労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名  千代田化工建設(昇給昇格) 
事件番号  東京地裁平成 8年(行ウ)第17号 
原告  千代田化工建設株式会社 
被告  中央労働委員会 
被告参加人  X1 
被告参加人  X2 
被告参加人  X3 
被告参加人  X4 
被告参加人  X5 
判決年月日  平成 9年 7月27日 
判決区分   
重要度   
事件概要  会社が、X1ら5名の正当な組合活動を嫌悪し、他の組合員に対するみせしめのため長期にわたって昇給・昇格差別を継続していることが不当労働行為であるとして、争われた事件で、初審神奈川地労委は、<1>X1ら5名について、昭和63年4月1日に遡って、その基準内賃金を同学歴、同年齢又は同期の社員の平均を下まわらない額に是正すること、これにより受けるべき賃金相当額と既支給額との差額(年5分加算)の支払い、<2>X1以外の4名を<1>により是正された基準内賃金に見合う職能資格へ昇格させること、<3>昇給及び昇格に当たり、X1ら5名に対する組合活動を理由とする差別の禁止、<4>文書掲示をそれぞれ命じた。中労委もこれを維持したところ、会社からこれを不服として東京地裁に行政訴訟が提起され、同地裁は会社の請求を棄却した。 
判決主文  1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は、参加によって生じた費用も含めて原告の負担とする。 
判決の要旨  5124 その他の審査手続
資格の是正を求めて仲裁申立てをしたX3ら3名が、仲裁裁定がなされた以降の資格等の格差の是正を求めて訴えを提起し、又は救済命令の申立てをすることは、何ら妨げられるものではない。

0120 政治(党)活動
X1ら5名の正当な組合活動の性格が、同人らが特定政党支部の構成員であることにより他面において政党員の活動としての性格を有するとしても、純然たる政治活動に転化するものではないから、同人らの活動のすべてが組合活動であることを否定される理由とはならない。

0123 経営干渉的行為
X1ら5名の会社の経営方針に反する活動だけをもって、X1らの活動のすべてが組合活動であることを否定される理由とはならない。

3609 その他
3700 使用者の認識・嫌悪
X1ら5名に対する会社の本件行為の動機が、X1らの特定政党支部の活動を嫌悪することであるとしても、同人らの諸活動を敵視して、結果的に同人らの正当な組合活動をも嫌悪していることは明らかであり、不当労働行為意思の存在が認められる。

1200 降格・不昇格
1202 考課査定による差別
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
X1ら5名に対する賃金・昇格差別は、同人らの雇用関係上の権利ないし利益を侵害することにより、同人らグループの組合員の組合活動のみならず、他組合員の組合活動一般を抑圧ないし制約し、もって、組合の自主的運営・活動を妨害しようとする行為であり、支配介入に当たる。

4419 現存格差を一挙に是正した例
X3ら3名を幹部職(非組合員)である資格に昇格させよという本件命令に従えば、同人らの行為は遡って「労働組合の行為」とはいい得なくなるとの会社の主張は、同人らを昇格させても過去に行った行為の性質が変わるものではなく、不当労働行為の成否を左右するものではないから採用できない。

5002 不作為命令または不確定な内容の請求
5008 その他
将来にわたって組合活動を理由とする昇給昇格差別を禁止する本件命令は、会社の主張内容から同種の不利益取扱いが繰り返されるおそれが認められ、これを予防するための相当な措置であると認められるから、労働委員会の裁量の範囲内にあるといえる。

4611 P.Nの掲示の場所を配慮した例
5008 その他
本件命令のポストノーティス条項は、不当労働行為がなかった状態を回復するとともに将来の同種の不利益取扱いを予防するための相当な措置と認められるから、労働委員会の裁量の範囲内にあるといえる。

業種・規模  一般機械器具製造業 
掲載文献  労働委員会関係裁判例集32集234頁 
評釈等情報  中央労働時報 1997年12月10日 930号 42頁 

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顛末情報
行訴番号/事件番号 判決区分/命令区分 判決年月日/命令年月日
神奈川地労委平成 1年(不)第17号/他 一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む)  平成 4年 2月28日 決定 
中労委平成 4年(不再)第6号 再審査棄却(初審命令をそのまま維持)  平成 7年12月20日 判決 
東京地裁平成 8年(行ク)第46号 全部認容  平成 9年 7月23日 決定