概要情報
事件名 |
千代田化工建設 |
事件番号 |
中労委平成 4年(不再)第6号
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再審査申立人 |
千代田化工建設 株式会社 |
再審査被申立人 |
X1 |
再審査被申立人 |
X2 |
再審査被申立人 |
X3 外二名 |
命令年月日 |
平成 7年12月20日 |
命令区分 |
再審査棄却(初審命令をそのまま維持) |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、会社が申立人X1ら5名の正当な組合活動を嫌悪し、他の組合員に対するみせしめのため長期にわったて昇給・昇格差別を継続していることが不当労働行為であるとして争われた事件である。 初審神奈川地労委は、(1)X1ら5名について、昭和63年4月1日に遡って、その基準内賃金を同学歴、同年齢又は同期の社員の平均を下回らない額に是正すること、これにより受けるべき賃金相当額と既支給額との差額(年5分加算)の支払い、(2)X1以外の4名を(1)により是正された基準内賃金に見合う職能資格へ昇格させること、(3)昇給及び昇格に当たり、X1ら5名に対する組合活動を理由とする差別の禁止、(4)文書掲示を命じ、昭和63年3月31日以前の差別是正の申立てについては棄却した。 会社は、これを不服として再審査を申し立てたが、中労委は初審命令を維持し、会社の再審査申立てを棄却した。 |
命令主文 |
本件再審査申立てを棄却する。 |
判定の要旨 |
0120 政治(党)活動
労組法7条1号にいう「労働組合の行為」とは、組合員が労働条件の維持改善や経済的地位の向上を図る等労働組合の目的に基づき、労働組合の自主的・民主的運営に資する行為であるとされた例。
4415 賃金是正を命じた例
賃金の決定行為とこれに基づく賃金の支払いとは一体として一個の不当労働行為を構成し、同決定行為とこれに基づく賃金が支払われている限り不当労働行為は継続するとされた例。
4419 現存格差を一挙に是正した例
賃金上の不利益取扱いについては、救済時点において不利益の事実が認められ、それが会社の作為、不作為と認められる場合であって、現に存する差別の救済を求めていると認められるときは、その差別の是正を命じることができるとされた例。
4415 賃金是正を命じた例
会社に考課査定をやり直す制度がないことをもって履行不能とすることはできないとされた例。
5008 その他
会社は、申立人らの業務上の状況についての主張・立証は一切せず、同人らの業務成績が特に悪いとの疎明はないのであるから、初審が職能資格、基準内賃金を同期社員の平均に是正するよう命じたことが不当であるとはいえないとされた例。
5008 その他
ポスト・ノーティス命令は、使用者の行為が不当労働行為であると認定されたことを周知させ、再び同種行為をさせないようにするための一手段であり、労委の裁量の範囲にあり、表現の自由の侵害とはならないとされた例。
4415 賃金是正を命じた例
被解雇者X1の考課査定の是正命令は不可能事を求めることになる旨の主張が、会社は緊急命令決定に従い、X1を職場に配属し、X1は出社しているのであるから、この主張は前提を欠くとされた例。
5124 その他の審査手続
労組法24条1項但属は労働者委員の参与を義務づけたものと解することはできないから、初審の本件審査に労働者委員が全く関与しなかったとしても、これが当該審査ないし命令を違法ならしめるものではないとされた例。
5124 その他の審査手続
労働協約上の苦情処理制度の仲裁裁定をうけた組合員はその裁定に拘束されるので不当労働行為の申立てができないとの主張が斥けられた例。
0120 政治(党)活動
組合内少数グループの活動は、たとえ政党名を用いることがあっても、組合員の労働条件の改善のための活動であるので、これをすべて組合活動とは無縁の政治活動と断ずることはできないとされた例。
1202 考課査定による差別
申立人らは、同期の平均と比較して、その資格において格差が認められる反面、特に能力が劣り勤務成績がわるいとは認められず、本件差別取扱いは不当労働行為であるとされた例。
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業種・規模 |
建設業 |
掲載文献 |
不当労働行為事件命令集103集601頁 |
評釈等情報 |
中央労働時報 1996年 2月10日 902号 25頁 
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