事件名 |
大道測量設計社 |
事件番号 |
東京地労委 平成 9年(不)第36号
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申立人 |
X1 |
申立人 |
連帯労働者組合 |
被申立人 |
有限会社大道測量設計社 |
命令年月日 |
平成13年 1月 9日 |
命令区分 |
一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含
む) |
重要度 |
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事件概要 |
会社が、①アルバイトとして採用されたX1就労日を週4日から2日
に削減したこと、②X1就労日問題、合意事項の労働協約化、人事約款の締結等に関する団交を拒否したこと、③休業手当の支給
等に関する合意内容の協約化を拒否したこと、④会社役員が組合及びX1に対し、誹謗中傷発言を行い、同人に対し暴行・監禁を
したことが争われた事件で、①X1に対する週2日を休業とする旨の通知がなかったものとしての取扱い及び威迫的言動の禁止、
②全日就労したものとしてのバックペイ(命令交付日まで4割控除)、③誠実団交応諾、④団体交渉等でのX1に対する誹謗中
傷・威嚇の禁止、⑤履行報告を命じ、その余の申立を棄却した。 |
命令主文 |
1 被申立人有限会社大道測量設計社は、平成9年1月10日付で申
立人X1に対
して行った、所定の就労日のうち週2日(月曜日及び火曜日)を休業とする旨
の通知がなかったものとして取り扱わなければならない。
また、被申立人X1が就労を求めた場合に、「業務上の指導」などと称して威
迫的言動をとってはならない。
2 被申立人会社は、9年1月13日以降、前記通知により休業とした日につい
て、また、同年3月26日以降の所定の就労日について、申立人X1が全日就労
したものとして、就労が保障されるまでの間の賃金相当額を支払わなければな
らない。但し、本命令交付の日迄の分については、その4割を控除して支払う
こと。
3 被申立人会社は、申立人連帯労働者組合が申し入れた「9年4月要求」のう
ち、第4項ないし第10項について、「議題の整理」を理由として団体交渉を
拒否してはならず、申立人組合との団体交渉を誠実に行わなければならない。
4 被申立人会社は、団体交渉等において、申立人組合や同X1を誹謗中傷あるい
は 威嚇するなどして、申立人組合の運営に支配介入してはならない。
5 被申立人会社は、前第2及び第3項を履行したときは、速やかに当委員会
に文書で報告しなければならない。
6 その余の申立てを棄却する。 |
判定の要旨 |
1401 労務の受領拒否
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
従業員X1の組合加入後、就労日を週4日から2日に削減したことは、経営上の施策を理由とするものではなく、X1の就労日を
削減して賃金面で打撃を与え、かつ、同人に退職を迫ったもので、会社からX1を排除する意図で行われた不利益取扱いであると
ともに、組合に対する支配介入にもあたるとされた例。
1401 労務の受領拒否
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
会社が、X1に威迫的な行動を伴う「業務上の指導」を行い、X1に通常の就労をさせなかったこと、また、X1の就労日削減撤
回を決定した後も同様の「業務上の指導」を示唆してX1が就労できない環境を作り出して、同人の就労を事実上拒んだこと、そ
の後、X1らの団交申入れによって就労の意思のあることを知りながら、通常の就労保障をしないまま、同人を就労させていない
ことは、不利益取扱いであると同時に、組合に対する支配介入にもあたるとされた例。
4408 バックペイが認められなかった例
X1にかかる「就労日の保証と賃金支払」、「業務上の指導の禁止」等の問題について、会社が「議題の整理」に固執するのは、
団体交渉の場で組合から追及を受けることを避けるたっめであると認められ、これは団体交渉そのものを拒否した不当労働行為に
当たるとされた例。
2244 特定条件の固執
2245 引き延ばし
X1にかかる削減問題と不就労働問題については、X1が会社役員らに対して言葉激しく執拗に年始の就労等を迫ったことが直接
の契機になって会社の就労日の削減措置を招来し、また、X1の勤務態度やミスが会社取締役の威迫的な言動を伴う、「業務上の
指導」を招来し、さらに、組合は、本件申立後、会社や会社役員の自宅付近にまで押し掛けビラ撒き等の抗議行動を行い、社長の
母親まで巻き添えにするまでに至ったことを総合的に勘案して、賃金相当額の支払いを命ずるにあたり、支払額の4割を減ずるこ
とが相当であるとされた例。
4300 労組法7条2号(団交拒否)の場合
4503 他の救済との関係で団交の必要性を認めなかった例
就労日が削減された以降のX1の就労を巡っては、就労日の削減問題あるいは不就労問題として、会社の行為が不当労働行為にあ
たると判断し、救済を命じたのであるから、団交拒否とされた要求書のうちの同一事項については、改めて団交を命ずるまでの必
要性はないとされた例。
2244 特定条件の固執
2245 引き延ばし
組合員の労働条件等7項目の交渉議題については、いずれも組合員の労働条件や組合活動に関する交渉事項であり、会社の団体交
渉における態度、団交回数、交渉期間等を勘案すると、今なお交渉の必要性はあり、会社が、組合員が同社において就労していな
いことを奇貨として、組合に対して、「議題の整理」を求め、これに固執していることは、合理的な理由のない団交拒否にあたる
とされた例。
4300 労組法7条2号(団交拒否)の場合
組合が労使間で合意したと主張する「休業手当の支給」、「残業手当の割増支給」及び「有給休暇の付与」の三項目については、
いまだ各項目とも交渉の余地が残っているものと認められ、結局、現段階においては、締結すべき労働協約の内容自体が確定して
いないといわざるをえないから、団交実施を命ずることをもって足りるとされた例。
2620 反組合的言動
2700 威嚇・暴力行為
組合及びX1に対する誹謗中傷等の会社役員らの言動は、その一部を除き、組合やX1の組合活動を嫌悪してなされた措置あるい
は威迫的な言動であり、組合運営に対する支配介入であるとされた例。
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業種・規模 |
その他の事業サービス業(建物サービス業、民営職業紹介所、警備業
等) |
掲載文献 |
不当労働行為事件命令集119集54頁 |
評釈等情報 |
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