労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  東日本旅客鉄道(千葉動労スト処分) 
事件番号  中労委 平成 8年(不再)第8号 
中労委 平成 8年(不再)第10号 
再審査申立人  国鉄千葉動力車労働組合(8年10号) 
再審査申立人  東日本旅客鉄道株式会社(8年8号) 
再審査被申立人  国鉄千葉動力車労働組合(8年8号) 
再審査被申立人  東日本旅客鉄道株式会社(8年10号) 
命令年月日  平成15年 7月16日 
命令区分  全部変更(初審命令を全部取消し)・棄却 
重要度   
事件概要  組合が会社に予告していたスト(予定スト)を繰り上げて実施(繰上スト)したことに対し、会社が、同ストは違法であるとして、(1)社長談話の発表、新聞広告記事の掲載等の広報を行ったこと、(2)組合役員らの会社施設等への入構を妨害したこと、(3)スト参加組合員の勤務取扱いを「争議」としなかったこと、(4)組合役員、スト参加組合員に対し、出勤停止、減給等の処分(本件処分)を行ったことが不当労働行為であるとして、争われた事件で、千葉地労委は、上記のうち、(2)の一部、(3)及び(4)は不当労働行為に該当するとして、会社に対し、(1)スト参加組合員の勤務取扱いを「争議」に変更すること、(2)本件処分の撤回、(3)文書手交を命じた。会社及び組合が再審査を申し立てたところ、中労委は、初審命令の救済部分を取り消し、同部分に関する組合の救済申立てを棄却し、組合の本件再審査申立てを棄却した。 
命令主文  初審命令主文第1項ないし第3項を取り消し、同部分に関する平成8年(不再)第8号再審査被申立人の本件救済申立てを棄却する。
 平成8年(不再)第10号再審査申立人の本件再審査申立てを棄却する。 
判定の要旨  0413 ストライキ(含部分・指名スト)
会社の、組合役員らの入構拒否、組合事務所前のトタンフェンス設置等の措置は、以前のストの際、多数の組合員らが会社の警告ないし退去要求を無視して、会社施設内に立ち入り、滞留し、代替乗務員に対し、罵声、暴言を浴びせるなどの行為が多発したため、予定ストの際にもそのような事態が発生しないよう防止し、業務の継続のために必要かつ相当な対抗措置としてとられたものであり、繰上ストは、これに抗議し、対抗するために行われたに過ぎないものであるから、繰り上げて行うことを正当化するほどの事情は認められないこと、また、組合が繰上ストを会社に告げたのはスト開始5分前ごろの口頭通告が初めてであり、会社が繰上ストを予測して事前に適切な対策を講じることが可能な状況にあったとは認められず、会社は、国民生活に不可欠な公益事業を営むものであることからすると、猶予をおかずに、直ちにストを行えば、必要な代替乗務員を確保できない等業務の遂行に重大な混乱をもたらすことは、組合としても十分認識できたというべきであり、繰上ストは、その手続、手段、態様においても、争議行為として正当性を欠くといわなければならないとされた例。

2610 職制上の地位にある者の言動
2620 反組合的言動
本件繰上ストについての社長談話と広告記事は、会社としての見解の表明と多大な迷惑をかけた利用客に対する謝罪を目的とするものであり、新聞記事の掲載は会社総務部長の同ストに対する見解であるが、いずれも、繰上ストの事実経過に関する部分は基本的に誤りはなく、繰上ストが違法であるという認識も不当とはいえないことから、組合への支配介入には当たらないとされた例。

3020 組合活動への制約
組合役員等の入構を拒否し、組合事務所前にトタンフェンスを設置したことは、業務の継続のために必要かつ相当な対抗措置としてとったものであるから、不当労働行為には当たらないとされた例。

2900 非組合員の優遇
予定スト参加予定の組合員に対して休養室の使用を拒否し、スト参加者の代替として翌朝勤務に就く乗務員に使用させることとした会社の措置には、休養室は、翌朝からの勤務に支障のないように乗務員に勤務に就かせるためのものであるから、当該会社の措置には合理的理由があり、不当労働行為には当たらないとされた例。

0413 ストライキ(含部分・指名スト)
繰上ストに参加した組合員100名の本件勤務取扱いを「争議」扱いとしなかったことについては、繰上ストが争議行為として正当性を欠くものである以上、当然の措置であり、不当労働行為には当たらないとされた例。

1204 スト・カット
3604 労働者に落度がある場合
本件処分対象者141名の処分事由は、繰上スト指導責任、繰上ストヘの参加及び会社施設内での滞留、不退去、嫌がらせ等を内容とするもので、繰上スト参加者への処分は、同ストが争議行為として正当性を欠く以上やむを得ず、また、滞留等は、就業規則に違反する行為であるのみならず、その態様をみると、いずれも、ストに通常伴う組合員の行動の範囲、程度を超えて、会社施設の通常利用を妨げ、又はスト時の代替乗務員や会社の担当者の平穏な業務遂行を妨げる程度に至っており、処分はやむを得ないものであること、さらに、本件処分について、その処分が重すぎることを窺わせる事情もないことから、会社のとったこれらの措置をもって、労働組合の正当な行為をしたことを理由とする不利益取扱い、組合の運営に対する支配介入ということはできないとされた例。

業種・規模  鉄道業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集126集948頁 
評釈等情報  中央労働時報 2003年12月10日 1020号 14頁 

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
千葉地労委 平成 2年(不)第3号 一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む)  平成 8年 4月16日 決定 
東京地裁 平成15年(行ウ)第594号 請求の棄却  平成17年 2月28日 判決 
東京高裁 平成17年(行コ)第94号 控訴の棄却  平成18年 5月30日 判決 
 
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