労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  神奈川県厚生農業協同組合連合会・同(第二支配介入) 
事件番号  中労委 平成11年(不再)第28号 
再審査申立人  神奈川県厚生農業協同組合連合会 
再審査被申立人  神奈川県厚生農業協同組合連合会労働組合 
命令年月日  平成14年 7月17日 
命令区分  一部変更(初審命令を一部取消し) 
重要度   
事件概要  中労委平成11年(不再)第28号事件は、連合会が、(1)組合員 に脱退を勧奨し別組合の結成を支援したこと、(2)組合の教宣活動や役員選挙に介入したこと、(3)組合員X1を伊勢原病院 の薬局長から厚木市の事務所の資材課長に配転したこと、(4)組合専従者の出席を理由に団体交渉を拒否したことなどが不当労 働行為であるとして争われた事件で、神奈川地労委は、(1)支配介入の禁止、(2)組合員X1の原職復帰、(3)団交拒否の 禁止、(4)文書掲示を命じた。 
中労委平成12年(不再)第59号事件は、連合会が、(1)組合員に脱退を勧奨したこと、(2)第二組合づくりに関与したこ と、(3)組合員のチェック・オフを中止したこと、(4)組合役員を誹謗する等して組合の弱体化を図ったことなどが不当労働 行為であるとして申立てがあった事件で、神奈川地労委は、支配介入の禁止及び文書掲示を命じた。
両事件を不服として、連合会からそれぞれ再審査の申立てがなされ、中労委は、両事件の初審命令を併せて変更し、支配介入の禁 止及び団交拒否の禁止並びに文書掲示を命じ、その余の救済申立てを棄却した。 
命令主文  神労委平成9年(不)第12号事件及び同平成11年(不)第13号 事件にかかる命令を併せて次のとおり変更する。
1 再審査申立人神奈川県厚生農業協同組合連合会(会)は、再審査被申立人神奈川県厚生農業協同組合連合会労働組合(組合) の組合員に組合からの脱退を勧奨することにより、組合の運営に介入してはならない。
2 会は、組合役員選挙や教宣活動に干渉して、組合の運営に介入してはならない。
3 会は、組合相模原支部との団体交渉に組合専従者が出席することを拒否してはならない。
4 会は、本命令受領後、速やかに、下記の文書を縦1メートル、横1.5メートルの白紙にかい書で明瞭に記載し、再審査申立 人の横浜本所、厚木本所、相模原協同病院及び伊勢原協同病院それぞれの従業員出入り口付近の見やすい場所に、10日間掲示し なければならない。

                 記

  当会が、貴組合員に脱退を勧奨したこと、組合役員選挙や教宣活動に干渉したこと及び貴組合相模原支部との団体交渉に貴組 合専従者が出席することを拒否したことは労働組合法第七条第三号に該当する不当労働行為であると中央労働委員会において認定 されましたので、今後このような行為を繰り返さないようにいたします。

  平成 年 月 日

 伊勢原市東大竹二丁目6番地の1
  神奈川県厚生農業協同組合連合会労働組合
        執行委員長   X2   殿


                  横浜市中区海岸通一丁目2番2号
                   神奈川県厚生農業協同組合連合会
                    代表理事会長  Y1

5 その余の救済申立てを貴する。 
判定の要旨  2800 各種便宜供与の廃止・拒否
連合会のチェック・オフに関しての一連の対応には、組合に対する介入の意図は認められず、連合会がチェック・オフ中止を利用 して脱退勧奨を行ったとはいえないとされた例

2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
3410 職制上の地位にある者の言動
Y2課長のX3主任に対する発言は、職場で、就業時間中に自席に呼び出して行われたものであり、一組合員としての行為とみな すことはできず、管理職としての行為と見ざるを得ず、この発言を連合会が脱退を勧奨したものとした初審命令の判断は相当であ るとされた例

2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
3410 職制上の地位にある者の言動
Y3事務長のX3主任に対する発言は、組合活動を抑制する効果を持つものと考えられ、事務長の行為は連合会の行為とみなすべ きものと判断されるので、この発言は、組合の運営に介入する連合会の不当労働行為であるとされた例

2610 職制上の地位にある者の言動
2620 反組合的言動
3410 職制上の地位にある者の言動
組合の主張が否定された内容の判決文を、Y4婦長は業務中と目される時間に部下を集めて説明したり、判示部分にマーキングし て、仕事場である看護室の連絡用のビニール袋に入れたりしたものであり、Y5婦長は、赤線を入れて業務上使用するホワイト ボードに掲示したものであって、連合会が使用者として責任を負うべきものと考えられ、Y4婦長及びY5婦長の言動は、連合会 が組合員に対し組合からの脱退を勧奨し、組合運営に介入したものとした初審命令の判断は相当であるとされた例

2610 職制上の地位にある者の言動
2624 組合人事への干渉
3410 職制上の地位にある者の言動
Y6参事がY7次長及びY8次長に組合役員選挙への立候補を勧めたことは、組合執行部に反執行部勢力を送り込もうと企図した ものと見られても仕方のない行為と言わざるを得ず、参事の行為は、使用者が行ったものとして、連合会が組合役員選挙に介入し たものと判断された例

2610 職制上の地位にある者の言動
2624 組合人事への干渉
3410 職制上の地位にある者の言動
非組合員であるY9課長が、Y7次長やY2課長への投票を勤務時間中に組合員に呼びかけた行為は、管理職が職制を利用して組 合の選挙に干渉したものであり、連合会の組合に対する支配介入と判断された例

2610 職制上の地位にある者の言動
2620 反組合的言動
3410 職制上の地位にある者の言動
Y10課長のX4看護婦に対する発言の組合に係る部分は、管理職としての婦長の発言と言うよりは個人的な感想の発露と言うべ きものであり、Y10課長の発言を連合会の組合に対する支配介入とすることはできないとされた例

2610 職制上の地位にある者の言動
2620 反組合的言動
3410 職制上の地位にある者の言動
Y11婦長のX5准看護婦に対する発言は、管理職が組合員の組合活動を直接批判したものであり、さらに、組合機関誌に掲載し た記事の内容について、総婦長の名前を出して1時間以上にわたって非難したことは、管理職が、職制の圧迫によって組合機関誌 活動に制約を与えようとしたものと言わざるを得ず、連合会の組合に対する支配介入に当たると判断された例

3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
連合会には、X1の組合活動に対する警戒感があったとしても、それを動機としてX1の組合活動を抑制するために本件配転がな されたものとまでは判断できず、むしろ、業務上、人事上の必要性から合理的な配転を行ったものと判断されるので、この配転を もって、連合会の組合に対する支配介入とした初審命令の判断は採用できないとされた例

2610 職制上の地位にある者の言動
2902 労組法7条2号(団交拒否)と競合
3410 職制上の地位にある者の言動
Y3事務長は、支部交渉には組合専従者の出席は認められないとの姿勢に終始し、結局、組合申し入れにかかる支部交渉は、組合 専従者の出席が認められずに行われたものと判断せざるを得ず、このようなY3事務長の対応は、本来労働組合が自主的に決定す べき団体交渉の出席者に不当に注文をつけることにより、組合の運営に介入したものであって、労組法第七条第三号に該当する不 当労働行為であると判断された例

2610 職制上の地位にある者の言動
2620 反組合的言動
3410 職制上の地位にある者の言動
診療報酬不正請求問題に関しての両院長及び両事務長の発言並びにY4婦長、Y12副看護部長の言動は、いずれも組合員の組合 からの脱退ないし組合の分裂を強く促すことを企図した行為と判断せざるを得ず、これらについて、連合会による組合の運営に対 する支配介入とした初審命令の判断は相当であるとされた例

2610 職制上の地位にある者の言動
2611 その他の従業員の言動
2620 反組合的言動
3410 職制上の地位にある者の言動
相模原病院の組合説明会におけるX6婦長やX7主任の発言は、組合説明会という組合活動の場での発言であって連合会は関知で きず、連合会に責任を負わせることは妥当とは言えない。また、伊勢原病院職員説明会でのY13事務長及びY12副看護部長の 発言は、既に連合会の不当労働行為を判断しているところであり、重ねて判断する必要が認められず、連合会がX8書記長に的を 絞り誹謗中傷して反発を抱かせ、これにより組合員の脱退を煽ったとする初審命令の判断は採用できないとされた例

2500 別組合の結成・援助
2501 親睦団体の利用
守る会あるいは別組合の結成を連合会が指示して行わせたとの疎明はなく、管理職が中心となって守る会が発足した事実をもって 連合会の行為とすることはできず、連合会が第二組合づくりに関与して組合の運営に介入したものとの初審命令の判断は採用でき ないとされた例

業種・規模  医療業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集123集710頁 
評釈等情報  中央労働時報 2002年11月10日 1004号 22頁 

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
神奈川地労委平成 9年(不)第12号 一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む)  平成11年 5月25日 決定 
東京地裁平成14年(行ウ)第350号
東京地裁 平成14年(行ウ)第352号
救済命令の一部取消し  平成16年 1月28日 判決 
東京高裁平成16年(行コ)第82号 一部取消  平成18年 3月22日 
 
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