実に団交を行ったとするためには、使用者は、労働組合が組合員に対する配転について、その必要性ないし人選の理由、配転に伴う労働条件の変更内容等に関し使用者に説明を求めた場合には、配転の具体的な必要性ないし人選の具体的理由、諸手当の金額ないしその決定根拠等の労働条件等について説明したり、必要によってはその論拠や資料を提示し、仮にその説明を困難とする事情があるならば、その事情を具体的に説明するなどの対応をとる必要がある。
(2)第1回団体交渉
 第1回団交における、学園の配転に関する説明は、基本的な運営方針ないし一般論を述べるものではあっても、組合のX1支部長をあえて選択した理由を明示するものではなく、同支部長を配転すべき具体的な必要性ないし人選の具体的な合理性を説明するものではないから、同支部長を配転すべき具体的な業務上の必要性(当該人員配置の必要性と、人選の合理性)を理由付けるものとして不十分なものであり、団交における話合いを回避する態度に出ていることも併せ考慮すると、第1回団交における学園の対応は不誠実なものであったといわざるを得ない。
(3) 第2回及び第3回団体交渉
ア 配転の必要性について
 第2回及び第3回団交時における学園の説明は、第1回団交時の説明同様、組合のX2書記長をあえて選択した理由を明示するものではなく、同書記長を配転すべき具体的な必要性ないし人選の具体的な合理性を説明するものではない。
 他方、組合らは、組合役員らの配転には不当労働行為の疑念がある旨述べるなどしていたところ、学園は、配転の具体的な業務上の必要性について十分な説明をしないばかりか、抽象的で曖昧な説明をするにとどまっている。よって、学園の説明は、同人らを配転すべき具体的な業務上の必要性(当該人員配置の必要性と、人選の合理性)を理由づけるものとしては明らかに不十分なものであり、第2回及び第3回団交における配転の必要性の説明について、学園の対応は不誠実なものであったといわざるを得ない。
イ 労働条件等について
(ア)寮長代理業務の労働時間
 学園は、X2書記長が兼務する寮長代理業務の労働時間を明確にするようにとの組合からの要請に対し、不十分な説明をしたのみであり、かつ学園が誠実に対応したものとも言い難い。
(イ)寮長代理業務の内容
 学園の説明は寮長代理業務の一部を例示したにとどまるものであるから、学園の説明は不十分であり、かつ誠実にされたものとも言い難い。
(ウ)手当の額
 手当額が職員個人のプライバシーに関わり慎重に取り扱う慣行が存在したとしても、X2書記長自身が団交に出席し、同金額の開示を要求していたのであるから、これを開示しない理由はないというべきであり、仮に開示が困難であったならばその理由を説明すべきであった。それにもかかわらず、学園は本人への開示に固執し、第2回団交において手当額を財務部に確認するとしながら、誠意をもって説明のための準備をした様子も窺われないのであるから、学園の説明は不十分であり、かつ誠実にされたものとは言い難い。
2 救済利益の存否について
学園は、X1支部長ら3名が自主退職している現時点においては、救済申立ての前提をなす雇用関係が消滅しており、救済利益が失われている旨主張する。
しかしながら、本件においては、各団交において学園の組合らに対する不誠実な対応が行われた後、組合らの団体交渉権に対する侵害状態が未だ除去、是正されたとは認め難く、将来、学園がこのような不当労働行為を行うおそれもあると解されるから、学園に対し団交に誠実に応じるべきこと及び文書手交等を命じた初審命令の内容を実現する必要性が存するというべきであり、救済利益が失われているということはできない。
3 以上のとおり、本件各団交における学園の対応はいずれも誠実交渉義務を尽くしたものということはできず、労組法7条2号に該当する不当労働行為であり、現在も救済利益が存するといえる。したがって、本件各団交における学園の対応を不当労働行為と認め、救済を命じた本件命令が違法であるとはいえない。

[先頭に戻る]

顛末情報
行訴番号/事件番号 判決区分/命令区分 判決年月日/命令年月日
東京都労委平成17年(不)第67号 全部救済 平成19年1月23日
中労委平成19年(不再)第11号 棄却 平成20年2月6日
 
[全文情報] この事件の全文情報は約233KByteあります。 また、PDF形式になっていますので、ご覧になるにはAdobe Reader(無料)のダウンロードが必要です。