労働委員会命令データベース

(この事件の全文情報は、このページの最後でご覧いただけます。)

[命令一覧に戻る]  [顛末情報]
概要情報
事件名  黒川乳業 
事件番号  大阪府労委平成11年(不)第107号・平成12年(不)第43号・平成14年(不)第19号・平成14年(不)第57号
申立人  関西単一労働組合 
被申立人  黒川乳業株式会社 
命令年月日  平成18年 4月 7日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  本件は、会社が、(1)労働協約改定提案の際に組合員の生理休暇取得状況に係る文書を配布したこと、(2)分会機関紙配布活動及びストライキ時の構内集会を妨害したこと、(3)上記(1)及び(2)の問題につき謝罪を求める団体交渉に応じなかったこと、(4)労働協約を解約し、労働協定改定に係る団体交渉に応じなかったこと、(5)就業規則を変更して組合員に対し賃金カット等を行ったこと、(6)組合員に対し遅延届けの提出を命じ、これに従わないことを理由に懲戒処分を行ったこと、(7)組合事務所を撤去するよう求め、同撤去問題についての団体交渉に応じなかったこと、(8)組合員の担当業務を変更し、この問題についての団体交渉に応じなかったことが不当労働行為であるとして、争われた事件である。
 大阪府労委は、会社に対し、(1)午後4時以降に行う分会機関紙配布活動の妨害禁止、(2)代替組合事務所の貸与を議題とする団体交渉応諾、(3)組合員が従前担当していた業務(一部を除く)への従事、(4)上記(1)ないし(3)並びに生理休暇取得状況の配布及び組合員の担当業務の変更に関する文書手交を命じ、その余の申立ては棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、申立人の黒川乳業分会が被申立人の豊中営業所内において午後4時以降に行 う同分会機関紙の配布活動を妨害してはならない。
2 被申立人は、平成14年3月22日、同年7月8日、同月22日、同月29日、同年8月2日、同 月16日及び同年9月3日付けで申立人から申入れのあった申立人の黒川乳業分会の代替組合 事務所貸与を議題とする団体交渉に応じなければならない。
3 被申立人は、申立人組合員X1を、同組合員が本社総務部総務課において従前担当していた業務(出欠勤一覧表作成業務を除く。)に従事させなければならない。
4 被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
                  記
             
                                   年 月 日

関西単一労働組合
 執行委員長   X2 様
                               黒川乳業株式会社
                                代表取締役 Y1
 当社が行った下記の行為は、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条第1号、第2号及び第3号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
(1) 平成11年7月21日付けの労働協約改定に係る団体交渉開催申入れの中の「生理休暇の無給化について」の提案において、貴組合の黒川乳業分会の組合員についての記述を行うとともに、これに同組合員の過去の生理休暇取得状況がわかる資料を参考資料として添付したこと。
(2) 貴組合の黒川乳業分会長等が豊中営業所において午後4時以降に同分会機関紙を配布した際、これを妨害したこと。
(3) 貴組合から申入れのあった黒川乳業分会の代替事務所貸与を議題とする団体交渉開催の申入れに応じなかったこと。
(4) 貴組合の黒川乳業分会のX1組合員が本社総務部総務課において従前担当していた業務(出欠勤一覧表作成業務を除く。)を担当させないままにしたこと。
(5) 貴組合から申入れのあった黒川乳業分会のX1組合員の従前の担当業務の変更を議題とする団体交渉開催の申入れに応じなかったこと。
5 申立人のその他の申立ては、いずれも棄却する。 
判定の要旨  1600 休暇の取扱い
1602 精神・生活上の不利益
会社が匿名化していたとはいえ、組合員らの生理休暇取得状況一覧を添付して生理休暇無給化提案文書を配布したことは、会社が、会社において唯一生理休暇を取得している同組合員が組合に所属しているがゆえにその同意を得ずに個人情報を第3者に公表し、同組合員の生理休暇取得の妨害及び精神的打撃を与えようとして行ったとみるのが相当であり、本件会社の行為は労組法第7条第1号に該当する不当労働行為であるとされた例。

2610 職制上の地位にある者の言動
2800 各種便宜供与の廃止・拒否
分会長X3のビラまきについて、会社は同人の就業時間以降のビラまきを行うことを容認していたにもかかわらず、会社の協約改訂申入れ以降は一転して、ビラまきに関する協議を組合に求めずに管理職ら多数を持って同行為を制限したことは、組合活動を妨害し、弱体化を企図しようとしたものとみるのが相当であり、本件会社の行為は労組法第7条第3号に該当する不当労働行為であるとされた例。

3020 組合活動への制約
3102 争議対抗手段
組合は、会社がストライキ時の構内集会を排除したことは、分会結成以来の正当な組合活動等に対する破壊行為である旨主張するが、会社は協約改訂申入れ以前に組合員の構内立入制限ないし禁止措置をとっており、ストライキ時の構内集会を容認していたとはいえず、また同集会により会社では定例朝礼が実施できないなど業務運営に支障が生じていることから、会社が協約改訂申入れ以降に組合に対して構内集会を行わないよう申し入れたり、組合員等の構内入場禁止を行った対応は、使用者がストライキに対する措置としての相当な範囲を逸脱しているとはいえず、この点に関する組合の主張は採用できないとされた例。

2250 未妥結・打切り・決裂
協約解約及び協約改訂団交について、会社は協約改訂申入れ以降、団体交渉の持ち方等に一定の譲歩を行いながら、一貫して協約改訂団交の開催を何回も繰り返し要求していたものの、組合が会社の提案に対してなんらの歩み寄りの姿勢を示さず、会社がこのまま協約改訂団交を継続しても合意の成立する見込みがないと判断して団体交渉を途中で打切り、協約解約の予告及び実施に踏み切ったことは、正当な理由があるというべきであり、この点に関する組合の主張は採用できないとされた例。

1302 就業上の差別
1400 制裁処分
組合員X1及びX4に対する業務命令及び懲戒処分は、同人らが組合員であるがゆえになされた、あるいは組合の弱体化を企図してなされたとの事実の疎明もないことから、この点に関する組合の主張は採用できないとされた例。

2305 労働協約との関係
会社による組合事務所協定書等が解約されて初めて代替の事務所を組合が要求していることからして、組合の工場敷地内の組合事務所を利用する必要性は乏しく、平成8年頃以降から組合事務所を事実上利用していないことから、会社による組合事務所撤去案に関する組合の主張は採用できないが、組合が組合事務所撤去後の問題として代替事務所についてを議題として申入れた団体交渉を拒否した会社の対応は、労組法第7条第2号に該当する不当労働行為であるとされた例。

1302 就業上の差別
1400 制裁処分
1602 精神・生活上の不利益
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
組合員X1の担当業務から出欠勤一覧表作成業務を外したのは、会社従業員の個人情報を知り得る立場にあった同人の情報漏洩を繰り返す行為について、会社が情報管理の徹底を図ることを理由に行ったのであって、この点に関する組合の主張は採用できないが、会社の情報を分会役員に漏洩したり変更後の就業規則に従わず懲戒処分を受けていた同人からほとんどの業務を奪う結果となる担当業務の全面変更は、同人に精神的苦痛を与えるとともに組合の弱体化を企図して行ったものであるとみるのが相当であり、X1に対するかかる会社の対応は労組法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為であるとされた例。

2307 その他
組合員X1の担当業務の全面変更等を議題とする団体交渉を組合が申入れたにもかかわらず。会社は、「仕事のことに関して組合との協議事項になっていない」、「(X1は)仕事をしなくてもそれでいい」などとして一度も団交開催に応じなかったことが認められ、団交拒否の正当な理由の疎明もなく、かかる会社の対応は労組法第7条第2号に該当する不当労働行為であるとされた例。

業種・規模  食料品製造業 
掲載文献   
評釈等情報   

[先頭に戻る]

顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委平成18年(不再)第25号・第27号 一部変更 平成22年4月7日
東京地裁平成23年(行ウ)第70-1号 棄却 平成24年10月11日
 
[全文情報] この事件の全文情報は約435KByteあります。 また、PDF形式になっていますので、ご覧になるにはAdobe Reader(無料)のダウンロードが必要です。