事件名 |
西日本旅客鉄道(西労広島懲戒処分等) |
事件番号 |
中労委平成11年(不再)第32号
中労委平成11年(不再)第33号
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再審査申立人 |
ジェーアール西日本労働組合広島地方本部 |
再審査申立人 |
個人X4 |
再審査申立人 |
西日本旅客鉄道株式会社 |
再審査申立人 |
ジェーアール西日本労働組合 |
再審査被申立人 |
西日本旅客鉄道株式会社 |
再審査被申立人 |
ジェーアール西日本労働組合 |
再審査被申立人 |
ジェーアール西日本労働組合広島地方本部 |
再審査被申立人 |
個人X5 |
再審査被申立人 |
個人X4 |
命令年月日 |
平成17年 9月 7日 |
命令区分 |
一部変更(初審命令を一部取消し) |
重要度 |
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事件概要 |
会社は、組合らの各組合員に対して行った配転命令、懲戒処分、出
向命令等が不当労働行為であるとして、争われた事件で、広島県労委は、分会長に対する懲戒処分(出勤停止)がなかったものと
しての取扱い、これに伴うバックペイ並びに出向命令に関する文書手交を命じ、 その余の申立ては棄却した。
会社及び組合は、これを不服として再審査を申し立てたが、中労委は、分会長に対する救済部分を取り消し、組合らの本件再審
査申立てを棄却した。 |
命令主文 |
1 初審命令主文第1項、第2項をいずれも取り消し、これにかかる
本件救済申立てを棄却す る。
2 ジェーアール西日本労働組合及び同組合広島地方本部並びにX4の本件再審査申立てを棄 却する。 |
判定の要旨 |
1300 転勤・配転
(1)本件配転対象者であるX1、X2組合員の青婦部は分会の一組織に過ぎず、同人らがいわゆる組合三役のような組合におけ
る中心的役員であったとはいえないこと、(2)本件配転は、会社が長期的広域的視野に立ち、広島地区全体の業務量、年齢、資
格等に配慮した人員構成を勘案し、その需給バランスを見ながら広島運転所を中心として時宜に応じた人員配置を行い、これが必
要となった経緯、理由等に特段の不合理は認められないこと、(3)組合らは、本件配転に際しては労使協議が履践されていない
とするが、労使協議については、労働協約、就業規則上特段の規定は認められず、事前に労使協議が行われていたという労使慣行
が確立していたとは言い難いこと、(4)会社は、X1、X2の家庭的事情ほか、年齢、資格等、従業員の配置について考慮すべ
き事情を踏まえた上で、組織構成全般に配慮して人選を行ったものと認められること等から、本件配転は、業務上の必要性と会社
の人事施策の見地から、不合理な措置とは認め難く、両名に対する各配転命令が不当労働行為に該当しないとした初審判断は相当
であるとされた例。
1300 転勤・配転
X3組合員ら6名に対する本件配転命令について、(1)同命令が出された当時、運転士中相当割合を組合の構成員が占めていた
状況には特段変わりはなく、配転対象者中大半が組合員であったことを以て直ちに差別的配転とはいえないこと、(2)会社の、
本件配転にかかる経緯等を示したデータ等は具体的な内容であり、長期的、全体的な見地から行われる人事施策として不合理とは
いえないこと、(3)X1,X2に対する配転命令とは、前提となる発生原因が全く異なるのであるから、これに対する対応策が
内容を異にしてもそれぞれ不合理とはいえないこと、(4)本件配転対象者6名のうち4名は、広島高速への出向を自ら希望して
いた経緯があること、(5)会社は本件配転命令に際しても、各人の家庭的事情等、考慮すべき事情を配慮した上で、組織構成全
般に配慮した人選を行ったものと認められること等から、本件X3ら6名に対する配転命令が不当労働行為に該当しないとした初
審判断は相当であるとされた例。
1400 制裁処分
0203 職場闘争と業務妨害
X4らに対する懲戒等処分は、交付手続に臨場した際に行った抗議行動等について課されたものであるが、組合らが会社に対し配
転基準の明示等を求める抗議をすること等は、目的において正当であったものの、本件交付手続は、業務を終了し、乗務員室で終
了点呼を受けた対象者を隣接する科長室に出頭させ、同所で事前通知書を読み上げて交付するもので、社会通念上特に不当とは言
えないにもかかわらず、本件抗議行動は、少なくとも職場規律を乱し、具体的業務を阻害する態様で行われており、正当な組合活
動の範囲を逸脱したものと解されること、各人に対する処分の内容は、いずれも非違行為の程度に照らして不相応な処分とは認め
難いこと等から、本件X4らに対する懲戒等処分は、不当労働行為に該当しないとした初審判断は相当であるとされた例。
1400 制裁処分
X5は、元来指導添乗を軽視していた上に、平素から好感を持っていなかったY1が添乗者だったために、個人感情から添乗拒否
をしたと推認され、かかる拒否は、正当な理由とはいえず、本件添乗拒否は上長の指示命令に違反し、その業務を妨害したものと
いえること、Y1の指導添乗の間少なくとも、田布施駅から徳山駅間については、基本動作の懈怠があったものと認められ、これ
が会社の定める規定に反すること、同人が遅延事故報告を怠ったことは、会社の定める規程に反することは明確であること、同人
が、毎日ごとに指示される業務指示にその都度違反するのみならず、その間施設内、業務時間内の組合活動を行うほか、談笑して
時間を過ごしたり、Y2助役に対して不穏当な言動を示したことが認められ、これが会社の諸規定に反し、上長の命令に違反し、
職務上の規律を乱した場合に該当すること等から、本件懲戒処分については、懲戒事由が認められるとされた例。
1400 制裁処分
X5に対する本件23日間にわたる日勤勤務は、日勤期間中の同人の勤務態度、その間折々示す上長ないし業務指示への反抗的態
度からすれば、かかる結果となったのは、そもそも同人の側において指導を受け、学習する意思のないことによるものであること
が推認でき、当該日勤勤務には、本件出勤停止処分の相当性に及ぼすべき不当な点は認められないとされた例。
1400 制裁処分
会社が、軽微な事故であっても虚偽報告による事故隠蔽が認められた場合には厳重な処分を以て対処することは、ひとたび事故に
なれば常に人命を巻き込む重大事故に直結する業務の特殊性に鑑みれば相当であるといえるが、(1)X5の遅延事故は、意図的
なものである点において、業務上誰しも惹起しうる運転事故等とは一線を画すること、(2)添乗拒否に端を発して惹起させた同
事故について虚偽報告を行い、添乗拒否の事実とこれにまつわる事故を隠蔽しようとしたこと、さらに、(3)本件事故調査の過
程でも、それぞれ指導運転士の態度が悪い、遅れはさほど発生していないなどと述べ自己を正当化し、指導やむなしとして行われ
た日勤期間中にも、その業務に従わないばかりか、上司に対して粗暴な言動を示すなどの非違行為を重ね、およそ省みることな
く、安全安定輸送実現のための諸施策を軽視無視する態度に終始したが、かかる一連の行為をみれば、将来にわたって同種同事故
再発の虞がなくなったとは評価できず、会社が強く自省自戒を求めるべく、30日間の出勤停止処分を課したことは、不当な処分
とは認められず、当該処分が、同人に対する不利益取扱い及び組合組織活動に対する支配介入であるとした初審判断は取り消され
るべきものであるとされた例。
1203 その他給与決定上の取扱い
1301 出向
X5に対する本件出向命令は、余剰人を抱えている会社において、有用な人事施策として出向が積極的に行われていたという事情
を背景に、本件出勤停止処分等に際しての報告から、同人についての業務変更の必要性と出向要請との双方の条件、利益が折り
合って行われたものであること、同人が蒙る不利益は社員全般に認められるべき家庭的事情であり、同人に対する出向が直ちに不
当とは評価できないこと、乗務手当不支給となったことによる給与の減額は、かかる人事施策の結果生じる不利益でこれ自体に差
別的意図、支配介入意思を窺わせるものとはいえないこと、会社は同人の出向に際して、いずれ状況に応じて運転業務に復職でき
るよう一応の措置を講じていること、他に会社による差別的意思、支配介入意図を窺わせる具体的疎明もないこと等から、本件出
向命令を不当労働行為とした初審判断は失当であり、取り消すとされた例。
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業種・規模 |
鉄道業 |
掲載文献 |
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評釈等情報 |
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