労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名  東日本旅客鉄道(千葉動労スト処分) 
事件番号  東京高裁平成17年(行コ)第94号 
控訴人  国鉄千葉動力車労働組合 
被控訴人  中央労働委員会 
判決年月日  平成18年 5月30日 
判決区分  控訴の棄却 
重要度   
事件概要  本件は、被控訴人参加人会社の従業員を構成員とする労働組合である控訴人が、控訴人の実施したストライキに対する参加人の対応等が不当労働行為であるとして争われた事件である。
 初審千葉県労委により、控訴人が申立てた救済請求の一部が認容されたが、被控訴人が再審査において認容部分を取消す旨の命令を発し、東京地裁における原判決でも被控訴人の命令が支持されたが、これを不服として控訴人が東京高裁に控訴したものである。
 同高裁は、これを棄却した。 
判決主文  1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。 
判決の要旨  0413 ストライキ(含部分・指名スト)
6221 不利益取扱い
12時間繰り上げて実施された昭和60年11月28日ストの経験のみから参加人において、控訴人による本件ストの実施が12時間繰り上げて実施されることを予見していたものということができないことはもとより、本件繰上ストに至る経緯(ストライキの繰上実施が5分前に通告された事実等)を加えてみても、参加人において本件繰上ストを予見することが可能であるとして本件繰上ストを正当視することはできないこと、確かに本件繰上ストの実施に伴い、一部で代替乗務員によって代替乗務がされた事実は認められるが、本件繰上ストの実施当日、千葉駅において、代替乗務員の迅速な手配ができなかったために列車の滞留が生じ、それに伴い列車の運行に大きな混乱が生じたことは、参加人において、本件繰上ストの実施を確実なものとして予見せず、代替乗務員の確保等において入念な準備態勢を整えることができていなかったことを端的に裏付けるものということができること等から、原判決が、参加人において本件予定ストが繰上実施されることを予見できなかった上、本件繰上ストについて、手続・態様において違法であるとしたことは、不当であるとの控訴人の主張は採用できないとされた例。

0413 ストライキ(含部分・指名スト)
6221 不利益取扱い
たしかに、控訴人と参加人のY1勤労課長及びY2輸送課長との本件協議によって、Y2輸送課長が本件繰上ストの実施があるかもしれないと伝えた事実等は認められるが、そもそも、原判決は、本件繰上ストの正当性について判断するに当たり、本件入構拒否等の正当な措置に対する抗議として行われたもので目的において正当ではないとした上、その手続について、控訴人が参加人側に対してストライキの繰上実施について明確に通知したのが5分前であった事実だけでなく、控訴人の設定した最終回答期限が平成2年3月18日午前11時35分頃で、その時点からみても繰上実施が約25分後に迫る突然のものであった事実を指摘するとともに、その態様について、本件繰上ストによって列車ダイヤ等に混乱を生じさせるものであったことや控訴人としてもそのことを十分予測できたこと等も合わせて考慮して、本件繰上ストが目的のみならず、手続・態様においても正当性を欠くとしたものであり、原判決の判断は正当であり、控訴人の主張は採用できないとされた例。

0413 ストライキ(含部分・指名スト)
6221 不利益取扱い
予備要員が多ければ代替乗務員の確保がより容易になっていたことは否定できないが、本件繰上ストが十分な予告時間をもって実施されなかったこと、及び控訴人側から2度にわたってストライキに入れる対象を変更する旨の連絡がされたこと、列車の運行を打ち切っても後続列車の運行が確保されるなどのより効率的な方策を採ることができたことを認めるに足る証拠もないことなど、代替乗務員の手配が迅速に図られず列車が滞留したことの原因が専ら参加人にあったことを基礎付けることは困難であり、列車滞留の原因その他のダイヤの混乱等については、参加人による代替乗務員確保や列車処理等に係る対応の不適切さと態勢の不備が一部あったとしても、専らストライキの繰上実施にあったというべきであり、原判決の認定判断は、正当であり、控訴人の主張は採用できないとされた例。

0413 ストライキ(含部分・指名スト)
6221 不利益取扱い
6225 労委審査手続上の適法要件
控訴人は、ストライキが労働力の集団的引揚げによって使用者の財産権に対抗する実力行使として現行法上肯認され、ストライキに伴う業務の阻害や利用客の迷惑といった結果が発生することは当然の前提となっているにもかかわらず、原判決が、本件ストライキによる業務遂行の混乱や利用客の迷惑を控訴人が予測できたとして、その手続・態様において正当性を欠くとしたことは、争議権保障の趣旨を理解しないものであって、不当である旨主張するが、争議行為は、正当なものである限り、市民法秩序を阻害することがあっても、刑事上及び民事上免責され得ることはいうまでもないが、本件繰上ストが本件予定ストに係る事前の通告内容に反し、繰上についての事前の通告も十分な猶予なく行われたこと等をも合わせ考慮して、その手続・態様からみても正当性を欠くと判断したものであって、原判決の認定判断は、正当であるとされた例。

0413 ストライキ(含部分・指名スト)
1400 制裁処分
6221 不利益取扱い
本件繰上ストの正当性の判断に当たり、初審申立てから再審査申立てにおける命令が発せられるまで13年を要していることからすると、きわめて困難な判断を個々の組合員に委ねた上、正当性を欠くとの事後的判断の下にストライキの責任を負わせるべきではないと控訴人は主張するが、違法な争議行為に参加して服務上の規律に反した者において、特段の事情がない限り、服務上の責めを免れず、違法なストライキに参加した組合員個人の責任を追及することが団体行動権の行使を萎縮させ不当に制約するものとも考えられないのであり、原判決が、違法な争議行為に参加して服務上の規律に違反した者について懲戒責任を免れることができないとしたことは違法とはいえないとされた例。

1400 制裁処分
6221 不利益取扱い
集会状況等一覧表、組合員行動等一覧表及び非違行為等一覧表は、原判決も説示するとおり、いずれも現認ないし事情聴取に基づくものであり、証拠として採用するに値するというべきであり、原判決が、各一覧表に基づき本件処分に係る処分事由の存在を認定したことは相当であるとされた例。

1400 制裁処分
6221 不利益取扱い
控訴人は、原判決が、本件繰上ストの実施において引継ぎが適切に行われなかったとしたことは不当である旨主張するが、各運転士は、乗務の途中でストライキに突入し、引き継がれるべき運転士がいつ到着するかわからない状況で、乗客が乗ったままの電車から離れ、その際に運転取扱心得等において、留置時の扱いとして必要とされる転動防止措置をとらなかったことは、運転士の規定及び指導に違反し、その違反に基づく処分も不当ではないとした原判決は正当であるとされた例。

業種・規模  鉄道業 
掲載文献   
評釈等情報   

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顛末情報
行訴番号/事件番号 判決区分/命令区分 判決年月日/命令年月日
千葉地労委平成 2年(不)第3号 一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む)  平成 8年 4月16日 決定 
中労委平成 8年(不再)第10号/他 全部変更(初審命令を全部取消し)  平成15年 7月16日 決定 
中労委平成 8年(不再)第8号/他 全部変更(初審命令を全部取消し)  平成15年 7月16日 決定 
東京地裁平成15年(行ウ)第594号 請求の棄却  平成17年 2月28日 判決 
 
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