事件名 |
東海旅客鉄道(東海労掲示物撤去) |
事件番号 |
大阪地労委 平成11年(不)第97号
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申立人 |
ジェイアール東海労働組合 |
申立人 |
ジェイアール東海労働組合新幹線関西地方本部大阪第一車両所分
会 |
被申立人 |
東海旅客鉄道株式会社 |
命令年月日 |
平成15年 3月27日 |
命令区分 |
一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含
む) |
重要度 |
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事件概要 |
会社が、組合の分会掲示板から組合掲示物を撤去したことが不当労働
行為であるとして争われた事件で、文書手交を命じ、その余の申立ては棄却した。 |
命令主文 |
1 被申立人は、申立人らに対し、下記の文書を速やかに手交しなけ
ればならない。
記
年 月 日
ジェイアール東海労働組合
中央執行委員長 X1 殿
ジェイアール東海労働組合新幹線関西地方本部大阪第一車両所分会
執行委員長 X2 殿
東海旅客鉄道株式会社
代表取締役 Y1
当社の新幹線鉄道事業本部関西支社第一車両所が、平成10年11月25日から同11年9月28日までの間に、貴組合新幹
線関西地方本部大阪第一車両所分会の組合掲示板から掲出中の下記の18点の掲示物を撤去したことは、労働組合法第7条第3号
に該当する不当労働行為と認められました。今後このような行為を繰り返さないようにいたします。
記
(1)平成10年11月25日撤去及び同月27日再撤去の見出し「会社自ら証明!組合掲示物撤去の
不当労働行為!」の掲示物及び見出し「中央労働委員会を愚弄するのか!」の掲示物
(2)同年12月1日撤去及び同月2日再撤去の見出し「反社会的行為のJR東海会社!」の掲示物及び「病気休職中の社員を一方的に『解雇』」並びに見出し「弱者を簡単に切
り捨 てるJR東海会社」及び「裁判官も会社側を指摘!」の掲示物
(3)同月9日撤去及び同日再撤去の見出し「絶対許さない!」地労委命令を踏みにじり、またしても不当労働行為を繰り返すJR東海会社!」の掲示物
(4)平成11年2月8日撤去の見出し「ん~何か臭うぞ!怪文書『知って得する…NO.6』発覚!差出人…頭隠して尻隠さ
ず!」の掲示物
(5)同月9日撤去の見出し「原因究明よりも社員に始末書を書かせて責任転嫁!」の掲示物
(6)同年4月7日撤去の見出し「やっぱり会社の判断は曖昧でいい加減だった!」の掲示物
(7)同年5月28日撤去の見出し「管理者の利益誘導による不当労働行為が明らかになる!」の掲示物
(8)同年7月29日撤去の見出し「取締役・Y2関西支社長まで登場!Y3(前大一両所長)よ!もう言い逃れはさせない!
不当労働行為を職場から暴くぞ!」の掲示物
(9)同年8月9日撤去の見出し「私的な飲み会!?ふざけるな!!」の掲示物
(10)同月10日撤去の見出し「経営陣・Y2関西支社長らによる超一級の不当労働行為を絶対に許さないぞ!」の掲示物
(11)同月19日撤去の見出し「X3さん運転士職を勝ち取る!会社上告を断念!敗北を認め慰謝料の支払いに応じる!」の掲示物
(12)同月20日撤去の見出し「『X3氏不当配転』を会社自らが認める!の掲示物
(13)同年9月9日撤去の見出し「またも、『怪文書』(?)が組合員宅に郵送!」及び「卑劣な組織破壊攻撃を断固粉砕しよう!!」の掲示物並びに見出し「地位・名声を悪
用して不当労働行為、組織破壊をするY2支社長に抗議文を送る!!」の掲示物
(14)同月28日撤去の見出し「300系電車訓練不当処分裁判で大阪高裁が不当判決!」の掲示物及び「海労、国労組合員に対しては別途QandAを参照にし…議論に負け
ないよ う…」の掲示物
2 申立人らのその他の申立ては棄却する。 |
判定の要旨 |
3020 組合活動への制約
労働組合が掲出するビラ等の掲示物は、組合員に対し情報を伝え、自らの見解を示し、団結を呼びかけるものであって、組合活動
上極めて重要な役割を持っていることは明らかであり、掲示物による労働組合の言論活動が無制限に許されるものではないとして
も、団結権を保障する観点からこれに対して十分な保護がなされなければならないものであること、また、労使の合意した協約に
おいて、使用者が掲示物を撤去できる旨が明文化されている場合であっても、当然に掲示物を撤去できるとみることは適当ではな
く、掲示物を撤去することについては相当の理由を必要とするものと解すべきであるところ、本件掲示物のうち18点について
は、直ちに事実であるとまで言えない内容のものや、個人名等が記載され個人を批判する上で必ずしも穏当とは言えない表現箇所
もいくつか含まれているが、総じてみれば、いずれも、組合等が自らの意思や見解を示し、会社を批判するといった正当な組合活
動の範囲内とみなすべきものであり、18点の掲示物撤去は、組合等の活動を嫌悪し、その弱体化を企図し、正当な撤去の権限を
越えて行ったものとするのが相当であるとして、7条3号に該当する不当労働行為に該当するとされた例。
3020 組合活動への制約
労働組合が掲出するビラ等の掲示物は、団結権を保障する観点からこれに対して十分な保護がなされなければならないものである
が、一方で、組合が掲示物による言論活動を行う場合に、事実を捏造し、個人を誹謗中傷し、また、使用者の信用を著しく傷つけ
ることがあったときには、正当な組合活動の範囲を逸脱するものと認められることがありうるところ、本件掲示物のうち2点のう
ち1点については、組合を攻撃する作者不明の文書を会社が作成したものと断定するもので、会社の信用保持の観点から、もう1
点については、前所長の顔写真の掲載及び同所長の行為に対する評価として用いられた表現等に関して、個人の名誉毀損の観点か
ら、それぞれ問題があり、会社がこれらの掲示物を協約に根拠に撤去したことは、不当労働行為に該当しないとされた例。
4603 その他
組合等は、将来にわたる分会掲示板からの掲示物撤去の禁止を求めるが、掲示物貸与条件に違反する掲示物を会社が撤去しうるこ
とは協約において合意されているところであり、会社による掲示物撤去の是非はその掲示物の内容いかんを個別的に判断すべきも
のであって、将来にわたって掲示物の撤去を一律に禁止すべきではないから主文のとおり命じるのが相当であるとされた例。
4614 文書手交のみを命じた例
組合等は、謝罪文の掲示を求めるが、文書の手交をもって足りるとされた例。
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業種・規模 |
鉄道業 |
掲載文献 |
不当労働行為事件命令集125集560頁 |
評釈等情報 |
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